15-21 セーラー服とは
【修正】ディオネ教授→ディオネ助教。うっかりミスです、ごめんなさい。
きょうびの若者はアグネス・ラムを知らないのだと、今更ながら気が付きました。
興味のある方はぜひググって画像表示にしてやってください。素晴らしいおっぱいが大量に出てきます。
他にイメージ合致するような人を思いついたら加筆します。
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アリエルは受付で聞いたディオネの部屋に向かった。どうやら研究室という名目で個室が与えられているらしい。助教なのに個室だなんて生意気だ。
「真沙希、いるか?」
呼ぶとジャージ姿のまま無言で出てきた。
誰のジャージかというとサイズ的にブカブカだけど兄嵯峨野深月のものを奪って着ている。
ブカブカジャージでずんだれ放題、寝ぐせを直そうともせず眠そうな目をこすりながら、右を見て左を見て、もういちど二度見、三度見……と周囲を窺ってみたあと、ここは学校なんだということが分かったようだ。
「んー、このカッコじゃまずいよね?」
「聞こえてたろ? ディオネんとこ顔出すんだけど……」
「うん、ディオネって誰だっけ?」
「小岩井さんとこの麗美ちゃん」
「げっ! ちょっとまった。着替えてくるわ」
真沙希はネストに飛び込むと、しばらくしてぴょーんと飛び出してきた。
髪を梳かす時間はなかったのだろう、力任せにジャカジャカとブラッシングしている。
ちなみに服を着替えてきたかと思ったら制服だった。いつものセーラー服だ。
真沙希の通う中学校の制服で、いつの間にかスカートが短くなっている。
「おまえそのスカートそんな短かったか?」
「へへー、可愛いっしょ」
「スヴェアベルムに来てまで改造制服とか……」
「可愛いは正義なの!」
誰が真沙希のスカートを短くしたのかと訝ってみたが、だいたい分かっている。帝国からもらったローブのようロング丈の神官服を切った貼ったで改造し、3日目にはもうミニ丈になってたジュノーのしわざに決まってる。
しかしここは触れなくていいだろう。スカートが長くなっていたならいざしらず、短くなったことについて文句を言うことなどサラサラない。
「なあ真沙希、ディオネに会うのに可愛くオシャレする必要あるのか?」
「兄ちゃんにはこれがオシャレに見えるの? 寝起きでゴロゴロしてた私が100%で、いまの私がオシャレして150%になったとでも?」
アリエルには真沙希が何を言ってるのかちょっとよく分からなかった。
頭からクエスチョンマークが3つぐらい出た気分だった。
「髪ボサボサで部屋着なのに呼び出されたら普段よりもマイナスじゃん! マイナスから普段通りのノーマルな私に戻っただけ。オシャレするってことは、ノーマル私+もっとかわいらしくなるんだからね」
なるほど、点数的に寝起き時はマイナス、ちゃんと身だしなみをして通常モードらしい。
オシャレとはいかなる事かを妹、嵯峨野真沙希に言い聞かせられてるところ、どうやらゾフィーがその意を得たようで、真沙希の両手を取ってブンブンと大げさにアクションしてみせた。
「ねえあなた、私も服が欲しいわ」
「そういえばゾフィーの服はロザリンドのおさがりだったか。よし、後でまたセカに買いに行くか」
「わあ、ありがとうあなた。私もね、ずっと真沙希の服いいなあって思ってたの……」
アリエルは咄嗟のことにハッとして真沙希のほうを見た。
ズバリセーラー服だった。
「えっ? 真沙希の服って? この? セーラー服?」
じゃなければジャージだし。部屋着だし。
「うん。私に似合わないかな?」
「ちょっと待とうかゾフィー、真沙希の服、これはさセーラー服といって、アルカディアの日本でいうところの中等部ぐらいの女学生が着る制服なんだ」
「ダメなの?」
「いや、ダメじゃない。ダメじゃないんだけどさ、セーラー服にはいろいろ、本当にいろいろ制約というか、お約束みたいなものがあって……」
アリエルはゾフィーの頭のてっぺんから足のつま先までを舐めるように見た。
ゾフィーは185センチもある巨乳グラビアモデル体型で、褐色の肌が魅力のお姉さんキャラだ。
アリエル的にゾフィーはセーラー服よりもブレザーのほうが絶対にいいと思っている。
185センチでアグネス・ラム風のナイスバディお姉さんがセーラー服を着るなんて、ちょっと勿体なさ過ぎやしないかということだ。セーラー服は巨乳の魅力を台無しにする。ゾフィーは戦時じゃなければお色気キャラも見事にこなす、アリエルハーレムの中では断トツでトップのエロさを持ってる。
正直セーラー服というのは、つい去年まで美月も197センチという身長にそこそこ巨乳で着てたことがあった。197センチ用のセーラー服なんてものは日本に存在せず裁縫の得意なジュノーがブツクサと文句を言いながら直してやりながらつくってたけど、結局サイズが合わないことを理由にジャージ登校を無理やり認めさせたという事実もある。というかロザリンドはどっちかというとジャージズボンにポロシャツを着て、竹刀を振り回す体育教師のほうがイメージとして合ってるし、制服なんてのはどう頑張ってもジュノーやパシテーのような標準の体躯を持つ人にしか似合わないようにできているのだ。
そして見た目よりもずっと重要なことがある。
セーラー服を着ようというならちょっと気になるのはその年齢なのだ。サオがポンコツキャラなせいでサオですらゾフィーのことを姉さんキャラだと思っているのだろうが、実は違う。
なにしろゾフィーは16000年以上も異次元世界で眠っていたせいで最年長のように思われているが、時間の経過が極端に遅い異次元に閉じ込められていたゾフィーの16000年分の体感時間はたったの9時間程度。だからアリエルからすると16000年以上という気が遠くなるほどの時間が経過しているけれどゾフィーの側からすると9時間ほど気持ちよく寝ただけなのだから、実年齢に加算するのは間違っている。
で、セーラー服という服についてだが、アルカディアの日本という国限定での話をすると、このセーラー服、ほぼ女性専用となっていて、この際だからもう全年齢対応と言って過言ではない。
そう、ここではもう誤解を恐れずにセーラー服を全年齢対応と言ってしまおう。なぜ全年齢に対応しているかというと話は長くなるから後回しにして、では実際に着用されている現場と、セーラー服を見る人のイメージというものはことのほか狭い裁量に任せられているのも、また事実だ。
きっと普通の、ノーマルな人ほどセーラー服の対応年数は短い。
つまりだ。
一般にセーラー服を着て良いと認められるのは、恐らく中学生から高校生までの6年間のみという、非常に狭い範囲でしか認められない。もしくはどこかの私立小学校が制服として採用しているなどの場合には特例として認められる。
幼児期から12歳までの小学生あたりに着せると、それはそれは可愛らしいロリ少女に見えてしまうし、18歳以上の一般女性が着ると若作りに『無理してる感』がありありと出てしまい、なんだか気の毒になってしまう。
しかしそれだけならまだいい。どうみても20歳代中盤、または三十路いってんじゃないか? って見た目に無理やりツインテールや三つ編みおさげの髪形にしてるようなものは殊の外キツく感じてしまって『お金を稼ぐのって大変なんですね……』としみじみ見てしまうのも仕方ないだろう。
男なら絶対に誰も騙されないし、そもそも設定に無理があるというのに、その無理を通してでもユーザー側にイメージ補完を強要する気分出しまくりの女子高生ものアダルトビデオがそれにあたる。
なぜ女子高生ものアダルトDVDを男子高校生が見られないのかと不満に思ってるような『モノ知らぬ野郎』が居るなら教えてやってもいい。それをプレイヤーにぶち込んで回してやれば、映し出される映像が全てを答えてくれる。
そう、セーラー服を着る適正年齢を大幅に過ぎたような〇バァが着るセーラー服という極めて毒性の強い映像にも一定の需要があるのだ。これはもうコスプレと言って過言ではない。いや、この場合は風俗用語のほうのコスプレだから間違えてはいけない。
若い子しか着ることを許されない禁断の服であるからこそセーラー服そのものがアダルトグッズとして通用するのだ。セーラー服を年増の女性が着るだけでアダルトグッズになるという不思議! この場合のセーラー服はナース服やバニーガール衣装、ブルマとセットの体操着と大差ない扱いにまで下がる。
それ以上の年齢ともなるとハロウィンの仮装で出てきてもオバケと大差ないのだが、それはそれ、そこはそこ、オバケと大差なくともセーラー服はセーラー服なのだ。
セーラー服というのは、女性が着る服として、もっともピーキーな性能といっていい。
『ピーキーすぎてお前にゃ無理だよ!』という現実が分かっているからこそ、適正年齢を過ぎた女性は着ないのだ。
そういった常識というか予備知識のないゾフィーにセーラー服のこの、悶々とする気まずさを説明するのは困難を極める。
案の定ゾフィーはアリエルが止めたにもかかわらず食い下がる構えだ。
「ねえあなた、制約とかお約束って何? 私はダメってことなの?」
「えーっと、セーラー服というのは12歳から14歳までの3年間がピーク。ギリギリでも18歳までの6年間だけ。それ以下なら可愛いけど、それ以上は……」
「わたし、もう可愛くないの?」
くっそ、ゾフィーのくせにサオみたいな攻撃をしてきやがる……。
「可愛い! 可愛いから涙目になるなって。ホントまじでセーラー服だけは……」
アリエルが困らされているその時、真沙希が横から助け船を出した。
兄アリエルとそんな無意味ともとれる攻防を繰り広げているゾフィーに、聞いてみたいことがあったのだ。ずっと思ってたことであり、それは至極まっとうな質問であった。
「あー、そういえばゾフィーっていくつなの? トシ」
「え? どう答えたらいいのかな? それは私が生まれた年から現在までどれだけの年数が経ったか? という意味? それとも囚われていた年数分を引いていいの?」
「う、それだと16000歳こえちゃうわけ?」
「そうなのよね、女性に年齢の話をするなんて野暮ですよね?」
「じゃあ若いほうの計算だとどうなるの?」
「うーん、17か18か19? ぐらいだったと思うのだけど……あんまり覚えてないのよ。でもベルフェゴールやジュノーと同い年だったし、あなたいくつで死んだの? あの時」
「スヴェアベルム人に転生したら、だいたいいつも12から18ぐらいだっけか。20まで生きたことはなかったと思うけど、なんせ戦いが始まったらもう今日が何月何日かなんて分からなかったし、正確なカレンダーなんてない時代だったしな。年齢なんて実は俺も覚えてない」
「兄ちゃん、こういう時は若いトシを採用するよね? 普通」
ササッ……と、真沙希はゾフィーの傍らについた。
これは真沙希が敵になったことを意味する。
だがしかし、現状、ぱっと見、ちょっと贔屓目に見て18歳ぐらいの見た目を維持しているサオが着ても実年齢34だと知るや否や『うっわ……きっつ……』となるのがセーラー服なのに、実年齢は若くともムチムチお姉さんキャラのゾフィーがセーラー服なんて着ると、ぱっと見で『うわぁ……』となり、実年齢を聞いてモヤモヤすることになるだろう。つまり、見た目だけじゃなくプラカードに実年齢を書いて掲げておく必要があるのだ。
「じゃあ17ってことにするか? 精霊たち除けばうちの最年長はサオになるけど、あいつ僻まなければいいけどな」
「セーラー服は正義だし、可愛いも正義だし、セーラー服のどこがいけないのさ。サオにも買ってやればいいじゃん」
アリエルはもう説得しても無駄だと判断した。ゾフィーにはセーラー服を買ってあげた上で、いろんな服を提案したほうがいい。
「そっか。じゃあゾフィーはセーラー服がいいんだな? 後悔しないんだな?」
「だって可愛いし。アルカディアのファッションもいいなーって思ってたのよ」
あっ……。
アリエルは思い出した。
ゾフィーなら変身できるはずだ。たしか……。
ゾフィーの転移魔法は相当に高精度だから、わざわざ脱いだり着たりしなくてもパパッって魔法で着替えることができる。服を脱ぐときもパッと全裸。服を着るときもいきなりパッと服を着ていて、あと着丈を揃えたり、袖を所定の位置まで引いたりするだけだ。
「じゃあ取引しよう。セーラー服を買ってあげるからゾフィーは着替えるとき転移魔法で着替えてその時『ハニーフラーッシュ!』って叫ぶ」
「ええええっ? なにそれ? はにーふら――っす?」
「兄ちゃん、それダメだからね……」
「えーっ? なんでだよ」
「ゾフィー、本気にしちゃダメ。それアルカディアのアニメなんだ」
「あにめ?」
まずい。真沙希がアニメの説明をしそうだ。
ゾフィーなら空中元素固定装置を再現できると思ったからだ。いったん服を消して全裸になって、そのあと服を再構成するところ、転移魔法でうまく瞬間的に着替えるという……。
だがしかし、ここで食い下がって『ハニーっていうのは女性の名前で、着替えるとき一瞬だけ裸になるんだよ』なんて告げ口されるよりも引き下がった方がマシだと判断した。
しかもゾフィーのセーラー服をディオネよりも先に済ませることにする。この話をずっと引っ張られるよりも、ここでいったん終わってくれた方がいい。
「くっそ、仕方ないな。じゃあディオネんとこ行く前にちょっくらセカ寄ってくっか? パチンで頼むわ」
「兄ちゃん怪しい。なんか引き際が良すぎる!」
「はい、わかりました。やった」
―― パチン!
ゾフィーは歓喜してパチンとセカにやってきた。今日2度目のセカだ。まさかディオネの教室に行くだけなのに、こんなにも遠い道のりを移動し、家具屋でロッキングチェアを買ったときもそうだったが、出費がかさむなんてことも思ってなかった。
セカにとんぼ帰りしたアリエルたち一行は中央通りの洋服屋、マラドーナ装品店のセカ本店に来た。仕立て屋としてはここがいちばん信頼できる。金属や革を使う装備品は扱わないが、魔導師のローブなどをテーラーメイドしてくれる魔導学院御用達のお店だ。魔導師の着る耐火・耐熱素材のローブは信頼と安心のブランド、マラドーナ製が人気だ。
ここはマローニにあるマラドーナ装品店の本店なのだそうだ。ちなみにパシテーの黒い衣装(ブルネットの魔女)を作ってくれたのはこの店だった。ゾフィーもセーラー服の悪夢とか言われなければいいが。
アリエルはゾフィーと真沙希を連れて装品店のドアを潜り抜けると首からメジャーをぶらさげた店員さんが迎えてくれた。
「マラドーナ装品店へようこそ」
「戦闘に耐える服を仕立ててほしい。デザインは……真沙希こっちきて、ほらこの服だよ。この服と同じデザインで、こっちの背の高い方の女性の身体に合わせて仕立ててほしい」
「はい……。変わったデザインの服ですね。この襟は背中まであるの? 襟カバーと襟は別体になっていてタイを胸の真ん中で絞る感じになるのね。このデザインで仕立てるの? 何かの衣装なのですか?」
「衣装というよりも制服ですね」
「ほう、これは可愛い制服ですね。でもスカート短かすぎませんか? 戦闘に耐えるようにするなら肌の露出は最小限にしていただいたほうが有利となりますが」
「いや、戦闘の激しい動きに耐えられるようなものを。激しく動いたからビリっと破けたなんてことがない引っ張り強度の強い生地で、しかもストレッチ性を持たせてくれないと動きが妨げられるから、動きやすさ重視で。防御と障壁は魔法でやるから服の方は防御力を考えなくていい」
「なるほど、そういうことですか。かしこまりました。こちらの方は恵体が極まっていますよね、お胸が羨ましいほど大きいので、このデザインですと、どうしても下部に隙間ができますが」
ふむ。胸の下がスカスカになるという意味だ。こういう時は2種類の選択肢がある。
「乳袋にはなりませんか?」
「えっと、乳袋とは? いったいどのような……」
「いえ、すみません忘れてください、隙間おおいに結構、望むところです」
「かしこまりました。では、デザインスケッチの者と採寸の者を呼びますから、こちらの方でしばらくお待ちください。その間に生地と仕上げの相談をしましょう」
「仕上げはお任せする。生地はどんなのがある?」
「耐火素材の黒が人気ですけど、こちら厳密な黒じゃないですね、濃紺よりも黒に近い感じですか」
「そうです。黒にわずかな紺を混ぜてもらえばこの色になると思いますね、耐火素材でこの色できますか?」
「ええ、できますとも。そこそこ値は張りますが……」
「大丈夫だ。できればこのデザインを置いといてほしい。また洗い替えなどを注文しに来るかもしれないので」
「かしこまりました」
ゾフィーと真沙希が引っ張って行かれて採寸しているところだ。真沙希をモデルにスケッチする女が2人きて何カットも描いていた。
結局、採寸とスケッチと仕上げの相談に小1時間ぐらいかかり、仕上がりは10日後ということで話は決まった。それまでゾフィーはワクワクしながら待つことになる。
「兄ちゃん、私も予備の服が欲しいかも……」
「そか、ゾフィーのセーラー服の出来をみて、真沙希も欲しいと思ったら注文すればいいよ」
「わあ、やった。ありがとう兄ちゃん大好きだよ!」
「おお、真沙希、もう一度言ってくれ!」
「やだ」
「なんでだよ、いいじゃん減るもんじゃなし」
「服を買ってくれると言ってくれたからその報酬として大好きって言ったの。あまり言うとジュノーがうるさいんだ、露骨にイヤそうな顔するしさ。兄ちゃんに触れたらキッ!って睨むし。誰も取らないのに」
「あははは、だってジュノーすっごいヤキモチ妬きだもの」
「ほんっと! ジュノーって自分が妬いてることに気付いてないよね絶対」
などとジュノーの事で談笑するゾフィーと真沙希の姿があった。
こいつらいつからこんなに仲良くなったのだろう? 真沙希何度かゾフィーに殺されかけたから苦手だって言ってたはずなのだが、これは話の切れ目を狙って割り込まないと、ずっと続くタイプの雑談だ。アリエルはタイミングを見計らって声をかけた。
「んじゃ、そろそろ魔導学院に行って用事を済ませようか」
「はーい。戻るのね」
―― パチン!
いつもより3割増しぐらいに乾いた指パッチンが響くと、ノーデンリヒト魔導学院、ディオネの研究室前に転移して戻った。
無造作にドアをノックするアリエル。しかし返事がない。
ドアを引いてみたところカギがかかっている。1時間も寄り道したせいで研究室を出てどこかに行ったのだろうか。
アリエルは通り掛かりの院生にディオネの行方について尋ねた。
「ねえ、ディオネどこに居るかわかる?」
「ディオネ? 助教ですか? 助教なら講義に出ていますから第二講堂ですね。ここの先3つめの教室です」
「第二講堂か……ありがとう。でも講義中なら会えないか……」
「講義中でも出入りは自由ですよ。まだ始まったばかりですし、私もこれからディオネ助教の講義を聞きにいくところなんですが、ご一緒しますか? 私アリシアといいます。あなたたちは? どこの学生さんですか」
「それがいいな、一緒に行こうか。俺はアリエル・ベルセリウスだ。アリエルさん!って呼んでくれたら喜んで胸に飛び込むからね。よろしく」
「アアアアア……アリエル・ベルセリウスぅぅぅ!?」
「兄ちゃん、ジュノーや美月いないからって……ナンパしたわね、ゾフィーは怒るべきよ」
「え? なんぱ? もしかして浮気する気なの? その子と?」
「しない! しないから、真沙希やめろ、ゾフィーにその手の冗談は通用しないんだ。ジュノーがいないときに真っ二つにされたら助けられないだろ? それと告げ口もナシだからね!」
辟易するアリシアに前を歩かせて、アリエルたちはディオネが講義する講堂の後ろドアからそっと入った。




