13-11 サオの八つ当たり 【挿絵】
挿絵描いてみました。今日はサオの得意な二連発爆破魔法です。熱そうです。
髪型が棒立ちしてますが、これは爆風なんです。服も尻が隠れる丈のチュニックなので、爆風なのです。
病院の待合室にiPad 持ち込んで落書きしたものをちょっと頑張って修正して載せてます。
好評だったらいままでの話にもちょくちょく挿絵をつけていこうかなと思ってますが……。
あと、わたしが描いたものなので、ほんまもんの絵師さまとは比べ物になりません。
更新頻度が落ちる分、書き溜めてあったラブコメを放出中です。お時間が許ましたらこちらもどうぞ。
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「転生したら多重人格だったアサシンが高貴な聖騎士に恋をしました。
ダウンフォール! しばらく週一更新となります。
眼前に40000もの敵兵がいるというのにイチャコラしながら、さながらピクニックにでも行こうかってぐらいゆるい雰囲気で肩寄せ合って歩くアリエルとサオ。
マジか、こんな戦場のど真ん中でそう来るか!
驚いてサオの顔を見たらちょっとドキドキしてるみたいで、うっすらと頬を赤らめてる。
俺もちょっとドキドキしてきた。前のダリル兵にではなく、隣でちょっと俺の肩に寄り添うサオにでもない。いったい何にドキドキしているかというと、背後で俺たちをじっと見ているであろうジュノーの視線だ。
「えへへ、師匠、やっと二人になれました」
「あははサオ、たぶん甘いと思う。すっごく甘いと思う」
「えっ? なにが甘っ……」
―― シュボッ!
突然目の前の道に小さな炎が上がって、少し焦げた?
よく見ると、高温で地面が溶けたように赤熱していて、髪の焼けたような、イヤな匂いが立ち込める……。
サオの美しい青銀の髪がすこし、はらりと散った。
高出力レーザー砲だ!
「し……師匠、狙撃されまし……た? あーん、髪だけをスパッと焼き切られました。イグニスの防御が間に合いませんっ」
「すぐその手を放せ。狙撃手はジュノーだ。秒速30万キロの攻撃を不意打ちで食らって防御なんてできる訳ないだろ? あいつはとにかく目がいい。逃れるためには惑星の丸さの向こう側に隠れるしかないぞ」
「うー師匠、イヤですせっかく二人になれたのに怖い監視が付いてますっ……」
「そういうのはジュノーの許可をもらわないとうるさいんだ」
「だって師匠、16年も私を……」
―― シュボボボボッ!!
「イヤアアアアア、師匠ぉぉ、髪が、私の髪があぁぁぁ」
「だからサオ!手を放すんだ。丸坊主になってしまうぞ!」
仕方なく手を離したサオは肩を怒らせてダリル兵40000の前に立つと、さっきまでほのかに赤らめていた頬を怒りの炎に変え爆炎の魔女のごとき形相で破壊の限りを尽くした。
―― ドドドドドドウオオォォォォン!!
「ぜんぶこいつらのせいですっ! 爆発してしまえっ!」
サオの爆破魔法は2発ずつしか同時に操ることができない。さすがに4万もの兵士を相手にするとなると骨が折れるのだろう、思った通り助っ人を呼び出すことにしたらしい。
「ハイペリオーン! 手加減無用ですっ」
―― シャララララァッッッ!!
サオの爆裂とハイペリオンのブレスを効果的かつ変幻自在に操るイグニスの助けもあり、アリエルの髪は毛先がチリチリに焼けた程度の被害を受けたが、ベラールの防護兵の上で戦闘を見学していたカタリーナ派の学徒たちは多少肌をやけどした程度で済んだ。
もうサオとイグニスとハイペリオンだけでダリル兵ぐらいならやっつけることができることはよくわかった。
ハイペリオンの障壁に守られたサオには毒矢も当たらないし暑いことを除いては安心して見ていられたので、もしかするとサオは対ダリル戦に向いてるかもしれない。
もちろん俺は何もしてないのだけど。
ただベラールに戻ったあと、ジュノーに怒られる役目を負っただけだ。
「サオ師匠、私に『師匠の[爆裂]を見ること』って言ったのに、自分が一人で大暴れしてました……」
フェイスロンドは何百年か前にあの氷龍ミッドガルドの襲撃を受け何百もの犠牲を出してギリギリ撃退しているので、ドラゴンに対する評判がいまいちよろしくない。ボトランジュ人の、とりわけセカを守る兵士たちのようにハイペリオンを見て歓声を上げるなどという事はなかったが、精霊の力を振るって敵軍を焼き尽くした精霊使いサオはここでも大人気となった。
戻ったあとサオはちょっとだけジュノーに喧嘩腰で食って掛かったけれど、まあ次の瞬間には案の定、壁に突き刺さった。放置していると俺がタッチヒールで治すしかなく、それも何だかご褒美みたいだという理由でジュノーが治さざるを得なかった。ジュノーがボコってジュノーが治す。まるでマッチポンプだ。けっきょくサオはジュノーにコテンパンにやられただけという結果に終わった。
たぶんイグニスの精霊防御が光の速さよりも早く反応できないと勝ち目はないと思う。
「またつまらぬものを治してしまったわ」
「いつかジュノーさんを倒して一本とってみせますっ」
「ジュノーは遠いぞ? まあ頑張れ……」
東西と北側の門をぐるっと回るゾフィーたちのほうは安泰。レーザーで狙撃されない分あっちのほうが安全だった。
こっちサオが大暴れしたあとの話。
生存者わずか50人余り。
爆炎の地獄を生き残った者たちはベラールに引きずられて、いまとても厳しい尋問を受けている。
その尋問と言うのがもう、喋らない奴にはダリル兵が使う毒矢を突き刺すという、本当にもう、オーソドックスすぎる脅迫をしながら死の拷問になった。
情報によると、俺たちが日本に帰省してる間、経済の立て直しに躍起になっていたダリルの人口は現在の好景気に後押しされて300万に戻し、総兵力として20万を確保しているらしい。
ということは一度経済破綻したダリルは奴隷の売買で経済を立て直し、20万の兵を確保するまでに持ち直したという事だ。あと15万。そしてフェイスロンド第二の都市ネーベルにも5万の兵が駐留しているという情報だった。
その他にも都市部には各1万~2万ずつの兵がすでに入っているらしい。
グランネルジュはダリル領に併合され、すでにダリル人たちが入植しているらしいが、ここまできていたダリル兵5万と神殿騎士2000は敗れ、敗走もできずここで穴に埋められることとなったが、すでにグランネルジュ方向にダリル敗戦を伝える斥候が走ったという情報がある。
グランネルジュに残るダリルの兵力は500から600。入植した第一次移民は3万程度。敗戦の報は数日で伝わるはずなので、ここにいるフェイスロンド軍がまたグランネルジュに入るまでの間に都市を明け渡せば逃げるだけの時間はある。残っていて意地でも出て行かないつもりなら殺されても仕方ない。
どっちにせよグランネルジュに残る戦力は大したことがない。ここにいるフェイスロンド兵だけで十分に戦えるので、俺たちがわざわざ出張っていくこともないだろう。
俺たちはここでフェイスロンダール卿と会談し、ダリルには滅んでもらうという意向を伝えると、それではということで今後の事を話し合わなければならなくなった。
ひとつ、ダリルを滅ぼした後の統治をどうするのか。
幸いにも、と言っていいかどうかは分からないが、フェイスロンダール卿には領土拡大の野望はない。ただ、侵攻され奪われた分の領地を返してもらいたいのと、あと、長い領境を接するダリルの次期支配者になる方が信頼のおける人物であることを望むとのことだった。
俺たちがダリルに攻め込んで、セルダル家を倒すとしても、広大なダリルの地が空白になるのは好ましくない。だれか相応しい力を持ったものが統治する責任が発生するのだが、正直言って俺に政治など絶対に無理。遥か昔には国王だった事もあるしそれなりに善政を敷いた賢王と言われたけれど、あれは優れた大臣たちに政治丸投げしていたからであって、俺の政治的なポイントはゼロだ。
だけど国を治めることができるであろうリーダー候補は何人か知っているので、セルダル家の後釜については一任してもらうことにした。まあ、フェイスロンダール卿にも納得のいく人物を連れてくればいいわけだ。
ふたつ、ダリルで大量に発生する戦争難民の問題をどうするのか。
来るべき対ダリル決戦の折には俺たちだけじゃどうしようもないのがこれ。難民問題だ。
俺たちがダリル領に攻め込むとして、今のところダリルの切り札が毒しかないなら、大した脅威はない。むしろ難民と化したダリルの領民が脅威だったりする。
まず、フェイスロンド領に逃れる難民の中から、エルフの血を引く者たちを引き受けてもらいたいのだけど、フェイスロンダール卿の話では、攫われていった者たちが戻るのは喜ばしいが、2世代目、3世代目のハーフ、クォーターエルフたちを引き受けようとすると、それだけで50万を超える規模になる。正直、いまのフェイスロンドには全てを受け入れることはできないとのこと。
また、一般の人族が難民となった場合、周辺では略奪など犯罪が激増することが予想されるので、略奪や盗賊化した者たちの相手をするためにも兵士の数は減らせない。
実はこちら難民問題を解決するのにも少し考えがある。フェイスロンド側に流入しないよう、領境を超えてくるような奴のうちエルフの血が混ざっている者はフェイスロンドで受け入れてもらって、ヒト族はそのまま追い返してもらえばいい。
みっつ、ダリル領主の身柄をどうするのか。
フェイスロンド領主フェイスロンダール卿は、ダリル領主、エースフィル・セルダルとその血縁者の身柄を強く要求した。いやむしろ、それしか要求しなかった。領土もゴールドも何もいらないと言った。
失礼を承知でなぜそれほど血を絶やすことに拘るのかを詳しく聞いたところ、ダリルが侵攻してきた後、行方知れずになった正室の奥さんとまだ年端もゆかぬ子がグランネルジュの門の高いところに吊るされていたそうだ。この非道な行為にはフェイスロンダ―ル家の血縁を絶やすという意味合いが強い。
フェイスロンダール卿はただひとつ、セルダル家の血を絶やすことだけを願った。もうここまでの非道を行われてしまった以上は、フェイスロンダール家とセルダル家がある限り、諍いは続く。どちらかの血が絶えるまで、もしくはどちらの血も絶えてしまうまで争うことになるだろう。どちらかの血を絶やすことによって未来に禍根を残さず、後の世に争いの種を引き継がせないというのがフェイスロンダ―ル卿の願いであり、そのためには鬼にでも悪魔にでもなるという覚悟があるのだそうだ。
「俺のように大悪魔と呼ばれることになりますよ? きっと」
「もとより望むところだよ。むしろ大悪魔と呼ばれるに値する力を持たぬ己を恥じるばかりだ。もう10年も15年も前からダリルがフェイスロンドに侵攻してくることは分かっていた。それなのにこの体たらくだ。戦乱の世に必要なのは力だ。力が足りずに負けてしまえばどんな理想を掲げようとそれは幻想のようなものだ」
しかし、エースフィル・セルダルの身柄については俺たちの一存で引き渡すなどとは言えない。個人的にも許すことなどできないし、レダの家族も、レダの家族たちを温かく受け入れてくれたフェアル村の仇でもある。そしてレダはサナトスの妻になったことからドーラの王族、魔王フランシスコの甥の妻だ。ノーデンリヒト元首の孫の妻ということもあるから、エースフィルの首については、捕えた後、皆で相談しようということになった。
「何ともセルダル家は、どれほどの憎しみを受けているのだろう、話を聞いただけで未来はないようだ」
賞金を懸けてくれれば俺の賞金をはるかに超える額が提示されるだろう。どうせなら俺の『世界最高額』を超えてから捕まってほしいものだ……。
「それではこちらも、セルダル家の血縁者について留意するとします」
フェイスロンダール卿との会談で決まったことは単純だ。
セルダル家なき後、ダリルの領有権も、侵攻による賠償金も求めないし、エルフの血を引く者が難民としてフェイスロンドに来るのなら受け入れてくれると。だがしかし、エースフィル・セルダルの血縁者だけは引き渡してほしいと、ただそれだけだ。
しかしエースフィルの野郎、モテモテで羨ましいほどだ。みんなエースフェイルの首を狙ってる。
死神にでもキスマーク付けられたかのようじゃないか。
俺たちはフェイスロンド領を自由に移動し、自由に戦闘する許可をもらったので、その代わりと言っちゃなんだけど道すがらダリルの奴らを見かけたら殲滅していく約束をし、フェイスロンダール卿と来る日にむけガッチリと堅い握手を交わすと東西に長いフェイスロンド領をの西の端っこへと向かうことにした。
Pixiv のほうにも同じ絵の4倍サイズのものを挙げてます。
ユーザー検索「てっく」でみつけてください。
不評なら止めとこう……。




