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14-13 魔王軍、侵攻す

永遠のはるか ☆彡 空のかなた

https://ncode.syosetu.com/n5265ex/

サイコサスペンスホラー、お暇ならどうぞ。(時系列など修正中につき更新停止。すぐ復活します)


 アリエルが国家予算ほどのお金を寄贈したおかげで、ドーラから来た義勇兵たち、ノーデンリヒトの軍も、そしてボトランジュに住んでいながらフェイスロンドに友や親類縁者のいる者たちがこぞって手を上げ、ダリル攻めの準備が着々と整いつつあった。そう、整いつつあるし、兵士たちが食べる食料の心配もなくなった。だけど魔王フランシスコともと将軍のロザリンドが最前線に出て戦うなんて言うもんだから、ドーラからの義勇兵どころか、ノーデンリヒト移住者たちもみんな義勇兵として我先に馳せ参じてしまって、ノーデンリヒトの守りがベルゲルミルの頭ほどに薄くなってしまったという。


 義勇軍というシステムを良く知らなかったのだけど、義勇というものは、この世界で最も尊いものとされているらしく、人数がいっぱいでノーデンリヒトの守りが薄くなるからダメといって断ることができないのだそうだ。


 正義のための戦だとして拳を振り上げる戦士もいれば、この戦いは未来永劫語り継がれる神話の戦いとなるから、我も歴史の目撃者になりたいとして戦いに殉じる騎士もいる。

 義勇兵たちに様々な思惑あれど、要はこの戦い、余裕で勝てそうだし、ダリル取っちゃうと凍らない土地をタダでもらえるかもしれないという理由で、みんな大挙して集まってきているだけのようにも感じる。


 まあいずれにせよ、戦力になることは確かだし、セルダル家を打倒し、ダリルを取ったあと、すぐ畑を耕す労働力も必要になるのだから、どっちにしろ7万そこら集まったところでまだ人手不足なのだ。



 ハリメデさんが睡眠不足を押して編成している間アリエルたちは何度も王都プロテウスにこっそり入り、ダリル陥落後すぐ行動を起こせるよう、王都の情報収集をしていたし、逢坂先生はイカロスに命じ、セカの街でこっそり活動していた帝国の諜報員に弟王宛の暗号文を書いて送らせた。


 暗号は「サクラサク」


 恐らく弟王エンデュミオンには何のことだかさっぱり分からないだろうが、イカロスから届いた訳の分からない暗号文であるなら残った元日本人の騎士勇者二人のどちらかでも呼びつけて内容を見せれば一目瞭然、日本人なら必ずわかる内容だ。


 暗号文を送った逢坂先生はアリエルたちと別れ、セカ、マローニ、ノーデンリヒトの魔導学院を回って、本を読みまくってる。長い間アルカディアにいたおかげで世相に疎くなってるから、時代に乗り遅れたくないんだそうだ。


 ジュリエッタはその手腕を遺憾なく発揮し、10万の兵を進軍させるだけの食料を届けた。

 アリエルたちはドーラからの正規軍と義勇軍合わせて7万、ノーデンリヒトから1万、ボトランジュから2万という、大雑把にまとめて10万の兵を進めるため、セカ経由で転移魔法陣を使い、フェイスロンドへと効率よく送り込む。最寄りの転移魔法陣はベラールの街にある。


 魔王フランシスコが軍を率いてベラールの街に到着したのは、ノーデンリヒトに初雪が降った頃だった。


 少し前までベラールには領主がいたけれど、いま領都グランネルジュを取り戻すための奪還戦にてこずっているらしく、領主フェイスロンダ―ル卿もカタリーナさんたちグランネルジュ魔導学院の魔導師たちも戦場に出ているらしい。文字通りの総力戦となっている。


 アリエルたちがベラールに侵攻してきたダリル軍と神殿騎士たちを相手にしたとき、グランネルジュには治安維持部隊として500~600程度しか残ってなかったと聞いていたので、ベラールに残っていたフェイスロンド軍だけでどうにでもなると思っていたけど、どうやら甘かったらしい。王都にある神殿騎士団とダリルから続々と援軍が入っていて、むしろフェイスロンド軍のほうが苦境に立たされているのだとか。


 そういえばグランネルジュはすでにダリル領が併合していて、そこに暮らす住民たちも、ダリル領民だ。

 フェイスロンドの民でエルフの血が混ざっていない者は、南から来るダリル兵たちに追い立てられ、殆どの者は西のネーベルや北のベラール、ボトランジュに近いカナデラルなどへ逃れ、エルフたちはノーデンリヒトに逃れた数千人以外は何処かに連れ去られたのだという。一旦併合したらもうそこはダリルだ。取り戻すにしても強固な抵抗にあう覚悟はしておかなければならない。



 ベラール守備隊長の話を聞いたフランシスコは嗤う。


「市街戦か。ならばアリエルの出番はないな。ボッカンボッカン爆破されたのでは街がなくなってしまう。戦闘はわが軍の精鋭部隊に任せておけばよい、ゲリラ戦はウェルフたちが得意とする戦術だからな。そうだ、ロザリンドに搾りたてドーラベリー100%のジュースを。ドーラベリーはロザリンドの大好物だったからな、今年はここ10年で最高のデキというぞ。この甘酸っぱさがいいのだ、わが妹ロザリンドが失ってしまった緋色の瞳に匹敵する美しい紅のいろどり、これこそがドーラの……」


「ゴホン! わが王よ、まだここから100キロの距離がございます、すぐさま先遣隊を組織し、援軍の第一陣として送らねばなりませぬ。ドーラベリーはまた後程と言う事で」


「ハリメデ、ほんとうにお前というやつは、戦時であるからこそ余裕というものが必要なのだ」

「はい、余裕は勝ったあとでいくらでも」



----


 先遣隊はドーラの正規軍の中から足の速いウェルフを中心に、将軍職を与るロザリンドの実母、ヘレーネ・アルデールにくっついて、魔王フランシスコの娘でロザリンドの再来と言われるアマンダ・アルデールが続く。この布陣ならば100キロ移動するのに1日と半分で走っていけるのだとか。もちろんグランネルジュについてヘトヘトになったところ即戦闘とはいかないのだろうけど、まずは援軍という考え方は嫌いじゃない。


 これがヒト族だとなかなか始まらない。

 アリエルが子供だったころ、ノーデンリヒト北の砦でエーギル・クライゾル率いるドーラ軍の猛攻に遭ってるとき、マローニに援軍を要請しても、戦場まで片道で20日以上かかる距離だったため、その道中で消費する食料や消耗品を揃えて兵を集めるだけでも数日かかっていたという事実がある。

 鹿肉のジャーキーをリュックに詰めて1日50キロ以上走って移動するなんて馬を一頭引いて足を温存しながら移動する早馬じゃなければ無理な芸当だ。



 後続の部隊は3日後に到着するらしい。長距離移動が苦手なベアーグたちは1日程度遅れる予定。

 つまり、先遣隊は装備をつけたまま100キロ走って移動し、戦況にもよるがヘタをすると休みなしで戦闘に駆り出されることになって、本隊が到着するまでの、残り1日と半分、敵の援軍でどれだけ膨れ上がっているのか分からないダリルの兵たちを相手にしなくちゃいけない。


 血の気の多いカルメとテレストも先遣隊に志願したが、二人ともノーデンリヒト人になっていたため、ヘレーネ将軍に「今回は私たちに一番槍を譲ってくださいな」と言われ、仕方なく本隊について移動することに。


「アリエルさんは? フランシスコと一緒に、のんびり後から?」

「もちろん一番先に。俺もロザリンドも、100キロぐらいなら2時間あれば移動できます。全員は無理ですけど、お義母さんと、あとアマンダぐらいならネストに入ってもらえばすぐ着きますよ?」


「まあ素敵なお誘いだけど、この戦いでは私が将軍なのよ。だから一人だけ楽をすると示しがつかないの、そうね、それならアマンダをよろしくお願いしようかしら」


 アマンダは道場稽古での立ち合いなら兄であるパンドラすら負かす勢いで、魔王フランシスコですら油断していると一本取られるほどの腕前だともっぱらの評判だ。だけど先日、フランシスコがセカを視察した際、オートマトン・イカロスに斬りかかったことで命を落としかけた。咄嗟にロザリンドが飛び込んでくれなかったら無事じゃあ済まなかったろう。


 それでいてアマンダをロザリンドに預けるから、先遣隊よりも先に行けという。

 実戦経験を積んでこいということだろう……、なるほど、酷い婆ちゃんだ。


「んじゃあロザリンドはアマンダと一緒にネストに入ってなよ」

「えーっ、久しぶりに競争しようと思ったのに……」


 転んで大事故起こす未来しか見えないよ……。


「んじゃあアマンダ、ロザリンドといっしょにネストに入ってて。グランネルジュに着いたら呼ぶよ」

「じゃあ師匠のお供は不肖、一番弟子のサオが努めます!」


「サオ師匠! 私もお供します!」


「エアリスが出るならハイペリオンに乗せてもらいましょう!」


「私も飛行術もうちょっと鍛えたいから飛ぶわ……」


「ジュノーには負けませんからねっ」

「ハイペリオンがいないと飛べもしないくせによく言うわ……」


「よし、みんなで競争だ。アマンダはハイペリオンに乗せてもらいなさい。ハイペリオンはハンデな、絶対落としちゃダメ、落ちたら大変なことになるからね、気を付けるんだよ」


「兄さま、わたし競争とか興味ないの。ゴロゴロしてるの」

「わかった。ゾフィーは?」


「パス! どうせ私が勝ってもジュノーにずるいとかチートだとか言われるのがオチだもの」

「転移魔法なんてチートだし」


「へへー、久しぶりに[スケイト]で全力疾走するんだ」

「ロザリンドほんと気をつけろよ? おまえのうっかりミスが心配だよ」


「大丈夫大丈夫。防御魔法強めに張っとくからさ」

「自然の方が心配だ。木をなぎ倒したりクレーターつくったりすんなよ……っておいスタートしやがった! ずるいぞロザリンド」


「ああっ、ロザリィずるい。ハイペリオ―ン!! すぐに追うのです」




 弾丸のようにすっ飛んで行ったロザリンドたち一行を見送ったヘレーネは、自ら率いる軍にも号令をかけた。

「ドーラの威信にかけて彼らよりも先に着いて戦闘を始めよ! いいか、我々こそが援軍だ。着く前に戦闘終わってましたなどと言うなよ、恥と知れ!」


「ええええっ、将軍、今の人たちもう見えないんですけどー」

「矢より速いっすあの人たち……」


「グダグダ言ってないで走れ! もう置いていかれたぞ!」


「はっ!」


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