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15-01 いつか来た道

第15章はじまりました。今後ともダウンフォール!よろしくおねがいします。

本章では奴隷商グローリアスとの抗争が始まります。

グローリアスについて、出典は11章26話「毒はカッコ悪いって言ってるのに」に少々。

この名もなき集落は→ 「3章23話 迷走の果てに」で出てきます。興味がございましたらご一読くださいませ。

・サブタイトル変更しました。過去に同じサブタイトルがあったので!


 グランネルジュに駐留していた守備隊たちは、カタリーナの攻撃を受けてもギリギリのところで命を拾った者、瀕死のまま助け出された者たちも治療を受けてようやく歩けるようになったことで、生き残った一般の入植者たちと共に、市外へ追放となった。彼らにはフェイスロンドから南下し、ダリルに戻る以外の道はない。


 周辺の街や村など、ダリル軍の駐留している拠点にはグランネルジュ陥落の報をもって、斥候たちが一斉に散っていった。フェイスロンドを攻めるいしずえを失ったのだ。ここから先、フェイスロンドに深く入ったダリル軍は確実に狩り出されることとなる。何よりも優先してダリルへ戻らねばならない。


 フェイスロンド軍がアリエルたちの力を借りてグランネルジュを取り返してから5日が経った。


 月明かりに照らされた荒野、黄土色の大地を藍色に染めている。

 シェダール王国には正確な世界地図がない。どれぐらい高緯度にあるのか想像に難くないが、王国南部に差し掛かるフェイスロンドとダリルの領境付近まで南にくだっても日が落ちると空気は肌寒く、頬に冷たく感じる。アリエルにつき合って一緒にスケイトで移動するのは、パシテーとサオの二人だ。


 アリエルが移動しないと、アリエルの陰に設置されたネストも移動しない。

 ゾフィーが一度でも行った事のある座標ならばパチンで空間転移可能だが、そうでない場合はアリエル自らが自分の足で移動する必要がある。べつに雑談しながら移動するわけじゃないが、ひとりだと寂しいので、今日のところはパシテーとサオが移動につき合ってくれていると、そういうわけだ。


 アリエルたちは艶めかしく柔らかな景色を楽しみながら街道を南下する。


 街道を真っすぐいくとすぐダリル領にはいってしまうという領境の三叉路を東に向かうと、荒野の中にぽつんと小さな集落があった。


 気配を探ってみると集落の中にはおよそ120の気配があって、いちばん高い建物の中にギュウギュウ詰めの状態で10人ほど押し込まれている。アリエルはこの集落を知っていた。前に少し立ち寄ったことがある。この集落は酒蔵だったらしいが、いまは篝火が焚かれていてそれなりに警戒中のようだ。ギュウギュウ詰めにされてる10人ぐらいの気配が隠れてるわけじゃないとすれば、捕まって集められた者たちなのだろう 


 特徴的なサイロのような白壁の建物に見覚えがあるようで、パシテーの表情が曇った。


「パシテー、ここ覚えてるか?」

「ん。忘れたいけど忘れられないの……」


 そう、ここはいつだったか、アリエルたちが道に迷って立ち寄った際、冒険者だと、たったそれだけの理由で投石を受け集落を追い出されたという酷い思い出のあるところだ。 


 あの集落の人たちは『よそ者を集落に入れない』と排他的に振る舞う事で治安を守っていた。

 フェイスロンドの衛兵すら駐留していなかったのだから自分たちの身は自分たちで守るほかなかったのだろう。それでもダリルからの侵攻があると真っ先に踏みつぶされるのも仕方がない。

 いまはダリルの支配地になっている。


 集落の中心部にそびえるサイロのような建物はそのままだが、集落を一回りする防護壁は高くなっているし、門を閉じている扉も当時はなかった。戦時を潜り抜けていまもここにある集落なのだからこれぐらいの守りは必須なのだろうが。きっと中にいる者たちは、あのいけ好かない醸造所の作業員ではないのだろう。



「また寄っていくの?」

「そうだなあ、まあ、行きがけの駄賃というのもあるしな。ここはフェイスロンド領だから、さっさと帰れと、それだけでも言っておこうか」


 フェイスロンドに展開していたダリル軍の主力はすでに崩壊している。ここを死守する理由もないし、常識で考えれば当然ここにも斥候が急報を伝えているはず。それなのにまだ篝火をたいてこの場を放棄するでもなしに門番を立てている。


 アリエルは単純に連絡にミスがあり、グランネルジュ陥落の報がまだ届いていないのかもしれないと思った。一応、アリエルたちはノーデンリヒトからきたフェイスロンドの援軍という立場でここにいる。フェイスロンド領内では、相手がダリル軍なら問答無用で戦闘を開始してもいいことになっているが、斥候に事故があって報告を読んでいないというなら話は別だ。まずは退避勧告からしなくては、ノーデンリヒトからきた義勇軍の評判が地に落ちる。



 闇に乗じてちょっと様子見がてら集落の北門に近付いたアリエルが違和感に気付いた。


 集落の門に掲げられた旗がどうやらダリルのものとは違う色だし、門番の兵士も装備がえらく高級なのだ。ダリル兵なら隊長クラスじゃないと着させてもらえないようなプレートメイルを、門番が装備しているなど考えられない。つまりこの集落に駐留しているのはダリルの正規軍じゃない。


 しかしここはいまダリルの支配地になっているはずだし、フェイスロンド軍はこんなところまで手を伸ばしてこられるかというと、それは絶対にない。そもそもフェイスロンダ―ル卿がそんな素早い手を打てるならば、みすみすグランネルジュを失うこともなかった。


「あれどこの旗だろう? 藍染っぽいけど見たことがない……。この辺のことに詳しいやついない? えっと、エアリス知らないかな?」


 アリエルがエアリスの名を呼ぶと、パシテーがリフォームしたネストからエアリスが飛び出してきた。


「はいっ、お呼びでしょうか!」

「お、いいね。声どうだった? ちゃんと中に聞こえてた?」


「はい、ちょうどいい音量でバッチリです」


 カタリーナが暴れてぐちゃぐちゃになったネストをパシテーがリフォームしたついでに、ゾフィーにネストの魔法陣を構成するプログラムを少し変えてもらい、外の音声がネストの中まで届くようにしたのだ。

 声は一方通行なので逆にネスト内部の音声が外に漏れるということはない。


 呼び出すときわざわざネストに入って声をかけるという手間がなくなったのはいいけれど、アリエルはこの仕組みによって、今後ずーっと下手なことは言えなくなってしまった。便利だけど非常に危うい魔法陣だ。


 外の会話が聞こえていたエアリスは少し身を乗り出して、アリエルが藍染と言った旗を遠目からまじまじと見つめ、ゴクリと生唾を飲みい込んで、答えた。


「グローリアス……」


 エアリスの口を突いて出た言葉が『グローリアス』だった。

 篝火の柔らかな明かりに照らし出された、風のない夜に、暗色で闇に溶ける旗の色をこの距離からよくもまあ見分けたものだ。アリエルたちもその名は聞いたことがあった。以前、フェアルの村にいた奴隷狩りのダリル兵を締め上げた時に聞いた。たしか奴隷商の商工会議所をやってる卸問屋の大御所だったはず。


「へえ、奴隷商の?」

「はい。恥ずかしい話ですが、センジュ商会の本家とも太いパイプがあって、取引があります……。身内がすみません……」


 エアリスの身内ということは、アリエルの身内だということだ。

 王都にあるセンジュ商会の本家は、アリエルの母ビアンカの実家なのだから。いまはビアンカの兄がセンジュ商会を継いで奴隷商で大儲けしているらしいこともよく知っている。


 "身内がすみません……"といったエアリスの気持ちも、アリエルには理解できた。


「センジュ商会がらみって訳じゃなさそうだけど、これは放っておくわけにもいかないか……。しかしグローリアスってのは金持ちなんだな、門番がフルプレート着てやがるし」


「えっと、グローリアスには兵士はいないはずです。この辺りがダリルの支配地域だったら、あの門番はきっとエレノワ商会の傭兵ですね」


「エレノワ? 何だっけか? どっかで聞いたような気がするな」


「兄さま忘れてるの……。エレノワ商会はダリルマンディの奴隷商で、私たちはレイヴン傭兵団と戦闘になったの」


「あーあー、あったなあ!」


 パシテーに言われて思い出した。

 そういえばあった。エレノワ騎士伯とかいう、カネで買える一代限りの下級貴族の称号を持ってたから人質になってもらってセルダル家の門を開かせようと思ったのに、ダリルの親衛隊に問答無用で殺された残念な奴だった。


「なんとなく思い出してきた……。でもあいつらが傭兵だったならこっちの立場の方が強いじゃないか、ならコソコソする必要ないな」


「絶対戦闘になるの……」

「私の超絶華麗な転移魔法を使った爆裂が火を噴きますっ」

「サオ師匠がんばってくださいっ」


「まてまて……サオおまえ本当に好戦的だなあ。考えてみろ、俺たちはノーデンリヒトから来たフェイスロンドへの援軍なんだぜ? 領主の承認を得ているから俺たちの権限は正規軍とあまり変わらないんだ」


「問答無用です。コテンパンにのしてやります」


「問答無用でコテンパンはダメだって。あいつらはダリルの正規軍じゃなくて傭兵だ。つまりフェイスロンドの側からすると奴ら民間人なんだぞ? ダリル領主の権限が及ばないフェイスロンド領だと、剣を抜いただけで犯罪になる可能性もあるんだからな」


「尚更いいじゃないですか! 私たちが正義ってことですよね!」

「おまえ本当に分かってんのか? すっごいイヤな役どころになるんだぞ?」


「ふふふふっ。望むところですっ」

「望むのかよ!」


 サオはいま言われたことが何を意味しているのか、ちょっと分からないようだ。

 交渉事が苦手な理由、ちょっとだけ分かった気がした。


 するとネストの魔法陣が鈍い光を発し、ロザリンドがスッと出てきた。


「いいね、面白そうじゃん。私も参加する」


 いまの会話を聞いて尚、このニヤニヤした表情……、なにか悪いことを考えてる顔だ。


「ロザリィも面白そうって言ってます!」

「おまえら本当にロクでもないな……」


「師匠もですからねっ」



----


 アリエルたちはいったん街道に戻ってランタンに火を灯し、相手側からもよく見えるよう正面からこの名も知らぬ集落に近付くと、門番を仰せつかっていたであろう男が5人ゾロゾロと出てきて行く手を遮った。


「5人か……、多いな」


 マローニほどの規模の街でも東西南北の門に常駐している衛兵は5人もいなかった。

 こんな100人ちょっとしか気配の感じないような集落の門にフル装備の傭兵が5人というのは大げさすぎる。


 アリエルたちが歩を止めず門に近付くと、門番の一人が両手を大きく振って静止した。


「まて! とまれ!」

「おい、エルフだ……、エルフを連れているぞ……」


「エルフを連れているなるとフェイスロンド領民ではないな。もしやグランネルジュから逃げてきた入植者か?」


 勝手に勘違いしてくれたことに少し驚いたが、これはうまくすれば戦闘なしにいろんな情報が手に入るかもしれないチャンスだ。アリエルはロザリンドたちと交互に顔を見合わせ、目くばせで合図を送り、すこし大げさに答えた。


「そうなんです! グランネルジュはもうダメです。すみません、中に入れてもらえませんか?」

「ダリル領民だと証明できるものはあるか? 入植者証でもいいぞ?」


「全てを失ってしまいました。命からがら、着の身着のままで逃げてきたのです……」


「そ、そうか。ならば仕方がないな、話を聞かせてもらいたいのだが、それでもいいかね?」

「はい、何か食べ物を分けていただけると嬉しいのですが」


「わかった。ただし私たちと同じ粗末な食事になるぞ……」

「感謝します」


 アリエルたちは門の横にある、ロザリンドがくぐるのに難儀するほど小さな通用口から通され、集落の中へと招き入れられた。



 アリエルたちが集落の中に足を踏み入れると、いくつも篝火が焚かれていてけっこう明るいことに驚いた。祭りか、厳戒態勢かのどちらかだ。そして多分後者、厳戒態勢だ。


 集落の奥の方から強化魔法をかけ、ガチャガチャと鉄靴の音を響かせて走ってくる人影が数名ほど。

 アリエルたちの来訪を誰かが知らせたのだろう、だとすれば走ってきた男は恐らく、門番などとは階級の違う責任者クラスだ。


「まてまてまて、止まれ。そこから一歩も動くな! セネガル貴様、誰の許可を得てこの中継基地に部外者を入れたのか」


「はっ! この者たちは見たところまだ15~6歳の若者で、帯剣しておりません。全員が丸腰で、しかもエルフを一人連れています。身分を証明するものはありませんが、大混乱があったというグランネルジュからの避難者だと言うので、保護せねばと思いました」


「ほう、グランネルジュが陥落したと言うのは本当だったか。私はレイヴン傭兵団でここの警護を任されておるラリッサという。少年、名は何という?」


「俺? 俺はベリアルといいます」


 咄嗟に出た名がこの世界に転移してきたとき強制的に頂いた洗礼名だった。

 あからさまにウソをついてるわけでもない。


「そっちのエルフは? どこで手に入れた?」

「20年ほど前に父が、ダリルマンディのエレノワ商会で。記録が残っていると思いますが?」


「なるほど、お客様であったか。それはそれは、大変な目に遭われたな。ではこんなとこで立ち話も何だ、腹が減ってるだろう? ご馳走はできないが腹を満たすぐらいの食事なら振舞おう」


 エレノワ商会は丁寧な奴隷商人だ。たとえ傭兵団とはいえ、客に対する礼儀は叩き込まれているようだ。アリエルは傭兵たちと同じテーブルしかないぞと念を押され案内されて着いて行く道すがら、ギュウギュウに押し込まれている10人がいま後ろ手に手枷を嵌められ厳重に目隠しされた状態で牢馬車に乗せられているところに遭遇した。目隠しと後ろ手に縛られているということは、あの男、魔導師だ。指で起動式を書くことができないよう後ろ手に縛り、網膜に起動式を映すことができないよう目隠しをしないと安全ではない。目隠しまで施された魔導師は3人か。


「へー、エルフの魔導師まで扱っているのですか?」


「そうだ。さるお得意がエルフの魔導師を家族全員セットならという条件でな、びっくりするような高値で売れるんだ。もう何十という家族を出荷しておるのだが、この商品が最後だな。夜のうちに出荷して、我らも一両日中にはここを引き上げることとなった。ベリアルさんも同行すればいい。行き先はダリルマンディだが……、手ぶらで逃げてこられたのなら当面の生活費にも困ろう、なればそこのエルフを売るという手もある」


 サオが少しイラっとしたらしく、微笑む口元が引き攣っているように見えた。

 背中をさする形でなだめるエアリス。もうどっちが師匠でどっちが弟子なのか分からなくなっている。


 サオのイラつく理由とは別に、アリエルもたったいま牢馬車に詰め込まれたエルフ家族の行き先が、なんとなく理解でき、その行き先の事で少しイライラし始めたようで、言わなくていい余計なことを口に出した。


「さるお得意様ねえ……、それって神聖典教会しんせいてんきょうかいですよね……」


「……ほう、ベリアル少年、あまり詮索しないでいただきたいのだが、私にはその問いに答えることはできかねるのでな」


「牢馬車の行き先を当ててやろうか? ダレリア特殊訓練場、人里離れた土地にある神殿騎士団の訓練施設だろ? ここからだと馬車で一昼夜といったところか……」



「師匠! どういうことなんですか?」


 サオが声を張り上げた。アリエルがイライラしていることを察した上で、我慢できないことには我慢しない、ストレートな性格が裏目に出た。傭兵団隊長のラリッサもサオの言動に訝った。


「グランネルジュの戦場だよ。カタリーナがマナを暴走させて暴れたのに、神殿騎士にあっさりと倒された。カタリーナほどの使い手が、マナを暴走させても、目に見えるほど大きな被害はなかったんだ。おかしいと思わないか? で、捕虜にした神殿騎士に聞いてみたら、ダレリアにある訓練施設で、闇に堕ちた魔導師と戦う訓練をしていたらしい。奴ら闇魔法に慣れていたから対処法も当然知ってたんだ」


「ええっ? 分かりません、どういうことなんですか?」


 内心、もしかすると……というところまで気付いておきながら、それを否定するかのように、分からないと言うサオ。自分の考えていることが間違っていてほしい。否定してほしいと願い、改めて聞き返している。しかしロザリンドはそんなサオの思いを無碍にし、現実を突きつけた。


「サオ。あの魔導師たちはダレリア訓練場でマナを暴走させて、闇に落とされるのよ」

「ああ、そして神殿騎士たちの訓練で殺されるんだ」


「魔導師がマナを暴走させるなんて、そんな、思ったように……」


「そのために家族を使うの」


 直立不動のまま拳を握り締め、わなわなと震えながらサオは目に涙を浮かべながら怒りを口にする。


「師匠! 私あの家族を助けますっ!」


 言うが早いか、行動が早いか。サオは両手のひらにまばゆく光る爆破魔法を練り上げた。


 しかしサオの爆破魔法が起爆するよりも一瞬早く、爆発音が響いた。

 遠くのほうから断続的に爆発音が近付いてくる。アリエルの爆破魔法だ。



 ―― ドドドドオドォォドドドオオオゥゥゥン!!


 さきほどくぐってきた門、傭兵の宿舎と思しき建物、そしてこれから案内されようとしていた食堂のある建物が突然、空爆でも受けたかのように大爆発に見舞われた。


 サオが練り上げた爆破魔法は無意識に大きすぎる。きっとまた怒りに任せてでっかいのを練り上げたのだろう。これはサオのいいところでもあり、悪いところでもある。


 戦場ならまだしもこんな集落の中で、更にガバガバな精度で転移魔法を使った日にゃ、ランダムにあの、今まさに牢馬車に積み込まれようとしているエルフの家族にクリティカルヒットする危険性もなきにしもあらずだ。


 アリエルはパシテーほどではないにせよ、正確に建物の屋台骨を破壊し、小さな爆発で効果的に傭兵団の戦う力をそいでいった。


 建物におらず難を逃れた傭兵たちはみな耳を押さえて動きを止めたり、その場にしゃがみ込んだり。

 どちらにせよ動きを止めたのだからもう生殺与奪の権はアリエルたちが握ったも同然だった。


 アリエルたちの中で耳を押さえているのはエアリスだけ。まだ耐風障壁の仕上がりが甘いようだが、サオの弟子になって数か月、12歳の少女がこれほどの衝撃波を間近に受けて立っていられるというのは驚異的なことだ。事実、その防御力魔法の強度は魔人族の身体を持っていた頃のロザリンドなみといって過言ではない。


 アリエルは仲間の無事を確認したあと、視界を遮る埃と煙を風魔法で吹き飛ばしながら、あの家族を助けると言ったサオに、その判断は間違ってない!と言わんばかりのドヤ顔で応えた。


「そう言うと思って、仕掛けといた」


「気が付きませんでした! さすが師匠です」


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