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異世界嫁ごはん ~最強の専業主夫に転職しました~  作者: 九重七六八
第12話 嫁ごはん レシピ12 夏野菜と旬の海の幸の天ぷら
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同時多発テロ勃発

土日と泊まりで仕事です。更新は自動で。感想返しが遅れますがご容赦。

「それでエバンス総料理長の容態は?」

 

 ニコールはそう報告に来た兵士に報告を求める。ニコールはAZK連隊の参謀を拝命している。その司令部は郊外の屋敷であったが、連絡と情報収集用に王宮内に1室を保持しているので、今はそこで情報収集をしていたのだ。成り行きで二徹もレイジもいる。


「運ばれた病院からの報告では、重傷だそうです。ただ、命は何とか取り留められそうだとのこと」

「そうか、それは不幸中の幸いだ」


 ニコールはそう言って心配そうに聞き耳を立てていたレイジに、軽く頷いた。レイジは少しだけ笑顔になる。厳しい面はあるが、レイジにとってはかけがえのない父なのである。


 しかし、予断は許さない。この世界の医療技術では、銃槍から病になり死んでしまうこともよくあったからだ。傷が深いほど、その危険は大きくなる。

 

「それでオヤジはどこの病院に?」


 レイジは兵士から父親が運ばれた先が、王立中央病院と聞いて、病院へと向かうことにする。二徹も成り行き上、レイジと一緒に病院へ行くことになった。


 エバンス総料理長の様子については、あとで二徹から報告を聞くことにして、ニコールはさらに情報を待った。それはこの事件がエバンスの暗殺だけにとどまらないと考えたからだ。


 そしてその予想は不幸にも当たってしまう。


「ニコール大尉、大変です!」


 二徹とレイジが部屋から去って15分もしないうちに、次々と事件を知らせる報告がもたらされた。報告に来たAZK連隊の兵士は、誰もが興奮気味であった。そのどれもが、白昼堂々に行われた凶行だったからだ。


 ニコールは次々ともたらせる情報に、顔をしかめた。完全に打つ手が後手に回ったという後悔の念が先行している。


「そうか……そうだったのだ……。なぜ、これに気がつかなかった」


 この日に襲われたのはエバンスだけではなかった。王宮料理アカデミーの3人のA級厨士が同時に襲われたのだ。一人はエバンスと同じように、市場で材料の買出し中に突然、剣で切りつけられて負傷。もう一人は馬車で移動中に狙撃されて重傷であった。


 さらにB級厨士も3人ほど襲われて、それぞれ怪我をしたという。幸い、死人は出なかったのだが、狙われたのが王宮料理アカデミーの上層部だと言うことが衝撃を受けた。今まで、王宮料理アカデミーがテロの対象になったことはない。


「ニコール大尉、レオンハルト連隊長が到着されました」


 そう報告したのはシャルロット少尉。ニコールは最初のエバンスが襲撃されたことを聞いたときに、この副官をすぐに本部へ派遣したのであった。


 報告を受けたレオンハルト少将は、この事件の重要性をすぐに理解し、急ぎ、この王宮内の仮司令部へと足を運んだのだ。


「大尉、状況はどうだ……。他にも襲われた人間はいないか?」

「はい。現在、王宮料理アカデミーの幹部5名が襲われたとの情報を得ています」


ニコールは立ち上がり、敬礼をして自分の上官を出迎えた。


「幹部5名だと?」

「エバンス総料理長に加えてA級厨士の2人。B級厨士が3名。我が国の料理の権威、トップ5人です」

「まったく、都の中心で同時多発テロとはな」


 レオンハルト少将は、敬礼するニコールの前を愚痴を言いながら、通過してソファに座った。ニコールは敬礼を止めて正対する。


「私はこの犯行はゼーレ・カッツエの仕業だと思います」

「ほう……。それは何か証拠はあるのか、大尉」

「ありませんが、状況から考えて間違いないと考えます」


 レオンハルトは少しだけ眉をひそめたが、すぐに言葉で覆い隠した。


「ゼーレ・カッツエがなぜ、王宮の料理部門のトップを襲撃する。国王に美味しい料理を食べさせないという目的なら、随分と志が低くなったようだが……」


 これはある程度、正解を把握した上での質問だ。ある意味、ニコールを試しているとも言える。ニコールには簡単な試験ではあるが。


「ゼーレ・カッツエの狙いは、3週間後に我が国を訪問するセント・フィーリア公国宰相、アクセル・ヴィッツエル公爵閣下との晩餐会を失敗させることだと思われます」


「なるほどな。こちらのおもてなしを台無しにする。相変わらず、負け犬党はやることが小さい」


 これはレオンハルトの本音だ。レオンハルトはゼーレ・カッツエを取り締まる部隊の司令官であるが、自身は密かにこの組織に加わっている。中心メンバーではないために、会合には出るが幹部ではない。


 幹部連中はレオンハルトがAZK連隊の司令官と聞いて、手を抜くように指示を出してきたが、レオンハルトはそれを説得して上手に立ち回っている。下手に手を抜けば疑われるというのが理由だ。


 もちろん、幹部連中の気を引くために、重要な場面では情報をリークして取り締まりから、彼らを守り、息の根を止めないように配慮している。この地位はゼーレ・カッツエにとっては失ってはならないものだと思わせておくのだ。


 もしレオンハルト少将が、ゼーレ・カッツエの中心メンバーでいろいろと権限が、与えられていたのなら、クーデターで一気に現政権をひっくり返しているところだ。


だが、今はひっくり返すどころか、それを阻止する側なのである。連隊3千人を指揮するとはいえ、次席のニコール大尉以下、全員、現王家に忠誠を誓う部隊だ。クーデターを起こすどころではない。


(そもそも、奴らは現政権を倒したいあまりに、フランドル王国に取り込まれすぎだ。これでは祖国を滅ぼすことにつながる。それを全く理解していない)


 そんなレオンハルトの思惑を知らないかのように、ニコールは自分の考えを述べる。


「連隊長閣下のおっしゃるとおり、反乱のような大規模なものに比べれば、小さいです。しかし、晩餐会に失敗し、宰相閣下の心を我がウェステリアに向けさせることができなかったら、セント・フィーリアがフランドル王国につきます。そうなれば、大陸での我が国の影響力は大きく失われます」


「確かにそうだな。そう考えれば、これはこれで有効な手であったということだ。それでニコール大尉、晩餐会とやらは、どんな風に行われるのだ?」


「はい。それがウェステリア王国を挙げてのものではなく、あくまでもヴィッツエル卿の個人的な歓待だと聞いております。そこで我が国の郷土料理でもてなして欲しいとのことでした」


「郷土料理か……。大陸では我がウェステリアの料理は、フィッシュ&チップス(キル&タルロフライ)しかないと言って、馬鹿にされている。だが、ちゃんと工夫したフィッシュ&チップスは美味しい。それに我が国にも他にも美味しい料理はたくさんあるが、イメージとは怖いものだ。それに食べ物を油で揚げるという調理法は悪くないと思うのだが」


「連隊長閣下、それについては私も悪くないと思っております」


 そうニコールは昔、二徹に作ってもらった『天ぷら』という料理を味わったことがある。あれは本当に美味しかったとニコールは思い出していた。


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