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16-18 エンドア・ディル(2)過去からの手紙

前話 16-17 エンドア・ディル(1)ですが、約4000文字ほど加筆修正しております。

興味がありましたらひとつ前のお話を読み返していただければ幸いです。



「ふむ……」


 エンドア・ディルは唸るとテーブルに差し出された封筒を手に取り、まずは表面ついで裏面を見たが、差出人の名前も記されてはいなかった。ただ、赤い封蝋がされていて、そこには吠える獅子をかたどった紋章が刻まれていた。エンドア自身知識として知っているだけだが、これはベルセリウス家の紋章だ。


 アルトロンド領主ガルベス家とボトランジュのベルセリウス家は、なんだかんだで20年も前から係争状態にある。そんな折、仮にもアルトロンド評議会議員を務めるディル家にベルセリウス家の封蝋がされた密書が持ち込まれたのだ。この場で封を解いて中身を確認するなど、迂闊の極みであろう。


 ベルセリウス家はセカ陥落のあとマローニで抵抗を続けていたが、帝国軍に取り囲まれ持久戦に音を上げたことでボトランジュを手放した。あの時、ボトランジュのベルセリウス家は滅んだ。いまもう大貴族としてのベルセリウス家などこの世界にはない。あるのは貴族の称号を失い、国王よりアルトロンド領主に与えられた領地、ノーデンリヒトを不法に占拠し続けるトリトン・ベルセリウスだけ。


 しかしエンドア・ディルはこの状況に奇妙な違和感を感じていた。

 ボトランジュのベルセリウス家といえば、神聖典教会の圧力に屈することなく最後の最後、領都セカが陥落するまで降伏しなかった。ある意味エンドア・ディルと同じ考えを持つ、ダイネーゼとは真逆の考え方を持っている人物だと考えていたのだ。なぜ奴隷商人、ダイネーゼ商会のあるじ自らがベルセリウス家とつながりがあるのか。急に心に沸き起こった違和感。これは不信感だ。


 ベルセリウス家の封蝋をみたエンドア・ディルは先ほどからの話の中で、ダイネーゼが大悪魔アリエル・ベルセリウスと会って話をしたということを思い出していた。


 アリエル・ベルセリウスという男がどんな男なのかは知らない。聞こえてくる噂話はいつも常軌を逸していて、まるで酔っ払いの与太話だ。だがアルトロンドは現実にこれまで何度もアリエル・ベルセリウスと戦い、何度も煮え湯を飲まされ、16年前の侵攻では愛郷心溢れる12万以上ものアルトロンドの兵士が命を落とした。


 アルトロンド評議会議員という、領地の危機を乗り切るため、政治を行う者として、自国で何が起こっていて、どのような脅威に晒されているかという情報には明るい。その中でも、大悪魔と呼ばれたアリエル・ベルセリウスの存在は、大災厄に等しく驚異なのだ。


 エンドア・ディルは赤い封蝋を指でとんとんと叩きながら問うた。


「ベルセリウス家? どういうことだ?」


 封を解く前に、この手紙は誰から託されたものかと訝った。

 何も考えずに封を解いていいものではない。慎重にならざるを得ないのだ。


 傍らに立つエンドアの末娘、イングリッドはその封蝋をみて、まるで灯りがついたように気付き、ハッと息をのんだ。


「お父さま、この紋章はボトランジュのベルセリウス家ではなく、分家されたノーデンリヒトのベルセリウス家です」


 二人の男の視線が、イングリッドに集中する。


「ほう、イングリッドおまえは知っておるのか? しかしノーデンリヒトとは……。困ったな。この手紙を書いた主がボトランジュ領主のアルビオレックス卿であればまだマシだったのだが、話はどんどんややこしい方向へ行きそうだ、これは読まない方がいいのかもしれん」


「待ってください、お父さま。私は興味があります。こちらの方がベルセリウスと会って話をし、そしてお父さま宛の手紙を託されてきた……というわけですよね? 興味ないわけがないじゃないですか。ベルセリウス派の魔導は魔導学院で、絶えず議論されてきた話題なのです。神話から飛び出してきたかのような強力な魔導を邪道と蔑む者も少なくありませんが、若い魔導師はだいたい肯定的です。アシュガルド帝国はさきのバラライカ決戦で使われた爆破魔法をいち早く分析し、起動式の開発に成功したそうですが、共闘したアルトロンドにもその起動式は公表されませんでした。私たちはベルセリウスの爆破魔法に対抗するため、もう長い間研究を続けています」


「魔導学院などにベルセリウス派をどうこうできるとは考えない方がいい、身の破滅を招きますぞ」


 魔導学院『などに』といったダイネーゼの失礼な物言いにイングリッドは少々頭に血を上らせた。

 

「ならば指をくわえて見ていろとおっしゃいますか? ……残念ですがアルトロンドの魔導はダリル同様、シェダール王国でいちばん遅れています、なぜなら魔導の知識に明るいエルフ族を排除したからです。私たちは最も遅れた魔導で神話の世界から飛び出してきたような力を持つベルセリウス派と敵対し、戦わねばならないのに、評議会は魔導を軽んじる政策を続けてます」


「軽んじてはおらん。だがアルトロンドは軍組織の方が政治的に強いのも確かだ。もっともっと魔導学院に予算を回してやれば、あるいはグリモア詠唱のほうも実現しているやもしれんのにな」


「グリモア魔導書は魔導師の価値観を変えた最新の技術です。アルトロンドはここでも大きく差をつけられてしまいました。アルトロンドの魔導はノーデンリヒトと比べても20年は遅れています。起動式を手書き入力している時点でグリモア魔導とは戦えません」


「分かっておるよイングリッド。だがな、いまアルトロンドの家計は火の車だ。魔導学院のグリモア開発に回せる予算がないのだ。そんな事よりもだ、ダイネーゼどの、なぜあなたがベルセリウスの手紙を持っている? しかもノーデンリヒトの。まさかあの大悪魔と組んでなにか企んでおるのか?」


「私が? いえいえ逆ですよ。私たちはあの大悪魔、アリエル・ベルセリウスに捕えられ、もうあきないを続けていく事はできなくなりました。商工会議所はもうおしまいです。私はベルセリウスに命乞いをしたからこそ、今ここであなたと話ができているのです。そしてその手紙は、あなた宛てですよ、エンドア・ディルどの、どうか確かめてください」


 エンドア・ディルは手紙の封を解くことを躊躇った。

 アリエル・ベルセリウス率いるベルセリウス派と呼ばれる魔導派閥は、まるで神話から飛び出してきたかのような暴力を振るう。ちょっと悪事を働いたからといって捕えようとすれば大惨事を引き起こすトリガーになりかねない。ベルセリウス派を捉えるためには衛兵どころか軍を出したところでどうすることも出来ないのだ。そんなものが国内を堂々とうろついているなど、この国は法治国家であることをやめてしまったのかと疑ってしまう。ベルセリウス派こそ、法の支配が及ばぬところにいるシェダール王国でただひとつのアウトロー集団とされている。


 そんなものに捕えられたダイネーゼが商売できなくなったというと『ザマア見やがれ』『天罰が下った』と笑い飛ばしてやりたいところだが、稀代のアウトローに捕えられ命乞いをして助けられた男が、なぜいま目の前に座っているのか? しかもベルセリウスからの手紙をもって。


 ベルセリウスはダイネーゼを開放するかわりに、メッセンジャーとして使ったと、そういうことだ。

 エンドア・ディルはぐっと歯噛みし、テーブルに差し出された封筒をスッと押し返した。


「イングリッドには悪いが、これを開封してしまうと身の破滅を呼び込むことになる。中身は気になるが、見ない方がよさそうだ……」


「いいえ、封を開けて読んでください。この手紙はベルセリウスからのものではありません、さる女性からあなたに渡すようにと、私が託されたものです」


「女性? 心当たりがないな、こんな恐ろしい手紙は初めてだ。差出人が誰か分からなければ触るのも恐ろしいではないか、なあイングリッド、お前はどう思う?」


 イングリッドはこの怪しげな手紙の差出人が女性であると聞いて眉根を寄せた。

 心のどこかに引っかかっていたものが結実するような、そんな感覚に陥り、やはりイングリッドはこの手紙を託したものが誰かという真実を知りたくなった。手紙の内容そのものよりも、手紙を書いた人物のほうに興味が移ったのだ。


「私には少しだけ心当たりがあるのですけれど、お父さまは本当に心当たりがありませんか? 女性からの手紙をそんなに恐れるとは、これはお母さまに報告しなくては……」


 そう言って小悪魔的な微笑みを見せるイングリッドに気圧けおされ、エンドアはこの怪しげな封筒を手に取らざるを得なくなった。イングリッドが微笑んで見せたことで少し気が楽になったことも確かだ。


「なぜイングリッドに心当たりがあって、私にサッパリ分からないのか……なぜだ?」


「それは私ではなく、ダイネーゼさんに聞けばよろしいのではないですか? この手紙を託したのは誰か」


「そ、そうだな。なあダイネーゼどの、この手紙は私宛で間違いないのか? もうハッキリ言ってくれ。いったい誰だ? 我がアルトロンドはノーデンリヒトとは戦争状態にある、ベルセリウスの紋章が付いた密書など、受け取っただけでスパイの容疑が懸けられる代物だ、警戒するのは当然だろう? 私宛だと言うなら誰が私に宛てたものかを教えてくれ」


「はい、中を見ればわかるとだけ伝えられましたが、そう言われると確かにその通りですな。その手紙を私に託した女性は『パシテー』と呼ばれておりました。心当たりはありませんか?」



 ……。



 ……。



 ……。



「パシ……っ……だ、と……」


 エンドア・ディルは言葉を失い、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

 そして次の瞬間にはその怪しげな差出人も宛先もない手紙を手に取り、躊躇なく封を解く。

 心なしかその手は震えているようにすら見えた。


 これまで触れることすら避けていた封筒だったのに、パシテーという魔法の言葉をひとこと添えただけで、手のひらを返すように態度が急変した。ダイネーゼは逆にその変わり身の早さを訝った。


 エンドアが便箋を開くと、イングリッドは肩越しにその内容を覗き見る。


 傍らに立つイングリッドは少し微笑んだあと、急に表情が抜け落ち、神妙になった。エンドアはイングリッドの様子がおかしいことに気付かなったが、ダイネーゼはイングリッドの表情の変化を見逃さない。


 手紙の差出人はパシティア・ディル。


 エンドア・ディルと妻フィービーとの間に生まれた長女の名だ。

 いまを遡ること32年前、アルトロンドで魔族排斥運動が起こり、エルフたちが人権を奪われたことで王都プロテウスにあるフィービーの実家へ避難させたのだ。


 激動の時代だった。


 エンドアにはかろうじて人権を保障してくれる土地に逃がしてやるしか方法がなかった。あれから行方が分からなくなっていて、人もカネもつかって探したがその所在はつかめていない。そして評議会議員という、政治の力で世の中をよりよく変えることができる立場であるからこそ、アルトロンドに残り、今に至るまでずっと妻と娘が安心して帰ってこられる場所をつくるため、政治家として辣腕を振るっているのだ。


 いつか必ず妻と娘を呼び戻し、再び一緒に暮らせるよう、世界をもとに戻す。

 これこそ32年前、エンドア・ディルがパシテーたちと交わした約束であり、いまも政治の側から魔族排斥に偏った政策を撤廃するよう働きかけている原動力に他ならない。エンドアが人生をかけて行う政治の信念は、ここにその源流があった。


 妻と娘の行方について、もしかするとボトランジュのセカに逃れたのではないかというところまでは確かな情報があった。だが度重なる紛争と戦乱があったせいで、足取りは完全に途絶えた。


 パシテーはダイネーゼに託した手紙の中で、母フィービーも無事ノーデンリヒトに逃れていると知らせた。この手紙を持ってきた者がダイネーゼであることに不信感は拭えないが、差出人が誰か知れたことで、エンドア・ディルは話し合いを無碍に断ることができなくなった。


 最後に、ダイネーゼの話を聞いてやってほしいと書いてあったからだ。



 エンドアはそのしわくちゃになった瞼になみなみと涙をため、潤んだ瞳を隠そうともせず、ダイネーゼに向けた。


「……、これは……、すまなかった。とんだ誤解をしていたようだ。あなたには礼を言わねばならんな。いや、なんと礼を言えばいいのかも分からん。パシティアと会ったのか? 元気にしていたか? 無碍にしてすまなかった、ダイネーゼどの、どうか話を聞かせてくれないか。パシティアは無事ノーデンリヒトに逃れていて、ベルセリウス家の保護を受けていると、そういうことなのだな」


 ダイネーゼはこのエンドアを見て、目を疑った。逆に驚いたのだ。


 加えて態度を一変させた上にこの物言いだ。飛行術を操りダリルマンディを襲撃したブルネットの魔女、パシテーから預かった手紙を見て、パシティアと呼んだ。『パシテー』という名はダイネーゼにもいろいろ思うところがあった。だがしかし効果劇面すぎて逆にどういうことか、その事情を知りたいぐらいだ。


「いや、ちょっと待たれよ。質問に答える前にパシテーさんとあなたの関係を聞かせてもらいたいのだが?」


「娘だ。パシティアは実の娘だよ。別れたときはまだ10歳だった。いまは……、もう42歳になるのだな」


「娘さん? 42歳? 私の目にはとても若く見えたのですが……、なるほど、あなたが魔族排斥に強く反対し続けているのには、そういう理由があったのですね」


「そうだ……。もう50年も前の話になるか、私は領都エールドレイクで初等部で教員をしていたエルフの女性と恋をして幸せな結婚をしたんだ。当時はまだ魔族排斥も、奴隷制度もなかったし、エルフ女性と結婚するのに、なんら問題はなかった。今のように悲しい時代ではなかったのだ。パシティアにも苦労を掛けた、いまはどうしておるのか? 幸せであってほしいとずっと願っていた。もうとっくに結婚しておるだろうか。もしかすると私に孫がおるのかもしれないな。妻はどうしておるのかな? 私からも手紙の返事を書きたい。届けてもらうにはどうすればいい?」


 さきほどまでダイネーゼの顔に穴が空くのではないかと心配するほど睨みつけていたその眼光はなりを潜め、いい父親の表情を見せるエンドア・ディルの、その話の内容を聞いて、ダイネーゼは開いた口が塞がらなくなった。


「あの、パシテーというひとが? あなたの娘? それは本当ですか? 間違いないのですか?」


「パシテーは私たち近しい家族だけがそう呼ぶ愛称のようなものだよ、目の中に入れても痛くないと思えるほど可愛い娘だった。この手紙によれば、ノーデンリヒトに逃れて平和に暮らしているそうだ。あそこは厳しい土地だと聞くが、教会の影響を受けず魔族排斥を行っていない唯一の土地だ。パシティアは幸せに暮らしておるのだろうか? この命尽きる前に探し出して、必ずやもう一度会いたいと思っていたのだ……。まさかダイネーゼどのがこのような報せを持ってきてくれるとは思ってもみなかったのだがね」


「……っ」


 もうどう説明すればいいか分からなくなったダイネーゼの、その呆気に取られたような表情を窺ったエンドアは少し心配になったのか「どうした? パシティアに何かあったのか?」と、少し怪訝そうに聞いた。


 それもそのはず、まさかアルトロンド評議会議員として長い間、魔族排斥を廃止し、エルフの人権を取り戻さんと政治活動を続けていたエンドア・ディルが、兵士12万の命と引き換えにようやく倒すことに成功した大悪魔ベルセリウスの眷族、ブルネットの魔女を自らの娘だと言ったのだ。


 ダイネーゼは発作的に激しい頭痛に見舞われ、頭を抱え込んでしまった。


 『ハメられた』のだ。


 ブルネットの魔女はダイネーゼに手紙を託したとき、これを『貸し』だと言った。

 ダイネーゼは『借り』ができたことで、この件から手を引くことができなくなってしまった。


 ブルネットの魔女は神聖典教会の敵、女神に弓引く悪魔の一味とされている。シェダール王国ではアリエル・ベルセリウスと共にダリルマンディ襲撃の末、当時のダリル領主、ヘスロー・セルダルを殺害した。本人は決闘を申し込まれたから応じただけだと言っていたが、王都プロテウスではノーデンリヒトのアリエル・ベルセリウスがブルネットの魔女を伴い、一方的に襲撃した挙句、領主を殺害したとされている。ブルネットの魔女も大罪人の一人なのだ。


 この事実が明るみに出たらエンドア・ディルはアルトロンド評議会議員という地位から失脚を免れないし、恐らくこの屋敷に神殿騎士どもが押し寄せてくるだろう。これまで教会のやることに異議を唱えてきたこともあって、反逆罪や共謀罪など、でっち上げられる罪状には事欠かない。十字架にかけられるかもしれないし、一生薄暗い独房で徐々に死んでゆくのを待つだけかもしれない。


 だがしかしそれは避けねばならない。

 エンドア・ディルが反逆罪などで捕まってしまうと南部の豊富にある食料資源を支援物資に出してもらうという計画がとん挫するばかりか、支援をお願いするためとはいえ密会し、こんなベルセリウス家の紋章の付いた封筒を届けたダイネーゼ自身もアルトロンド側からするとスパイの嫌疑をかけるに相応ふさわしい。


 もし捕らえられてしまったら何を言ってもあとの祭りだ。ダイネーゼは縛り首にされても構わない覚悟で悪を行っているという自負もある、だがしかし、ヘタ打って捕縛され誤解のうちに縛り首にされるなど、つまらない死に方をする気は毛頭ない。


 ある意味アルトロンドでは最も仲の悪い二人が仲よく手を結ぶ以外に、この窮地を脱する手はないようだ。


「いや、なんでもありません。ようやく合点がいったところです、なるほど、パシテーさんはあなたの肉親、それも非常に近しい人だったのですね。迂闊でした、まさかそう来るとは考えてもみませんでしたが、今考えるとその可能性も当然考えておくべきでした。残念と言う他ありませんが……どうやら私はあなたの娘さんに手玉に取られ、深く掘られた落とし穴にハメられてしまったようです」


「なんと? ダイネーゼどのを手玉に取ったと? 詳しく聞かせてくれないか。パシティアはいまどこで、なにをしているのだ?」


「まさか本当に知らないのですか?」


「分からない。いったい何のことだ?」


「……ブルネットの魔女と言えば分かっていただけますでしょうか?」


「ブルネットの魔女なら知ってるぞ? ダリルマンディを襲撃し、領主を殺したという稀代の魔女だろう? 音もなく、羽ばたきもせず空を飛ぶ悪魔のような恐ろしい女だと聞く、アルトロンド軍が多大な犠牲を払って、ようやく倒したと聞いたが? ブルネットの魔女がどうかしたのか?」


「私にその手紙を託した、パシテーと呼ばれる女性こそがブルネットの魔女ですよエンドア・ディル議員。ダリルで襲撃を受けたエレノワ騎士伯も間違いないと言いました。常にあのアリエル・ベルセリウスと行動を共にしてましたからね。本人もブルネットの魔女だと言われても否定すらしなかった。間違いない、あなたの娘は悪名高いブルネットの魔女です」


 30年以上も探し続けた妻子の情報だった。だがしかしエンドア・ディルはただ不都合な事実を喉元に突きつけられたに過ぎなかった。


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