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15-02 幹部たちの会合

アリエルとエレノワ商会は、18年前に起こした事件により因縁があります。読者の皆様、もう忘れてしまった方、いらっしゃるでしょう。もし興味がございましたら、以下を参照くださると思い出していただけると思います。

第160部分 07-15 エレノワ商会(レイヴン傭兵団本部)襲撃!

第161部分 07-16 大規模市街戦

第162部分 07-17 セルダル家の敗北

第163部分 07-18 レイヴン傭兵団の最期


 ここの警備を任された傭兵団のラリッサは隊長職につきながら、この非常事態にまだ起き上がれずにいた。警戒状態にある任地で身元の分からない者を招き入れておきながら油断するからこうなる。軍では考えられないような失態だ。


 起き上がろうとするラリッサを足蹴にして転がすロザリンド。仰向けにひっくり返してフルプレートを装備する胸を踏みつけた。

 爆破魔法の爆心から遠かったおかげで受けたダメージが軽かったものは、地面にへばりつこうとする重い身体を力ずくでズルズルと引き起こしてようやく手のひらと膝が地面から剥がれて二本の足で立ち上がったところだ。


 爆撃を受けなかった建物から装備品も身に付けず、ただひと振りの剣を鞘のまま握り、ワラワラと出てきては、アリエルたちを囲むため遠巻きに集まり始めた。


 周りを囲む傭兵たちの数はざっと40。倒れて未だ戦闘準備の出来ていないという自覚なきものが15~6程度か。あとは建物のなかで軽く瓦礫に埋もれているか、建物が無事なのに出て来ようとしない7~8人の集団がいる。恐らくはグローリアスとかいう奴隷商人たちだろう。こんな時のために高いカネ出して傭兵団を雇っいるのだから、自分たちが矢面に出てくることはない。


 ロザリンドが傭兵隊長のラリッサを踏みつけにしたまま、抜き身の長剣をその喉に突き付け、この命のやり取りが始まった鉄火場に膠着状態を作り出した。おかげで少しだけ話ができそうだ。


 アリエルが一歩前に出たことにより、この場を取り囲む者たちの注目を集めた。

 いつもより5割増しの大声を張り上げ、アリエルは全員に向けて宣告する。


「あー、アンタらは不法にフェイスロンド領を侵犯している。ざっと見たところ、領地の侵犯に加え、不法占拠と武装強盗は間違いないな、ここまでで終身刑にもなりうる。さらには誘拐と監禁、傷害と人身売買を適用すれば死刑だなこりゃ。剣を抜いてこちらに向ける行為そのものも脅迫と見なすからな」


 ロザリンドに踏まれてるラリッサという男は耳がやられているらしく今すぐ話ができる状況じゃない。

 剣を構えてアリエルたちを取り囲む男の一人が、剣を鞘に戻したあと一歩前に出て名乗りを上げた。


「レイヴン傭兵団、第十六小隊、副隊長のデトールだ。まずはラリッサ隊長の身柄をこちらに引き渡してもらいたい」


「この男は先ほど挙げた複数の罪状のかどで俺たちが逮捕した。お前たち傭兵団はシェダール王国に認められた正規の軍隊ではない。ダリル領内ではそれなりの地位があろうと、ここフェイスロンドでは一般人と同じ扱いを受ける。つまり犯罪者だ」



 取り巻きの男がアリエルを睨みつけ、副隊長を名乗る男に進言する。

「副隊長どの、交渉する必要などありません。こんな生意気なガキ、殺したところで誰も問題にしません。それにあのエルフを売れば金になります」


「黙れ! それ以上口を開くな。……失礼した。時に少年、先ほどの魔法だが、あれは爆破魔法とお見受けしたが? いかがか?」


「そうだ。だとしたらどうする?」


「いや、どうもしない。この戦力ではどうしようもないことが分かった。全員武装解除だ。剣を捨てよ」


「副隊長どの! 説明していただきたい。なぜこのような……」


「命令である!! 私の声が聞こえる者は全員、即時武装解除せよ!」



 アリエルの足元に剣を投げ捨てたこの男、戦おうともせず頭上で手のひらを見せている。

 歯噛みしながらこの男の言う通り、武装解除に応じ、剣を投げてよこす者が多い。まさかの展開だったが、ロザリンドは感心したように「ほう……」と唸った。それはアリエルにしても同じだった。


「へー、そう来るとは思わなかったよ。どういうつもりだ? 何を狙ってるのさ?」


「先ほどの爆破魔法、ベルセリウス派の魔導師どのとお見受けした。どう言うつもりかと問われれば、単純に彼我の戦力分析をしてみたところ、勝算はゼロに等しいと分かったからだ。爆破魔法の恐ろしさは18年前のダリルマンディ襲撃でイヤというほど知っておる、現に私自身、命を落としかけたからな。たったこれしきの戦力で挑んだとて、戦いにすらならん。次の瞬間には皆殺しにされるのがオチだ。よって私の狙いはひとつ、戦闘を避けてこの場から撤退することである。いまそこに捕らえられたラリッサ隊長を含め、建物の中にいて瓦礫の下敷きになっている生存者の救助もした上で、全員を解放していただきたい」



 アリエルたちを包囲する傭兵たちのなかに動揺が広がった。仮にもレイヴン傭兵団に名を連ねる傭兵たちだ、過去にあった因縁を知らない、若い団員も多いが、それでもベルセリウスを宿敵として徹底的に教育された叩き上げの傭兵たちだ。ダリルでの一件以来、アリエルたちの悪評極まれりと言ったところだ。


 そもそもこうなった原因は、18年前のダリルマンディ襲撃にあるというが、アリエルたちは襲撃などしていない。もとはと言えばパシテーの母フィービーを探しに行っただけという、それだけの事だ。結果、レイヴン傭兵団は運営母体であるエレノワ商会と共に壊滅的な被害を被り、トップのエレノワ騎士伯も名誉の戦死を遂げた。ダリル領軍と衛兵隊あわせて大規模な市街戦を繰り広げたが、甚大な被害を出したにも拘わらず、アリエルたちは涼しい顔でダリルマンディを後にしたという。


 アリエルたちにしてみれば大した事件ではなかったが、よくよく考えてみると、シェダール王国を代表する四大貴族の治めるダリル領、しかも領都ダリルマンディに、たった2人の魔導師が攻め込み、勇猛さで知られるレイヴン傭兵団を襲撃したあと、市街戦を繰り広げながら目抜き通りを堂々と進撃し、ダリル領主の屋敷に正面から侵入。そのままセルダル家当主ヘスロー・セルダルを殺害したのだ。


 その事実は当時のシェダール王国では国を揺るがす大事件として扱われた。ダリルマンディ襲撃事件はシェダール王国にあって、王都プロテウスでは果たしてアリエル・ベルセリウスが襲撃してきたとして、国王を守れるのかという議論を巻き起こした。議論は紛糾し、現状の戦力では国王の安全は担保できないと言い、アリエル・ベルセリウスとは戦うべからず! と断言した当時の王国騎士団長ショーン・ガモフが更迭されるなど、大きな混乱となった。


 ここで降伏し、全員の命を担保して、この場を離れたいといった副隊長デトールの頭の中ではもう結果が出ていたのである。現状の戦力を比べるべくもなかった。


 ベルセリウス派は王都プロテウスに攻め込んで国王の首をもって帰れるであろう、当時の王国騎士団長をして、王国軍と騎士団が総力を挙げても局地戦では対処しようがないととまで言わしめた魔導の権化。それと比較するべくもなく、国の要衝でもない辺鄙へんぴなところにある集落を警備するよう、決して高くない賃金で雇われた、たった100人の傭兵団。しかも最初の奇襲で半分以上は戦闘不能になった。戦おうなどという選択肢は最初からない。ここを命がけで死守せよなどという忠誠心もなければ、その必要もないのだ。どうせ数日後にはここを放棄し、撤退する事が決まっていたのだから、平穏無事に、歩いてダリルまで帰りたい。ただそれだけの事だ。




「師匠さすがです。私たちがベルセリウス派だと知っただけで降参しました!」


 サオはベルセリウスの名がそこまでの力を持っていることに目を輝かせた。しかしアリエルとしては名が売れたことで様々な面倒事を抱えたに過ぎず、その表情はすぐれない。



「まさかそう来るとはね……、ちょっとだけ驚いたよ。だけど戦闘なしでこの場を納められるならこっちとしても望むところだ。さっきも言った通り、あんたらここじゃ重罪人だ。それを見逃してもらえるほどの材料があるなら見せてもらおうか」


「まずは取り急ぎ、瓦礫に埋まった仲間を救出したいのだが、よろしいか!」

「いいだろう。ただし、こちらもたったいま牢馬車に積み込んだばかりのエルフたちを解放させてもらうが? いいかな?」


「どうぞご自由に。みんな、聞いた通りだ! ハムイス、ザムハー! 聞いていたな。以後の戦闘はなしだ。武器を捨てて救助に向かえ!」


「「はっ!」」



 アリエルはサオとエアリスを牢馬車に向かわせ、積み込まれたエルフたちの救助に当たらせると、パシテーもサオに続いた。


 ロザリンドは愛刀美月をその手からフッと消し去り、プレートメイルを踏んでいた足を引くと、途中から耳が聞こえていたのだろう、話の行方を理解していた隊長のラリッサは、腰からソードベルトをはずし、皆と同じように剣を投げ捨てた。その表情は苦渋に満ちていたが、格下の副隊長が決めたことに無言で従った。


 戦わずして白旗を挙げたデトールの思惑は知れたとして、アリエルにはまだ腑に落ちないことがある。

 商人が傭兵を雇うのは、商品を奪われないよう武力によって防衛力を行使するためだ。

 牢馬車に積み込まれた商品は普段より高値で買ってもらえると言っていた、お得意様は神聖典教会だから経済力は折り紙付きだ。


 それなのにあっさりと商品エルフを放棄した。

 まだある。


 隊長がロザリンドに踏まれて、喉元に剣を突きつけられていたとしても、副隊長が戦わずして降伏するなど、考えにくいことだ。格上であるはずの隊長が、なぜそんな決定をしたのか! などと問い質さず、あっさりと決定に従ったこともおかしい。この対応が不自然な事じゃないとするならば、きっと何か、こういうときはそうするといったマニュアルが存在し、副隊長のデトールはマニュアルに従っただけということが考えられる。


 商品よりも大切な何かを警護している? としか考えられない。



 アリエルたちが過去、ここに立ち寄ったのは14歳のころ。ダリルから越境してエルフを攫ってゆく冒険者に悩まされていたこの集落は、村という生活拠点ではなく、人里から離れたところにある醸造所ということで、そこに働く80人ほどが暮らしていた集落だ。こんな集落に120人、うち10人が商品だとしても、残り約110が護衛だとすると、誰の護衛なのかという疑問がまず先にある。


 たったいま起こった爆発で、仮眠をとっていた者も襲撃だと分かったろう、飛び起きてみんな飛び出してきた。だけど動かない気配もある。アリエルたちが向かう先の、ちいさな建物に8人分の気配があり、その建物の表と裏を守るため、5人ずつが張り付いた。あの気配は恐らく護衛なのだろう。


 じゃあ護衛の付いた室内で息をひそめて隠れているのは、グローリアスの奴隷商人だ。

 それは間違いないだろう。


 だがここでも疑問は残る。奴隷商人はその名の通り、商人だ。

 コスト意識が先に立つ。奴隷商がいくら莫大な富を生むとしても、100人の傭兵を雇うと、1日のコストはどれぐらいになるのか。フェイスロンド領に侵犯した依頼人を守る任務に就いるとすれば出張の費用も相当な額になるはずだ。日本だとどうだろう? 警備員を100人雇ったら、一日の経費はどれぐらいになるのか? 200万円か、300万円か。こんな小規模の集落を警護するのに、普通の商人なら警備の傭兵を10人雇えば事足りるのではないか。



 あっさりと武装解除して、生還を目的とした交渉を相手側から仕掛けてきたこと。

 そもそもアリエルはレイヴン傭兵団を一度は壊滅に追いやった仇敵のはずだ。それを、戦わずして降参したとなるとダリルに帰ってからどんなバッシングを受けるか分からないだろうに。


 そしておよそコスト的に見合わないほど大規模な傭兵の数。

 いまだ動かない、奥の建物に身を潜めた8人ほどの気配。


 この集落の門には、レイヴン傭兵団の在留旗よりも目立つように、藍色の旗が掲げられていた……。

 アリエルの知らない旗だった。しかしエアリスが言った。グローリアスの旗だと。

 更にもう一つ、疑い始めたらきりがないことも確かだが、門番がフルプレートメイルなどという、高価な支給品を装備していたことまで不審に思えてくる。



 なぜだ? なぜだ?と疑問に思っていたことが一本の線に繋がった。


 アリエルはひとつの解に辿り着いた。



「隊長を返したのだから、ここから先は隊長と話すべきかな?」

「いや、ベリアル少年、ここまで進んだ話だ、交渉は副隊長のデトールに委任する。役に立たなかった私は参謀役を務めさせてもらうとするよ……」


「ではデトールさん、あなたが交渉の窓口になると? そういう事で構わないのかな?」

「しかと承った」


「では要求する。交渉の相手はアンタじゃない。グローリアスの幹部がいるだろ? そいつらを全員ここに連れてこい。あっちの小さな木造の建物に護衛をつけて隠れてるのは分かってる。人数にして8人ほどか。そいつら全員、雁首揃えて目の前に並べろ。交渉はそいつらとする」


「……っ! なぜそれを。いや、待たれよ、我が傭兵団にも守るべきものがある」


「なら交渉はナシだ。戦闘を再開するぞ、アンタら全員を殺してから引っ張り出せばいい」


「くっ、この……、悪魔め……」


「デトール、言われた通りにしよう。ここで意地を張っても死ぬだけ損だ。まだ依頼人を引き渡せとは言われていない。ここに連れてくるだけだ。意地を張らねばいけない場所を誤るな」


「わ、わかった。いう通りにしよう……」



 アリエルたちは牢馬車から下ろされたエルフの家族から離れることを嫌い、降参した傭兵団のものにグローリアス幹部を呼びに行かせたのだが、どうも気配がややこしい。


 呼びに行った副隊長が建物に着くと、護衛の男たちもみんな室内に入り、ごちゃごちゃと入れ替わっるような動きをして……、こっちに向かってゆっくり時間をかけながら近付いてくるのと、それとは逆に、残った10の気配がバタバタと大慌てで建物の裏口から出て行った。恐らくこのまま馬に乗るなりして、闇に乗じて逃げようとしているのだろう。



 しばらくすると、上等な服を着てはいるが、明らかにサイズが小さい。

 筋肉でパツパツになって、いまにもはち切れんばかりの大男たちがアリエルの前に並んだ。


 このマッチョで強そうな男たちがグローリアスの幹部だという。


「アホか! どうみても服が小さいだろ! オッサンがデカすぎるんだよ。あんたら本気で誤魔化せると思っているのか?」


「あはははっ、愉快だ」


 ロザリンドが笑ってしまって緊張感もくそもない。こいつらにしても大真面目でごまかせるなんて思っちゃいないだろう。目的は時間稼ぎだ。


「サオ、東の門から10人ほどコソコソ出て行こうとしてる。ちょっと行ってきて……」


「はいっ、分かりました。ハイペリオーン!!」


 サオはハイペリオンを呼び出すと、パチン! とゾフィーのマネをして指を鳴らし、エルフの家族を降ろし、空になった牢馬車をパッと消してみせた。どうやらサオの目にはゾフィーのパチンがカッコよく写っているようだ。しかしバカにはできない。たったいまサオのストレージには10人乗れる牢馬車が収納されたということだ。


「エアリス! 行きますよっ」

「はいっサオ師匠!」



 サオとエアリスがハイペリオンの背に乗って飛び去ると、身代わりとしてグローリアス幹部に化けた傭兵のなかにはハイペリオンに驚き腰を抜かしたものも居たが、隊長と副隊長は夜空に消えたハイペリオンを見送るように空を見上げた。

 こいつらハイペリオンを見て驚かなかった。18年前の戦闘でハイペリオンを見て知っている者の反応だ。



 しばらくすると、牢馬車を両腕に抱えたハイペリオンがホバリングしながらゆっくりと降りてきた。

 わずか数分という短時間で、逃げた10人全員を牢馬車に詰め込んで、この場に戻ってきたのだ。


 2メートルぐらいの高さからドスンと落とされた牢馬車は、車輪が壊れて傾いた。衝撃も大きかったのだろう、たったそれだけの事で頭を抱えて泣き叫ぶ者までいる。


 よほど恐怖なのだろう、牢馬車の中は数名の者が大騒ぎしているせいで阿鼻叫喚だった。


 取って付けたような身代わり作戦などうまく行くはずもなく、思った通り失敗し、交渉もできなくなってしまった傭兵団は隊長ですらもう口を出すことを許されず、ただ事の成り行きを見守ることしかできない。


 ハイペリオンをネストに帰し、牢馬車の扉を開けたのはサオではなく、不機嫌なのだろう、複雑な表情を隠そうともしないエアリスだった。なぜかエアリスの機嫌がよろしくない。


 力任せに大きな音を立て、バタンと乱暴に開かれた格子の扉から、迷いなく、腰を折ったままスルリと潜って最初に出てきた男は、見事なまでの金髪に碧眼、50歳を過ぎたぐらいの妙齢の男だった。


 多少の緊張感を含んだ目で、少し微笑んでいるようにも見える。

 自分の立場が分かっているのか? 妙に堂々としていて、牢馬車からおりて最初に、膝と尻についた埃をパタパタとはたき落としている。この男、ハイペリオンに捕らえられたというのに肝の座り具合が尋常ではない。真っ先に牢馬車を飛び降りると、まずは身だしなみを整えようとしている。


 エアリスはふくれっ面のまま無言でツカツカと肩いからせてその場を離れ、サオの後ろに引っ込んだ。

 なんだかとても不機嫌そうにしている、その原因はおそらく、この男の顔が、どこかエアリスに似ているからだろう。いや、目元と口元をよく見ると、エアリスどころかジュリエッタとビアンカにそっくり瓜二つのようにも見える。これは意外な人物だった。


 アリエルは深く溜息をついた。それは何という場面で会ってしまったのかという、諦めの境地から出た落胆の溜息だった。だが出会ってしまったものは仕方がないので、観念したように丁寧なお辞儀をしてみせた。


「ノーデンリヒトのアリエル・ベルセリウスです。初めまして? と言うべきですかね?」


 男はアリエルの丁寧な挨拶に応え、負けじとお辞儀を交えた、アリエルよりも、より丁寧な挨拶で返した。


「王都プロテウスでセンジュ商会を営んでいます。トラサルディ・センジュです。初めましてアリエル坊や、有名な甥っ子にずっと会ってみたかったんだがね、すれ違いばかりだったよ。ところでビアンカは元気にしているかね?」


 そう、この男はビアンカの兄にして現センジュ商会の会長、つまりアリエルとエアリスからすると叔父にあたる。奴隷政策に反発し、奴隷解放を掲げるベルセリウス家とは親戚関係でありながら奴隷商人となり、センジュ商会のセカ支店を任されているジュリエッタとは犬猿の仲。現在に至るも絶縁状態が続いていると言う。エアリスの反応をみるに、センジュ家でも相当モメているようだ。


 もちろんアリエルもこの男のやってることは許せない。会いたかったと言われたが、一生会いたくないと思っていた人物の一人だ。



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