14-18 捕らえた男の正体
台風が来ます。嵐です。テンペストです。
作者の家は進行予報にある線を引かれた真下にあります。ここで更新が止まったら、きっと台風のせいです。
台風が来る前に1000文字ほど加筆しました。
もう一度読み返していただけると嬉しいなあ。
「カッ……、カタリーナ! 消えた? いったいどこへ……」
その腕に抱いていたカタリーナを闇の触手に奪われ、狼狽するフェイスロンダ―ル。
カタリーナがてくてくの闇に抱かれ大渦を巻くように地面へと沈んでしまった。ネストをまるで理解していないフェイスロンダ―ルには消失マジックのように感じたろう。
「ああ、安心してください。もしかすると障害が残るかもしれないけど、てくてくに任せておけば大丈夫です。処置が間に合いさえすればちょっと暴走したぐらいで死ぬようなことはありませんから」
「カタリーナは大丈夫なんですね、死んだりしないんですよね……、ベルセリウス卿、援軍に来ていただいたおかげで、フェイスロンドはまた救われました……」
すこし目の焦点が合ってない? パニックに陥っているのかもしれない。
アリエルは、自らも闇の触手に触れられ平常心を保っていられないフェイスロンダ―ルを気遣うように言葉を重ねる。
「てくてくはああみえて精霊ですから、きっといい魔女に……ゴホン! えっと、、大丈夫ですよ……」
言いながらもアリエルはフェイスロンダ―ル卿から視線を外し、晴れ渡った秋空を見上げた。
「いや、大丈夫じゃないか……」
もう戦闘はあらかた終わったというのに接近して来る気配がある。
一番速いはずのハイペリオンが、物見遊山でもしてきたのかと思しきゆったりとしたペースで飛来し、そして大きな影となって戦場の上空を横切って、一回り、二回りと旋回している。
サオだ。
「ああーもうあのバカ、ハイペリオンをエルフたちの前に下ろす気か。瀕死の重傷者もいるってのに……ああー、フェイスロンダ―ル卿、こちらも大丈夫ですよ。息を止めなくても襲ってきたりしません。ハイペリオンはうちで飼ってるペットみたいなもので……、ってジュノー! 助けてくれフェイスロンダ―ル卿が倒れたっ!」
「ハイペリオンを引っ込めたら治るわよ。そんなことでいちいち呼ばないで、いま忙しいんだから」
「やばっ、泡を吹き始めた! どうしよう……マジでヤバくないか」
「すぐ死ぬことはないから大丈夫!」
動かすことができない重篤な怪我人が多くいるため、ジュノーはまだあっちこっち治癒に呼ばれて忙しそうにしているというのに、事情をまるで飲み込めていないハイペリオンが戦場のど真ん中に風を巻いてゆっくりと降りてきた。
敵軍に睨みを利かせるにはハイペリオンをこの場に置いておくのがいいのだけど、特に戦場ともなるとハイペリオンにも緊張が伝わり、意図的ではないにせよ今まさに強めの威圧を放っている。種族的劣勢なエルフ族はだいたいがハイペリオンの持つ無意識の威圧に抵抗できず、だいたいは運動能力の低下やめまいなどの症状を訴えるが、特に弱い者は時に呼吸困難に陥ることがある。
どうやら一時的に横隔膜が麻痺するらしい。
ハイペリオンがこの場にいるだけでエルフ族は動きを封じられたも同然なのだ。敵にだけ作用するような都合のいい威圧だったらよかったのだけど、逆にエルフ族にだけ強力に作用するのだからフェイスロンド軍にとっては大規模な弱体にしかならない。
上空からアリエルたちの位置を確認したサオは、おおよその配置を推測しハイペリオンが盾になる位置に下ろし、すぐさま飛び降りてアリエルに駆け寄った。
「師匠! 遅くなりましたっ」
「もう戦闘は終わってるからハイペリオンはすぐネストに。フェイスロンダ―ル卿が死んでしまう……」
「ああっ! 大変ですっ、ハイペリオーン! ネストへ」
サオもジュノーと同じくどっちが敵でどちらの味方をするのかよく理解しないまま、ただハイペリオンにアリエルの近くへ降りるよう指示しただけだ。いままさに多くの者が呼吸もできずに苦しんでいることにようやく気付いた。
「あー、そうだ、カタリーナさんがマナ暴走させて死にかけたとかで、いまてくてくの部屋にこもってるよ? もしかするとめったに見られないものが見られるかも?」
カタリーナほどの使い手がマナを暴走させたと聞いてサオは一瞬だけ動きを止めて考えたのち、すぐさまエアリスを呼んだ。
エアリスはハイペリオンがサオのネストに沈んでいったあと、気分を悪くしたようにうずくまるアマンダを介抱していたところを師サオに呼ばれた。いったい何のことかは分からないといった表情だ。。
「今すぐにてくてくの部屋に行きなさい。負傷者の救護はこっちに任せて、急ぐ急ぐ!」
「は、はいっ! ……アマンダごめん、ちょっと行ってくる!」
アマンダの背中をさすっていたエアリスは小走りで起動式を書いて、まるで足からプールに飛び込むがごとくネストに消えた。今の起動式、指先で書いたような形跡がないのに網膜にはしっかりと起動式が転写されていた。すごいなエアリスは、また何か新しい技術を考え出したのか……。
だけど今のはダメだ。家に入るとき玄関から飛び込んで帰宅するようなもの。まるで子どもの頃の美月のようじゃないか。転移した先にカタリーナが倒れていたら思いっきり踏んづけてしまうのに。これはあとでちょっと注意して……いや、注意するようにサオに言っておくことにする。
サオはボンヤリしているようで抜け目がない。魔力を暴走させて苦しんでいるカタリーナを、無詠唱で魔法を使うということがどういうことかを理解させるための "教材" に使う気だ。いや、欲を出せば闇魔法の基礎まで学べる。
てくてくはカタリーナに、もう魔導学院の先生はできなくなると言った。
確かに魔導学院の学長という職は退くことになるかもしれない。だけど瘴気をコントロールするというのも立派な魔導技術だ。
普通、ひとは体内のマナを魔法として使用するためには起動式を必要とする。
誤解を恐れず乱暴な表現をしてしまうと、起動式というのはコントロールなしに、書かれたオーダーシートのまま魔導を実行するコンピュータプログラムのようなものだ。同じ起動式を使う以上、だいたい同じ魔法が実行される。
まったく同じにならない理由は、マナの出る放出孔の大きさであったり、マナの濃淡であったり、気体質なのか粘度の高い液体質なのかという性質にも左右される。例えば濃度の高いマナを燃焼させれば、微量であっても大きな炎魔法となる。同じコンピュータプログラムを異なるPCで実行させるのと同じこと、表示される画面の大きさも違えば、その実行速度も大きく異なる。
要は魔法を使う人の資質によって同じ起動式を実行しても大きく違った結果になるということだ。
アリエルの身内ではサオのマナが濃くて粘度が高い。飛び散った先で爆発的な二次燃焼を起こすため、爆破魔法と相性がいいという特性を持っている。
魔力を暴走させるというのは、これまで起動式で開いたり閉じたりしていたマナの出口、つまり水道に例えると蛇口が全開状態で壊れてしまい、閉じられなくなった状態をいう。
また身内の話になるが、アリエルの身内でフォーセットを壊したのは、前世のパシテーだ。
ではなぜパシテーの命に別状なかったかというと、パシテーはその時もう魔法を無詠唱で使えるようになっていたからだ。感情が高ぶってフォーセットを全開にしてしまうと、暴走したのと同じような状態に陥ってしまう。
ひとはマナの蛇口を自分でコントロールすることができない。
自分の意志で心臓の鼓動を止めることができなかったり、体温の調節すらもできないのと同様にだ。
無詠唱で魔法を使うということは、無意識にマナのコントロールを自分ですること。
蛇口を、まるで呼吸するように無段階に調節することができるようになると、指先からライターのように小さな火を出す生活魔法のトーチが火炎放射器のようになるし、カタリーナほどの使い手ならば無詠唱を覚えただけで相当な魔法を行使することができるだろう。ただしマナと同時に生命力が流れ出す障害が残ってしまうだろうけれど。
同じようにフォーセットを壊したパシテーが、ついでといっちゃなんだが闇の魔法を学んだことからも、今後カタリーナがどうなるのかはだいたい窺い知れる。サオはそれを見越してエアリスをてくてくの部屋に行かせた。これまでいくら説明を受けても理解しづらかったことを目の前で見て、実際に触れて体験できるようにだ。魔導を探究し続けるカタリーナにとって、自らの肉体が教材になることは本望だろう。
そしてエアリスの魔法鍛錬も、もうその域にまで達しているということだ。
アリエルは、弟子が飛び込んで行ったネストを心配そうに見つめるサオの、その表情の変化を見逃さなかった。
「サオ、お前が不安そうな顔してどうする」
「師匠は心配じゃないんですか?」
「てくてくに任せるのが心配なら俺がマナを流し込んで無理やりフォーセットをこじ開けて、簡単な無詠唱の使い方を……」
「ダメですっ! 絶対にダメですからね、エアリスに触れないでください」
「瘴気の触手に巻かれることよりも俺に触れられる方が心配なのかよ……」
「当たり前です。師匠は不潔ですっ!」
「そこまで言うか……。まあいいけどね、どうせまだ魅了があるとか言われるんだろうしな。そんな事よりもサオ、なんでこんなに時間かかったんだ? 誰か落ちたんじゃないかと思って心配したぞ」
「アマンダが泣いたからですっ」
いちばん速いはずのハイペリオンに乗ってこれほど遅れたのは、単純にアマンダが高所恐怖症だったのと、絶叫マシーンに乗せられたリアクション芸人のごとくギャアギャア泣き喚いたためだそうだ。
いまようやく地面に降り、安堵感が勝ったのか、ぺたんと女の子座りで涙目になってる。
なにがロザリンドの再来だ、むちゃくちゃ女の子っぽくて可愛いじゃないか。
「よし俺が背中をさすってやろう……」
「ダメ――っ! ダメったらダメです。師匠は女の子に触っちゃダメ。ロザリィに言いつけますよっ!」
すぐこれだ。なんでもロザリンドに言いつけるといえば引き下がると思ってる。
『言いつけますよ!』なんて言われてるところをロザリンドに聞かれただけで誤解されてしまうじゃないか。どうせロザリンドが『ん? どうしたのサオ?』なんて興味を持つと、きっと『師匠がアマンダに痴漢を働こうとしましたっ』なんて言うに決まってる。
そうなったときのロザリンドの顔が目に浮かぶようだ。
アリエルが恐る恐るロザリンドのほうを見ると、もうとっくに戦闘を終えていて、いままさに鎧を着込んだ男を引きずって戦場に線を引きながらゆっくり戻ってくるところだった。
幸い、サオの言葉は聞こえなかったらしい。
少し異変を感じた。
ロザリンドが歩きにくそうで、ちょっと怒ってるような表情を垣間見せる。ケガでもしたのか、なにか様子がおかしいと思ったらロザリンドお気に入りのスニーカーが壊れていて、靴底の半分が剥がれている。一歩あるくごとにガパッ、ガパッと口を開く。まるで何か動物の腹話術人形のようだ。
ああ、あれか。
アリエルには心当たりがあった。
ロザリンドが特にお気に入りのスニーカーを壊してしまった原因、それはここまで競争しながら来る、その道中でいつものように、いつものごとく事故を起こしたせいだ。
この戦場に来て戦闘でダメージを受けたから靴が壊れた訳じゃない。
何度も言うが、ほんといつもの事なんだけど、ロザリンドはスケイトが下手くそなんだ。
とにかくスピードを追及するその姿勢は競技者そのものであり、美しくもある。
しのぎを削るアスリートが 0.01 秒のタイムを縮めるため切磋琢磨するのと同様に、誰よりもスピードを出すためだけに前を見続けて、周りの者の声が耳に入らないほどの集中力を研ぎ澄ます。
アスリート適性としては申し分ないのだろう。ただ惜しむらくはロザリンド本人がスケイトの鍛錬をしないことだ。
ロザリンドは前しか見ていない。そういうとなんだかカッコ良く聞こえるかもしれない。だがそれは、その日もてる全てのマナを加速にしか使わない。集中すると周りの者の声すら耳に入らないというのは言わずもがな、加速を始めたロザリンドは勝敗が決まるまで決して止まらないことを意味する。まるでブレーキ機構の付いてないロケットエンジンのようなものだ。
スタートから用意ドン! で置いていかれたジュノーに追いつこうとしてノーブレーキでコーナーに突っ込み、曲がり切れないと知るや、場当たり的に先に何があるか確認することなく、なーんにも考えずに大ジャンプでショートカットしようとした着地点に狩人が使う無人の小屋があった。空中で方向転換できないロザリンドは屋根を突き破って基礎から破壊してしまい、その小屋のあったところにはまるで小型の隕石が落ちたかのようなクレーターができたのだった。
ロザリンドにはまず、スローイン・ファーストアウトの基本から教えてやらないといけなさそうだ。
要するにブレーキの使い方から。
いや、ロザリンドはもうブレーキなんか学ぼうとしないかもしれない。ゾフィーの陰に隠れて最近は目立たないけど、そんな大事故を起こしておきながらカスリ傷ひとつ負わずに済んだというのだから、その防御力に裏付けられた打たれ強さも相当なレベルに仕上がっている。
さっき敵陣の大将旗の立ってるところに殴り込むのに一直線で突っ込んだもんだから、蹴散らした戦士や騎士の装備する剣や盾がロザリンドの身体に接触したはずなのに、傷もついてない。その辺の神殿騎士や名もなきダリルの戦士ぐらいなら剣を抜く必要もなく、ボーリングに例えると16ポンドのクソ重いボールをマッハで投げでストライクを取ったときの、さながら弾け飛ぶピンアクションのように人が吹き飛んでゆく。
この現象は年頃の女の子にいう言葉ではないが、体重差がもたらす慣性の法則で説明できる。
だがしかしロザリンドの体重は秘密で、何度教えてくれといっても教えてもらえないのだけど、普通のヒトの質量が高空から墜落したとしても、クレーターができるだろうか……。
なんだかロザリンドの体当たりの破壊力がものすごく増してる気がするのだが、気のせいじゃない。もちろん不機嫌そうな顔も、きっと気のせいじゃない。
そして壊れてしまったスニーカーだ。
ロザリンドの履くスニーカーは日本で買ったもので、スヴェアベルムに異世界転移するにあたって消耗品である靴をいくつも買い込み、一足一足とても大切にしている。なぜならスヴェアベルムではスニーカーなど手に入らないから。
ちなみにロザリンドの靴のサイズはUS11。センチメートル表記に直すと29センチ。玄関にロザリンドのスニーカーがあったら、どこか横須賀あたりの軍港に米海軍の空母が停泊している航空写真と見間違えるほど。
女性ものの靴で29センチなんてどこの店でも売ってるところを見たことがない。わざわざ電車で何時間も揺られて、靴を買うためだけに特別に大きなサイズを扱ってる店までいって、サイズを合わせて手に入れた靴なんだ。ロザリンドは身長が規格外に高いせいで、靴すら簡単に手に入らないという憂き目に遭っている。ズボンにしてもそうだ。股下1メートルもあるようなパンツ売ってないから切らずに履いても七分丈が標準になってた。
ロザリンドにとってそれなりに苦労して手に入れ、大切にしてきたスニーカーだった。
スヴェアベルムの革靴はちょっと歩くと足にタコができるからね。何よりも靴だけは絶対にアルカディア製がいい。
ジュノーもパシテーもだ。スヴェアベルムに戻ると決めたからには靴をいっぱい買い込んでいた。
すべてはストレージに収まっていてまだ予備がある。とはいえ、こんなにも早く靴を壊してしまったことで、少し不機嫌だったのだろう。
大将の護衛をしていた8人はもともとイライラしていたであろうロザリンドの機嫌を損ねたらしい。敵陣に突っ込んだロザリンドの前に立ち塞がった護衛も運が悪かったとしか言いようがない。その後は、思った通り、見えない居合でほぼ同時に撫で斬りにされ、同時にバタバタと倒された。
こんな時、ロザリンドの姪っ子にあたるアマンダに手を出そうとしたなどと、誤解されただけでえらいことになる。サオにはあとでキッチリと誤解を生むような発言を控えるように言っておかないと。
で、大将旗のもとで偉そうに座って観戦してたオッサンはというと、いままさにロザリンドに鎧の首根っこをひっ捕まえられて、フェイスロンドの陣までひきずってこられたところだ。気を失っているようで話しかけても何も答えないのだが、気配は感じるから生きていることに間違いない。
まだ多くの兵が残っているにもかかわらず、戦場での勝敗は決してしまった。まだ戦意のあった神殿騎士たちも自分たちの大将が戦場のど真ん中、奪われてゆくのを見て敗北を悟り、剣を捨て、兜を脱いだのだ。
ロザリンドが一直線に敵将の陣地を急襲し、立ちふさがる護衛たちのことごとくを蹴散らし、大将を捕らえたことで戦闘は終わった。結局、今日の勝利はロザリンドのものとなった。
「おつかれ、どうよ? 強かったか?」
「ん。こいつが大将だってさ。強くもないただのオヤジ。ほんとつまんないわー、実力もないのに大将とか将軍とか、自分より弱い者の下で戦場に出ても士気あがらんでしょうが」
「キャリア組ってやつか? なら手荒いのはナシだぞ。殴っただけで死にかねないからね」
「あちゃあ、ムカついたからさ、ちょっと殴っちゃった……。目を覚ますかしら」
ロザリンドが敵将を引きずって自陣に戻ってくると、フェイスロンダ―ル軍の者たちがざわつき始めた。
なかでもとりわけフェイスロンダ―ル卿は驚きを隠せずにいる。もちろん靴底がガバガバ開いてるせいではない。
話によると、この男こそ神殿騎士を纏め上げる騎士団長ホムステッド・カリウル・ゲラーだという。
初めて聞く名前だけど、アリエルの首に莫大な懸賞金をかけた組織のトップといえば分かりやすい。
加えて言うならば、この男が神殿騎士団長だというのも実はそれほど大したことじゃない。
この男の重要性は他にあった。
たった今、口から泡を吹きながらロザリンドに引きずられてきたこの男こそ、ヒト族至上主義を掲げ、神聖典教会の組織力を使って、シェダール王国で一番最初に魔族排斥運動を始めた中心人物。教会の権力、影響力までも利用し、アルトロンドの政治家たちに働きかけたせいで、この国に奴隷制度を生み出した元凶だ。
つまるところ、このキンピカ鎧のオッサンは神聖典教会のVIPであり、エルフたちの人権を奪った仇敵。神殿騎士団の最高責任者でもある。すなわち、ノーデンリヒトに暮らす家族の未来を脅かしパシテーから家族と名を奪った男でもある。
むしろこの男さえいなければ、これほどまでに戦乱が大きく広がることはなかったのだ。
ホムステッド・カリウル・ゲラー司祭枢機卿。
この男の命に価値があるなら人質にしていればいつか役に立つかもしれないし、利用価値がなければ教会の十字架にでも磔にした死体を宅配便で教会に送り付けてやればいい。送料着払いで。




