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異世界嫁ごはん ~最強の専業主夫に転職しました~  作者: 九重七六八
第15話 嫁ごはん レシピ15 ホワイトアスパラガスのポタージュ
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セミファイナル

この15話。最初のプロットよりも長く書きすぎました。やはり、武闘大会は開いちゃいかん。

料理どこいったという展開になってしまった。ニコちゃんがメインの話になるとどうも勇ましくなるなあ。

「見たか、ダミアン。あの娘。円の動きを身につけている。一体、どこで習得したのか」

「はん。あんなのは女の浅知恵だ。格闘は所詮、パワー。力だ。あんなお姫様、力でねじ伏せてやるさ」


 主将であるサイラスの忠告を聞いていないダミアン。粗雑でお調子者のところがあるダミアンは、サイラスのことを恐れているが、時折、こうやって軽視するような態度がある。


 サイラスはそんなダミアンの目に余る行為については、制裁を加えることはあるが、普段は見逃していた。その方が彼の潜在能力を引き出せると考えているのだ。

 

 既にバリーはエステルに不覚を取って負けているために、表彰台を独占する計画は頓挫してしまった。せめて、ダミアンと1,2位を独占する目標は達成したいとサイラスは思っていた。


(円の動きもどきをしたところで、ダミアンのパワーには敵うまい。所詮は貴族のお姫様だ)


 サイラスもここまではニコールのことを侮っていた。それは女性に対する彼の侮蔑の念がそうさせた。ニコールの動きも兵庫に教えてもらった本格的なものであったが、自分の使う技との比較をすることはなかった。



「ククク……。お姫様、よくここまで勝ち上がってくれた。俺はとてもうれしいぞ。試合の最中では、あのとんでもないガキは助けにこれまい。この前の分、今日は楽しませてもらう」


 試合場に立ったダミアンは、舌をべろりと出してニコールを威嚇する。ニコールはそんなダミアンを冷たい目で見ている。3か月前はこの男に圧倒されて、自分の弱さを思い知らされた。しかし、今は違う。


(私は確かに強くなった。その証拠にあの大男が小さく見える。なんて小さい男なんだ)


 実際にはニコールよりもはるかに体は大きい。しかし、そこから来る威圧感は全くない。そして、負ける気持ちも全くない。この男はさっさと片付けて、決勝であたるサイラスとの戦いを思い描いている。


「バリーをやっつけた、あの黒髪のお姫様でもよかったが、やはりお姫様は金髪じゃないとな。今日はルールが過激なアルテマ。お姫様の叫び声を試合会場に響かせてやるぜ」


「だまれ。この前はルウイに手も足も出なかった男が」

「な、なんだと、このあま!」


「弱い犬ほど、よく鳴くというがお前はどうやらその部類のようだな」


 ニコールは短くそう言い放った。ダミアンの顔が歪んだ。それは心の奥底から湧いてくる激しい炎が全身を焼き尽くすようであった。


「じわじわといじめるつもりだったが、お前は瞬殺する。身ぐるみ剥いで泥の中へ突っ込んでやる。3分だ、見ている全員に俺は宣言する。このすましたお姫様を俺は3分で気絶させて、泥の中へ突っ込んでやる!」


 そう声高らかに宣言するダミアン。観客もこれまでのダミアンの戦いぶりを知っているから、ニコールを心配する空気になる。普通に考えれば体格差でダミアンの圧勝であろう。


「やってみるがいい!」

「それでは、ダミアン選手対ニコール選手。試合始め!」


 審判の宣言と同時に、ダミアンはニコールへと近づく。それは体格とスピードを前面に出したパワープレイ。ニコールを捕まえて、その体を締め上げ、苦痛で歪む顔を楽しむのだ。だが、ニコールの体はゆらりと揺れて掴みかかろうとするダミアンの手をかわした。


そしてその手を掴むとくるりと体を半回転させた。


「うおおおおっ!」


 ダミアンは自分の体が空中に浮かんだことを知った。視界は天井。そしてそのまま床に背中から落ちた。


(イタっ! 何が起こったんだ!)


 思いっきり叩きつけられたので、体へのダメージに加えて頭部へのダメージ。ダミアンは意識が一瞬だけ飛んだ。そして徐々に意識が回復してくるにつれて、足に強烈な痛みが走る。いつの間にか左足を抱え込まれている。足首が伸ばされて動くことすらできない。


「奥義、根枯らし」


「イタタタっ……次はなんだ!」


 ニコールがダミアンの左足を絡めとり、足首を完全に極めている。テコの原理を応用したアンクルホールドである。


「グギギギ……」


 あまりの激痛に額に手を当てて歯を食いしばるダミアン。ニコールの力は弱まらない。あまりの激痛に全身が動かないダミアン。


「お前は女の子をひどい目に遭わせたんだよな!」

「グギギギ……してない、してない……そんなことしてない!」


「嘘つけ!」


 ぐいっと捻る力を強めるニコール。慌てて、白状するダミアン。


「わ、わかった、言う……やったことがある」

「何人で、どういうことをしたのだ!」


「わ、わかった、言うから少し緩めてくれ……」


 ほんの少しだけ緩めるニコール。もちろん、油断はしない。仕留めた獲物は逃がさない。


「3人だ……ちょっと、かわいこちゃんだったから、強引にキスしただけだ……」

「それだけか!」


「お、おっぱいを少し触った……ぎゃああああっ……嘘、嘘、身動き取れなくしてもみまくった……イタタタッ……本当だ、それ以上はしてない。サイラスの奴が邪魔をしてそこまでだ……」


「ゲス男が! これはその3人の女の子の仕返しだ!」


 グギッと鈍い音がした。ニコールには全く躊躇するところがない。顔色一つ変えずに実行する。


それは靭帯がわずかにブチ切れる音。これ以上すると再起不能になる。バンバンと床を叩くダミアン。完全に降参の合図だ。


「勝者、ニコール」


 そう審判が宣言する。観客の大きな拍手が注がれる。体の小さな女子があっという間に巨体の男子をねじ伏せたのだ。これは番狂わせである。


「ふん。3分かからなかったじゃないか」


 ニコールはそう不満そうに呟いた。ダミアンが宣言していた3分ちょうどで仕留めようと思ったのだが、10数秒残ってしまった。


「こ、このあま~っ、殺す!」


 抱えられてやっと立ち上がったダミアン。左足のダメージは深刻だが、それでも負けた怒りは痛さを凌駕していた。この後のサイラスの怒りを思って錯乱したのだ。左足の損傷にも関わらず、ニコールめがけて突進してきたのだ。


「おや、残りの時間、使えそうだ」


 ニコールは振り返るといとも簡単に、ダミアンを投げ飛ばす。巨体はスローモーションのように宙を舞い、そのまま頭から泥の中に突っ込んだ。



「ちょうど3分だ」


「馬鹿な奴め。あれほど、気をつけろと忠告したのに!」

 

 怒り心頭のサイラス。自分の準決勝はさっさと終わらせたのだが、あまりに早くダミアンが負けたために、試合を見に来た時には泥に頭から突っ込み、足をバタバタさせているみっともない姿を笑われているダミアンの姿を見ることとなった。


(ダラム学院の恥だ。だが、考えようによっては、あの娘と戦えるのは良いかもしれない。どちらが本物か比べることもできよう……)



「ちょっと、待ってください」


 ルウイは会場を出たところで黒髪の女性を呼び止めた。その女性はゆっくりと振り返った。黒い瞳に切れ長の目。長いまつ毛。肌の色は象牙色。異国の女性ではあるがドレスは貴族の貴婦人が着るものである。


「何か御用でしょうか?」


 美しい貴婦人はそうきれいなウェステリア語で返した。ルウイはその姿をじっくりと見る。そして確信をもった。


「お姉さんは、もしかしたら東方の島国ハポンの方ではないですか?」

「そうです。いかにもわらわの生まれた国はハポン。小さな国でその名前を知るものは少ない。あなたはなぜ知っているのですか?」

 

 そこへ長身の20代後半と思しき紳士が近づいてきた。


「どうしたんだい?」

「はい。この少年がわたくしの生まれた国のことを聞いてきたものですから……」


 ルウイは近づいてきた紳士に挨拶をする。


「はじめまして。僕の名前はルウイ・サヴォイです」

「サヴォイ? あのサヴォイ伯爵家の?」

 

 紳士はそう少し驚いてルウイを見る。そして、紳士はこう自己紹介をした。


「私はダーウィン州に住んでいます、デビット・オールマン伯爵です。ダーウィン州で小さいながらも領地をもっています。貴族院のダーウィン州選出議員です。そして、こちらが……私の妻です。名前は……」

 

 オールマン伯爵の口が動く。それはこのウェステリアでは珍しい名前の発音であった。


現在、1巻発売中。オーバーラップのサイトのアンケートもお願いします。簡単にやれます。所要時間3分ほどです。2巻の参考にもなりますので、いろんな意見お願いします。

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