13-10 デートするカップルのように
ダウンフォール更新頻度が落ちます。すみません。来月には戻せるよう頑張って風邪治します。
更新頻度が落ちる分、書き溜めてあったラブコメを放出中です。お時間が許ましたらこちらもどうぞ。
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「転生したら多重人格だったアサシンが高貴な聖騎士に恋をしました」
ターゲットとする対象年齢ちょっぴり高め
ダウンフォール! しばらく週一更新となります。
エアリスと一緒にぜひ全裸になってもいいなんてポリデウケス先生は間違いなくしっかりと却下した。
先生は毎晩自分の剣を磨くばかりで出番のないことを恥じている。
足手まといだとか言えなくて心苦しい思いをしているのだけど、ゾフィーやロザリンドたちについて出ても、俺の[爆裂]の嵐の中に出てこられても困るんだ。
この世界の戦争はまだ後ろで見ていることを恥じる傾向がある。それはやはり、全員が剣を持って、実際に血を流し合って戦う戦争しか知らないからだ。
俺たちが得意とする魔法戦ではポリデウケス先生のような歩兵は、焼き尽くされた戦場を制圧するときまで出番がない。先生もそんなことは百も承知なのに、やはり戦っている教え子の後ろにいて、危険が去って安全になってからノコノコ出て行くような戦闘は心苦しいという。
ポリデウケス先生は、セカの街のアルトロンド軍を追い出したときのような、あんな心から熱く血がたぎるような戦いを望んでいると言いながら、なんだか縁側でお茶でも啜る老人のように、寂しげな表情を浮かべた。
「そんな顔してもダメだからね。先生は防護壁の上から戦闘を見てて。戦争が終わったらまた教職に戻るんでしょ? 俺たちがいかにして勝利したか、子どもたちに伝える義務があるよ」
「んなこと言ったってアリエル、どうせボカーン!で終わるだろうから私は剣でも磨いておくよ」
「ごめんね先生、そのうちきっと出番あるからさ。さあ、チーム分け完了だ。外周チーム気を付けるんだぞ。ぜったいゾフィーが剣を振る前に出ないこと。ゾフィーもほんと気を付けてな。仲間を斬っちゃダメだぞ」
「分かってるわよ。それじゃあお先に。競争よ……」
―― パチン
指パッチンひとつでゾフィーたちのチーム4人がフッと消えた。
「転移した?」
フェイスロンドの偉い人たちはゾフィーたちがパッと消えたことに驚きを隠せないでいるのに、魔導師たちは大慌てだ。待ち構えてたみたいに。
「転移魔法だ!! 空間に歪が残ってるからトレースして! すぐに分析を!!」
カタリーナさんは部下の人に指示して、たった今までゾフィーが居たところにまた何やら分析魔法をかけて調べ始めた。まったく戦時だというのに貪欲に学習する人たちだ。
「ああ、ゾフィーたちは東門の外に気配が移動したよ。ってことはもう始まったって事だ。フェイスロンダ―ル卿、カタリーナさん、ちょっと外の奴ら倒してきます」
「ちょっと待ってアリエルくん、確かに君たちの強さは音に聞こえている。解毒魔法を持っているのも分かった、だが外には毒矢を装備した弓兵主体のダリル兵4万だ。のこのこ出て行くと毒矢が雨のように降り注ぐ。物量が圧倒的なんだ、まずはその対策を」
「大丈夫ですよ。実は俺、水魔法に適性があって毒が効かない体質なんですよ」
「毒が効かない? そんな……」
「それに毒矢なんか当たりませんからね……」
そういって踵を返すとサオも自らの弟子に向けて指示を出した。
「エアリスは防護壁の上から見学してなさいね、師匠の[爆裂]をしっかり見ること。わかりましたか」
「はいっ」
「……っ! 魔導師は全員防護壁に上がって戦闘を見て学べ! 爆破魔法が見られるぞ! こんな機会はもうないかもしれない、盗めるものは盗んで、少しでも腕を上げるんだ! それが生き残る糧となる」
カタリーナさん、この国では2番目に大きな魔導派閥を率いてる、この国の魔導界ではけっこう偉い人なんだそうだ。しかし目の前に居ながら分析魔法とか……、なんというか学者の鏡と言うか、魔導学院ってほんと変人揃いだ……。そういえばグレアノット師匠も、アリー教授もエイラ教授も揃って変人だった。これはもう魔導学院という組織自体が変人の集まる組織なのか、それとも人を変人にしてしまうのかということだろう。どっちにせよ変人組織だ。
「カタリーナさん、爆破魔法はアシュガルド帝国により解析されていまは起動式が存在します。ジュノーが最適化してくれて易しくなったとはいえ、まだ一部の者にしか使えない難物ですが、生きる糧となるのなら後で公開しますよ」
「爆破魔法の起動式を公開してもらえるのか! ありがたい」
「フェイスロンダール卿、ちょっと門を開けるように指示していただけませんか? 別に上から飛び越えてもいいですけど、こういうのはこう、カッコよく行きたいもんで」
俺は矢が当たらないし、もし毒矢が当たったとしても俺には毒は効かない。
ダリルのクソどもに剣を突き立てたい者はゴマンといて、みんな飛び出してきて、一太刀でも浴びせてやりたいところだろうけど、適材適所を考えると俺しかいないだろう。
ギイィィィッ……。
南側の門が開いたところを、俺はひとり、門をくぐって外に出た。北の門よりもかなり大きな扉が付いていて、大きな街道が南に向かって繋がっている。ここから南に約100キロいけば領都グランネルジュ。
この兵士たちはグランネルジュから来たらしい。って事は、こいつらを蹴散らしたらもうグランネルジュには殆ど兵士が残ってないんじゃないか?
「師匠っ! へへー、来ちゃいましたっ」
「ってサオ、おまえなに出て来てんの? さっき言ったろ? お留守番してろって」
「イヤです」
門が開いたことで約4万のダリル兵たち、動きがあわただしくなった。
さっきジュノーが焼いた陣の消火もおおかた終わって、急ごしらえの救護テントが立てられてるようだが……これだけの多勢に無勢なんだ、救護テントを爆破したからと文句を言わせない。
てか、文句いいそうなやつ全員爆破だ。
兵士たちが整列し始めていて、派手な鎧の奴らが前に出てこようとしてる。どうやら俺たち2人しか出なかったのを見て降伏の使者か何かだと勘違いしているのか、それともただ甘く見てくれてるのか。
どっちにせよ油断してくれるのはとても助かる。
「サオほら見てみろ、整列した後ろに弓兵の多いこと多いこと。ダリルの奴ら毒矢を撃ってくるんだからさ、おまえイグニスの精霊防御って数百の矢が一斉に降ってきても大丈夫なのか? 留守番してろってば」
「イヤです。私は16年もお留守番してました」
そういってサオは俺のすぐ左に寄り添い、シャツの袖を掴んで引いた。
まるで二人、恋人同士のようにくっついて街道を歩いている。
一方、こちら防護壁の上。
「カタリーナ学長、イチャついております。爆破魔法の前にいろいろ見せつけられておりますがぁ」
「そこは見るな。魔法にのみ注視しろ」
「……ふうん、火の精霊王ね、どう焼き殺してやろうかしら」
「サオ師匠、ピンチですよぉ……ジュノーさんの髪が逆立ってます……ものすごい負のオーラが出てます……」




