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13-08 珍しくジュノーがキレてやらかしました

 ダウンフォール更新頻度が落ちる予定が土俵際でもうちょっと粘れます。すみません。

 書き溜めてあったラブコメ小説を放出しています。お時間が許ましたらこちらもどうぞ。

 https://ncode.syosetu.com/n1497en/

「転生したら多重人格だったアサシンが高貴な聖騎士に恋をしました」

 ターゲットとする対象年齢ちょっぴり高め。

 あっちもこっちもヒロインがやらかしまくってますがタイミングは偶然です。

 ダウンフォール! 次話は金曜の予定です。


◆本分中に「アスティ」という人の回想が出てきます。

 忘れてしまった方が多いと思います。第八章にあります『過去編』アスティ、四世界で初めての魔導師(その1)から『過去編』 しかめっ面のジュノー(9)+エピローグまで(ながいけど)読んでいただければ、いまアリエルたちが向かっているサマセットの町のことも少し分かりますので、お時間が許しましたら、こちらのほうもぜひご一読ください。


 解毒魔法の命名について、ジュノーは「なんでもいいから良さそうなのを付けておいて」と言うに留まった。ジュノーもそういえば名前についてはあまり頓着しない。でもリリスという偽名だけはそこそこ気に入ってるらしい。


 魔法の名前と言えば、むかーしジュノーの侍女でアスティって子が居たんだけど、本当いつも泣いてた。ジュノーの魔法人体実験に付き合わされてマジ泣きしてたのを思い出す。


 でもジュノーって名前とかには無頓着だったよなあ。

 起動式考えて発表した魔法も名前考えたのたしかアスティが考えてたっけか?


「ジュノーって魔法の名前考えられない人なのか?」

「失礼ね、考えた事あるわよ。[トーチ] は私がつけたし。実用的かつ誰が聞いても用途がはっきりするし、とても発音しやすいでしょ? ネーミングセンスを語るなら私よりも先に魔法に名前も付けないゾフィーに突っ込みなさいよ」


「え? 私? なんでもいいわよ。あなたが考えてくれたらそれにするわ」


「マジで?」

「はい。あなたが考えてくれるなら」


「技の名前叫んでくれる?」

「叫ぶの? 技を出すときに?」


「うん。ゾフィーにピッタリの考えるから」

「やめといたほうがいいわよ、ぜったい酷いから」



----


「撃剣重斬・空間断裂! ジャスティスブレード! これでどうよ!」


「ええっ? ええっと……なんだっけ? 難しい言葉を知ってるのね」

「はいボツ。そんな難しいのゾフィーに言えるわけないじゃん。ロザリンドも言えないのにさ」


 ゾフィーは複雑な名前を憶えられないんじゃなくて、端折はしょって覚える癖があるだけだ。

 いや、ロザリンドもちゃんとロザリンドと認識しているけれど、口をついてロザリンと出るし、愛称っぽいからいいじゃんって感じなのだ。

 ジュノーもあんまりそこ突っ込み過ぎると温厚なゾフィーでもちょっとは怒るんだから……。


「昔を思い出すわねジュノー、私なんてジュノーって名前の発音が難しくってね、ズノーって言うたびに首を絞められたわ。ねえズノー」





 …………っ



「……こんの」



 やば……。


 恐る恐るジュノーを見ると、もう頭上に光の輪っかが出ててジュノービームのエネルギー充填120%だった。


「ジュノッ……」



「バッカ女あぁぁ!」


―― ドゥオオオオォオオォオンンンン!



 グラグラグラグラ……



 ドオオオォ……。



 ガラガラ……。



 ジュノーの光学魔法がゾフィーを逸れて防護壁が蒸発した。


 光は空間に沿って直進する特性を持っている。ジュノーの光学魔法がいくら高温でも、いくら物理的に宇宙最速で秒速30万キロの速さを誇っても、空間を支配するゾフィーには届かない。


 攻撃を受けた当のゾフィーはといえばジュノーの魔法を涼しい顔のまま曲げて、たったいま街の防護壁の南側、門を含む広い範囲を融解させて、数百メートルは離れてるダリルの陣の一部を焼き払ったあと見えないぐらい遠くまで火災を引き起こしている……。



 大事故だ。



「あああっ、すみません。うちのジュノーが粗相を……ジュノーは普段あんまりやらかすことないんですが。……あの、フェイスロンダ―ル卿?」


 フェイスロンダ―ル卿が立ったまま気を失ったみたいだ。


 まずい、防護壁の上にいた人がケガしたっぽい。

「ジュノー! 真沙希まさきもケガ人を」

「わかった」


「はっ! ごめんなさいあなた。ごめんなさい、ああっどうしよう、ケガしたひとは?、本当にすみません、あのバカのせいでついカッとなってしまって……。曲げるなら上に曲げなさいよ上に!」


「あーなるほど。さすがジュノーね、その手があったわ」


「カタリーナさん! すみません消火を手伝って……って、解析魔法なんて後回しにしてくださいよ……サオっ、ハイペリオンを呼んで水魔法で消火を」



「はいっ、えっと、超絶! 正義っ! ハイペリオンッ!」


「もうっ、サオ影響されやすいの!」



「サオ師匠かっこいいですっ!」


 サオの背後から巨大な魔法陣が立ち上がり、光束と共に勢いよく飛び出したハイペリオンがサオの命令通り、上空からの水ブレスで効率的に消火していった。ハイペリオンさまさまである。

 ジュノーの光学魔法により、真っ赤に熔けた防護壁と激しい水蒸気となってせめぎ合うと、ハイペリオンの羽ばたきによって熱波が広がった。辺りは湯煙の温泉地のようだ。


 昔、フォーマルハウトがどこかの湖の底に作った魔法陣から大量の水を転移させる魔法があったけど、その魔法陣というのがゾフィーの使う古代エルフの魔導技術とは違った独自技術だったらしく、フォーマルハウトの死後使えなくなっていて、俺には使えない。ネストに湖一杯分ぐらいの大量の水を入れておけば事足りるだろう。またそのうちジェミナル河に立ち寄った時にでも。


 消防車の放水なみかそれ以上の水というと、うちの身内ではゾフィーに海から転移させてもらうか、ハイペリオンの水ブレスしか使える者がいない。ちなみにゾフィーの方だと次の瞬間には大洪水になる危険性が高いので、こんな市街地で使えるのはハイペリオンしかいないわけだ。ちなみにハイペリオンは四属性全ての魔法に加えて闇の魔法までむちゃくちゃ高位で使えるし、俺の[爆裂]も見てるだけで覚えたほどの天才だ。魔法生物の頂点は伊達じゃない。


 ハイペリオンの消火活動は山火事や森林火災にも通用するほどのものだった。

 みるみるうちに鎮火してゆく防護壁付近、あちらダリルの陣では炎も煙もちっとも収まっておらず、むしろ延焼えんしょうが進んでいる様子。

 もしかして好機と見て突っ込んでくるかな? と思ったけどハイペリオンの姿を見て突貫するほどアホでもなかろう。こっちの防護壁が破壊されたからと慌てる必要もなさそうだ。



「パシテー、防護壁の応急修理をお願い! 防護壁の上で怪我した人をこちらへ! ジュノーは反省!」

「ゾフィーにも反省させてよ!」


 ジュノーがキレてどうすんだって話。うちの身内じゃあジュノーとパシテーが暴走しそうなやつを抑えてくれないといけない。

 ただでもロザリンドが最近ゾフィーの弟子っぽくなっててて時空魔法を理解し始めてるあたり、ろくなことにならなさそうなのに。



----


 けがをした人はジュノーの魔法によって全快。

 ハイペリオンがネストに戻ったことにより、周辺に居たエルフの魔導師たちはみんな呼吸困難から復帰し、戦場で敵の陣が丸見えになるという非常事態を収束されるため、すぐさま作業にかかる。


 パシテーの建築技術でも応急修理では基礎と繋げることができないので、この防護壁南東の角が重量物の衝突、つまり高位の土魔法使いが行う攻城戦になると弱いということを報告だけして許してもらったが、修理を手伝って整地からやらされてたカタリーナ派の人たちにとってパシテーのすっごく細かいミリ単位の指定はかなり厳しかったようで精神力がガリガリ削られている中、パシテーの精度とスピードと、その魔法の規模までがカタリーナさんの大絶賛を浴びることになった。


 ジュノーやハイペリオンという訳の分からない魔法を使う異能の輩と比べると、素直に理解しやすく凄かったパシテーがいちばん評価されたという形だ。


 ちなみにパシテーは俺の弟子じゃないので厳密に言うとベルセリウス派ではなく、派閥などという内向きな集団を否定するグレアノット師匠の弟子だから、ここではグレアノット派という事にしておいてもらった。


 派閥の魔導師たちの防護壁修繕の監督もひと段落すると、カタリーナさんに呼び止められた。

「アリエルくん、ちょっと教えて欲しいのですが……」


 何か疑問に思ったのか、昨夜の解毒薬のビンを空にかざして中に入って液体を凝視しながら、カタリーナはひとつの疑問を明らかにしてほしいと言った。


「この解毒薬というのは誰の作品なのですか?」

「えっと、なにか不具合がありましたか?」


「いえ、この液体にはマナと魔気が見事な融合を見せています。素晴らしいアイデアと技術を見せていただいたので、もし差し支えなければ……」


「うちの子、サナトスと水の精霊アプサラスですね。解毒薬の方はアプサラスの力が大きいみたいで、ジュノーでも分からないって言ってました。製法を公開したところできっと誰にも作れないんじゃないかと」


 アプサラスの名を聞いたカタリーナは興奮して食い気味に身を乗り出してきた。いまここにいる精霊テックと精霊イグニスに加えて、まだいるのかと。


「ノーデンリヒトには精霊さまが多くいらっしゃるのですね、もし平和な世になったら私もノーデンリヒトを訪れてみたいものです。フェイスロンドにも1000年ぐらい前まで精霊アスラがいらっしゃったらしいのですが、もうおとぎ話のような存在になって久しいですね……」


「あれっ? カタリーナさんは精霊信仰なんですか? エルフの人って、精霊信仰とゾフィー信仰と、あとなにかありましたっけ?」


「わたしのひいお婆ちゃんが精霊アスラのお世話をしていたそうで、私の家はアスラ信仰です」


 カタリーナさんのひいお婆ちゃんがアスラの世話をしてたってことはフェアル村のあたりに住んでたってことだ。精霊は基本的に神殿を動かないらしいから。


「じゃあエルダー南部の出身なのかな。アスラはいまノーデンリヒトに居るから平和になったら遊びに来てやってくださいね」


「……っ! 本当に? 精霊アスラさまがノーデンリヒトにいらっしゃるのですか? やはりフェイスロンドの地はアスラ様に捨てられてしまったのでしょうか? 私のルーツはエルダーにあるアスラ神殿を守る村にあります」


「おおおっ、カタリーナさんフェアルゆかりのかたでしたか」

「ええっ? あんな小さな隠れ里を知ってるのですか?」


 カタリーナさんは精霊が移動したことを好意的には思っていないらしい。

 そもそもアスラは1000年前にフォーマルハウトが奸計かんけいを使って連れ去ったんだ、この土地を捨てたわけじゃない。


「あの……、誤解されてるみたいなのでアスラの名誉のために言っておきますが、アスラはフェイスロンドを捨てた訳じゃなくて、フォーマルハウトに奪われたんです。まあフォーマルハウトはムカついたんでチョメチョメしておきました。そしたらしばらくはエルダーに戻ってましたよ? んで、俺の知り合いの娘さんなんですけどね、エルフの女の子と契約していまノーデンリヒトに住んでるってだけです」


「フォーマルハウトが倒されたという話は聞きました ……しかし、あの、お話を総合すると、またフェイスロンドにも精霊王が生まれたということですか! 戦時でなければお祭りをしなければ失礼に当たります」


「えええっ、精霊王ってそんな大層なことなの? 俺も一応精霊王アリエルなんだけど。うちの息子はアプサラスとくっついたし、息子の嫁はアスラ、あと弟子のサオも炎の精霊王だし、精霊の生みの親はゾフィーでうちの身内の筆頭格だし……、たぶんお祭りなんてしなくても失礼じゃないですよ?」


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