表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界嫁ごはん ~最強の専業主夫に転職しました~  作者: 九重七六八
第2話 嫁ごはん レシピ2 豚肉とじゃがいもとリンゴの蒸煮
12/254

愛妻は肉が大好き

「ふん、ふふふん……」

 

 鼻歌を歌いながら二徹は料理の仕込みをしている。目の前にあるのは豚の肩ロース肉。この異世界にも豚に似た動物がいる。『ブル』という名前で飼育されて、よく太るので餌代の割には肉が多く取れるために値段が安い。庶民には定番の肉である。

 

 無論、二徹が買ってきたブルの肉は普通の肉ではない。この町にたくさんある肉屋の中で選び抜いた店で買っている。それを500レム(1レムおよそ1グラム換算)の塊から料理する。


「まずは、ジズル(ニンニク)1かけを薄切りにして……」


 包丁でトントンと軽く切る。もう1かけは潰す。豚肉の塊に塩を小さじ1杯とコショウをすり込む。ちなみにこの世界では塩を『ソル』、コショウは『黒ソルス』という。コショウは肉料理に欠かせない香料で、南方の島から輸入されている。大量に入ってくるので、二徹の世界の昔のようにすごく高価だったということもない。


「馴染んだところで、香草とジズルの薄切りを肉に刺す。そして、香油を大さじ1かけておく」


 プニプニと肉の感触が心地よい。香油は大陸原産の果樹から取れる一般的なもので、オリーブオイルみたいなものだ。


「そしてタルロ(ジャガイモ)を皮付きのまま、4等分にする」


 スパスパっとイモが切れる。タルロはこの世界ではよく食べられているもので、町では油で揚げたもの(フライドポテト)が定番のおやつになっていた。さらに大きなゲイギ(玉ねぎ)をみじん切りにする。

 さらに農家でただで手に入れたアピ(リンゴ)に塩をふってこすり洗いをする。ザラザラとした感触がする。これは洗うと同時にほのかな塩味を付けるのだ。これを縦に4等分する。芯は包丁でそぎ取る。


「さあ、ここから……」


 鍋にじゃがいもと玉ねぎを入れる。塩とコショウで焼く。やがて、油が回り、しんなりとよい光沢を放つようになる。そこへリンゴを加える。焼き色がついて茶色に変わったところで、火から下ろした。


 次に仕込み終わった肉の調理にかかる。香油に浸した肉を鍋に入れて焼く。みじん切りにした玉ねぎとバターを加える。バターは牛乳から作られるので、この世界にもあった。市場で新鮮なものが手に入る。こっちの世界では『ベルー』と言うが、二徹にはしっくりとこない。


「う~ん。いい匂いだ」


 豚肉の表面を焼いたところで、ジュラールのところからもらってきた『クワシュ』をブランデーの代わりに投入する。回し入れられたクワシュに火が引火し、青と緑色の不思議な炎が肉全体を覆う。アルコール分を飛ばして香り付けするのだ。年代物の『クワシュ』だから、かなり肉に華やかな味を与える。


 そして先ほど炒めた野菜とリンゴを投入する。そして、水を入れる。ここから煮込むのだ。30分ほど弱火でじわりと煮込んでいくのだ。


(さて、そろそろ……ニコちゃんが帰ってくるかな)


 調理スペースを出て大きな窓を見ると、予想通り、ニコールが馬に乗って帰ってくるのが見えた。タイミング的にはバッチリである。


「ニコちゃん、お帰り」


 やがて部屋着に着替えた妻がやって来る。ちょっと難しそうな表情で入ってきたニコールだが、ダイニングに入ってきた途端に鼻がヒクヒク動いた。


「ただいま……。今日は肉料理なのか?」

「うん。そうだよ。ニコちゃんはお肉好きだもんね」


 二徹はそう笑って応える。ニコールはちょっとムスっとした表情を作ったが、わざとらしいと二徹は見破っている。


「そんなことないぞ。私は二徹が作るものなら、魚料理でも野菜料理でも好きだ」


 この世界の人間は一般的に肉が好きだ。欧米人が肉を好きなのと同じだ。日本人も魚料理よりも肉料理が好きな人の方が多そうだ。だが、ある程度年を取ったり、女性だったりすると健康に気遣い、肉よりも魚となるケースはあるだろう。


 抜群のプロポーションを誇るニコールは、自分の体型を気遣うことはしていないから、肉料理を好んで食べる方だ。だが、二徹と結婚してからは、どんな料理でも食べる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ