05-14 千年戦争・終戦★
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和平の調印がおわり、千年続いた戦争は無事終戦となった。これでもうお互いに殺し合わなくて済む。三日三晩続いた祝宴も終わり、ようやく静かになったエテルネルファンの町。
滞在を予定している最後の夜、食事の席はアルデール家の家族と、あとアリエルの身内だけになった。ようやく落ち着いて家族の話ができるようになった。
アリエルの前に座ったのはロザリンドの母、ヘレーネだった。
食事が運ばれてくる前のことだった。
「ねえ母さまって、女神さま熱心に信仰してたよね確か? ゾフィーのこと教えて」
「あら?どうしたのロザリィ、嫁に行ったと思ったら、急に女神さまに興味が出たのかしら?」
ロザリンドだけじゃない、アリエルもパシテーも真剣な眼差しを向けた。
「ふうん、どういった風の吹き回しかしら?」
「うちの旦那様は神々の道をタダで通行できるんだってさ。ハリメデに聞いたらそれは女神ゾフィーに許された者だけだっていうから……気になるじゃん」
どうせ教会は人族の女神しか認めてないのでエルフ神なんて存在すら抹消しているだろうから、女神ジュノーの影響力が強い地域ではゾフィーのことなんか誰も知らない。だからゾフィーのことが知りたいなら熱心にゾフィーを信仰しているひとに聞くのが一番だ。
「神々の道を通れるの?」
「通行料なしで通れるんだってさ」
「テックさまは何とおっしゃっているのかしら?」
15歳ぐらいのてくてくに視線が集まる。
「アタシ何も知らないのよ」
「ウソなの! だってフォーマルハウトにゾフィーの子だっていってたの」
「あ!」
パシテーの突っ込みが鋭い。
てくてくが追い込まれるところなんて初めて見た。
「アレは違うのよ、アタシの記憶じゃないのよ」
なるほど、あの時は確かに てくてくの声じゃなかったし、喋り方もぜんぜん違った。
てくてくの記憶じゃないとすれば、あれは1000年前に死んだ精霊使いアリエルの記憶だ。
「あの時てくてくは精霊を神々の道を通るときに消費される魔導結晶から溢れる余剰魔気から生まれた魔力の特異点だと言ってたの。四精霊はみんなゾフィーの子だって」
「その通りなのよ、転移魔法陣がどうとか、魔導結晶がどうとか知らない。アタシはゾフィーが作ったゲートで生まれたのよ」
「水の精霊アプサラスは『ゾフィーのそばにいられたらそれでいい』って言ったの。転移魔法陣ってゾフィーに近いの?」
「ゾフィーと繋がっているのよ」
「じゃあ兄さまが石板に触れただけで転移魔法陣が立ち上がるのはどういうことなの? 兄さまが石板に触れたことを知って、ゾフィーが起動しているということなの?」
「プロセスの話をしているのよ??」
「そう! プロセスが不可解なの、魔法陣は人類が起動式を発明する以前の魔法技術。だから魔法陣を起動するためにはあらかじめ指定された触媒が必要なの。シェダール王国を中心に東西南北に位置する転移魔法陣は魔導結晶で起動するように設計されていて、兄さまが触れただけで起動することなんてありえないの」
「パシテー、アナタ何が言いたいのよ?」
「兄さまが石板に触れた瞬間にゾフィーが知って、ゾフィー本人が魔法陣を起動しているか、それか魔法陣を設計したときプロセスに兄さまを組み込んでいるか、どっちかなの」
和やかな雰囲気で始まったアルデール家との会食だったが、いまもう雑談は完全にストップしていて、今この場にいる者たち全員の視線はパシテーに集まっていた。
そして視線はてくてくへと移動する。
てくてくはみんなの視線が自分へと集まっていることに困惑しつつ、アリエルをじっとみつめていた。
「マスターはゾフィーを知っているのね」
一同の視線はアリエルへと移動した。
アリエルは難しい顔をしながら腕組みをして考え込んでいる。
「ゾフィーか……、その名前にはものすごく親近感があるし、知ってる人の名だということまでは分かっているけれど、それ以上のことは思い出せないんだ。なんかこう、喉まで出かかってて出てこなくてイライラする感じ。だから俺も女神ゾフィーのことを知りたいと思ってる」
「そうなのね、じゃあパシテー、何でも聞くのよ。アタシの知ってることだけ答えるわさ」
「さっきの問いに答えてほしいの。ゾフィーが兄さまとしって起動しているのか、それとも魔法陣の起動プロセスに兄さまが組み込まれているのか」
「後者なのよ」
「それはおかしいの! 転移魔法陣が作られたのは神話の時代なの!」
「そんなこと言われても知らないものは知らないのよ、だってアタシが生まれたとき転移門はもうあったのよ」
「てくてく 何か隠してるの……」
「アタシなにも知らないの、ここから先はロザリンドの母親に聞けばいい。アタシの話はここまで」
言うと てくてくはもうパシテーのことなんて完全無視を決め込み、だんまりモードへと移行した。
パシテーは納得いかない様子だったが、てくてくにも話せない理由があるのだろう、きっと。
「では、あの、私の知る女神ゾフィーの話でよければ……」
「よろしくお願いします」
コホンと小さく咳払いをしたあと、ヘレーネは語った。
「女神ゾフィーは、この世界に数多いる神々の中で、唯一柱のエルフ神。その姿はダークエルフでした。なぜ魔人族がゾフィー信仰を持っているかというと、魔人族の始祖と伝わるルビスがダークエルフだったからなんです、本当に単純な話なのですけど、これはヒト族がヒトの形をした女神ジュノーを信仰するのと同じ理由ではないでしょうか」
ロザリンドがすこし納得いかない。
「でもエルフは精霊信仰よね? なんでゾフィー信仰じゃないのかな?」
「それはね、女神ジュノーは結婚の神さまだとか光の女神だし、精霊さまは現にそこにあってエルフ族の守り神として名高いじゃない。でも女神ゾフィーは唯一のエルフ神であって戦神なのよ」
トリトンやガラテアたちは戦神という、その一言で納得した。
武を重んじる魔人族が戦神を信仰しているといわれると溜飲が下がるのも頷ける。
女神ゾフィーを信仰しているのは、北の地ドーラでは少数民族の魔人族と、あと南方に住むエルフ族のごく一部だけと言われている。もちろん教会もなければ神殿もない。いまやゾフィーの影響を残すのは、てくてくたち精霊が住んでいた転移門だけだ。
ロザリンドはドーラに渡ってくる船の中でアリエルがゾフィーという名を聞いて狼狽したからノーデンリヒトに戻る前に情報収集しておこうと思ったに違いない。その観察力は素直にすごいと認めるべきだろう。アリエルは確かにゾフィーという名に聞き覚えがあった。転移魔法陣を作ったとわれているのだから、異世界転移してきた事と何か関係があってもおかしくないと思っている。もちろん同じく異世界転移してきたのだから、ロザリンドにも関係あるかもしれない。
アリエルが知る、中等部で習った地理と地政学では、この世界はシェダール王国を中心に半径たったの五千キロ程度(前後)の狭い範囲しか分かっていない。アムルタ王国、エドの村からさらに南の山岳地帯を超えると絶海が広がっていて、もうどこにも繋がっていないという。西に西に向かってエルダーを超えても結局は絶海に阻まれるということだ。
日本でいうところ、東京から半径5000キロというと、インドネシアやネパールあたりになる。ハワイまでは少し足りないぐらい。パッと見ると広く感じるけれど、地球儀で見ると、地球の丸みに隠れることなく、一枚の写真に全ての陸地が収まるほどの広さでしかない。世界は狭く、メルカトル図法を使って惑星の裏側までを描く必要はないのだ。
ヘレーネによると女神ゾフィー説では、今我々のいる魔族の地ドーラ大陸と、王国や帝国のあるユーノー大陸に加えてあと3つの大陸があったが、神話時代の戦争で神々の怒りに触れ海に沈められたと伝えられている。そのせいでいくつもの国が消失したのだとか。
女神ゾフィーが神々の道を作ったという事については、アリエルもその昔、グレアノット師匠に教えてもらったことがある神話をすこし覚えているけど、ヒト族の伝承では英雄クロノスが大人気だったが、ドーラではやはり少し伝承が違うようで、神話戦争にはあまり触れられていない。
魔人族なんて神話戦争の話となると大好物だと思っていたのだが……、戦争があったということは語り継がれているけれど、どこでどんな戦いがあったかという戦記は伝わっていないそうだ。
女神ゾフィー、または戦神ゾフィー。
ドーラよりも遥か南に位置するガンディーナという地方にダークエルフたちは暮らしていた。
ゾフィーはダークエルフの族長の娘として生まれ、一族の中でも突出した力を持っていた。
十二柱の神々とまではいかなかったが、力では決して劣るものではなく、エルフとしてこの世界が始まって以来、初めて神と呼ばれる存在になった。戦神として戦いの記録は残されてないのは、戦った相手の悉くを殺したからだと言われている。
しかし女神ゾフィーの伝承は、不幸な寓話で締めくくられている。
女神ゾフィーは族長の反対を押し切って、畑を耕すような貧しい男と結婚したという。
族長は娘であるゾフィーを勘当したが、ゾフィーは幸せに暮らしていた。
だが大きな戦争が始まって世界中が焼かれた。
ゾフィーが夫とひっそり暮らしていた土地も滅ぼされ、ガンディーナのダークエルフたちも戦いに敗れてしまう。絶望に打ちひしがれるガンディーナにゾフィーが戻り、たった一人で百万を超える敵と戦った。
怒れる戦神ゾフィーを倒すことができず焦った敵は、ガンディーナのエルフ族すべてを人質にとって、ゾフィーに投稿をよびかけた。ゾフィーは投降に応じ、ガンディーナの民の見守る中、公開処刑されて死んでしまった。
ゾフィーが処刑されたことでダークエルフたちは再び戦意を取り戻し剣を取って戦ったが。戦況を覆すこと叶わず ガンディーナの地もろとも、ダークエルフは地上から滅亡してしまった。女神ゾフィーの伝承は悲劇として語られるが、その生きざまと壮絶な死にざまは英雄に相応しい。
ロザリンドの父アイガイオンですら「百万というのはいくら何でも盛りすぎだな」などと言って笑っていたが伝承を語るヘレーネの口調に笑いなど微塵もなかった。
アリエルもまさか女神の伝承が悲劇として伝わっていることに少しだけ驚いたが、話を聞くにつれ、いくつか思い出したことがあった。
「エミーリア・カサブランカ。たしかそういう名だったと思います」
アリエルがまた知らない女の名前を言った。
ロザリンドの視線が厳しくなったが、ヘレーネはカサブランカという言葉、つまり単語を知っていたし、さっきまで上機嫌で笑っていたアイガイオンも息を飲んだ。
ヘレーネの表情が綻んだ。すこしニヤリとしているように見えた。
「エミーリア? それはどちらさまでしょうか?」
「ゾフィーの母親で、ハッキリは覚えてないのですが、ガンディーナの族長だったと思います」
「やっぱり! ではあなたとゾフィーの関係は?」
「すみません、さっきから何度も思い出そうとしているのですが……ちょっと思い出せません。でもいまやっぱりって言いましたよね? なぜやっぱりと思ったのです?」
ヘレーネはますます笑顔に磨きがかかり、いまやニコニコしていて、ものすごく上機嫌になった。
ここでちょっと話は戻る。
ハリメデさんはアプサラスといっしょにメルドの村へ向かったから留守にしていて話を聞けないが、メルドの村も転移門麓の村だし、転移門の使い方もよく知っている。当然、魔導結晶を使えば神々の道は誰にでも通行できるということもだ。
魔導結晶は転移門を起動するためのエネルギーなんだろうけれど、これを通称『通行料』という。通行料を支払わずに神々の道を通れるなんてのは、女神ゾフィーその人か、女神の寵愛をうけた『許されし者』だけ。これもエルフたちの伝承に根強く残っていて、精霊のいる村では常識のように知られることだった。
だがしかし、これまで実際に『許されし者』が現れたことはなかったせいで『許されし者』もただの言い伝えでしかないと思われていた。
エミーリア・カサブランカという名を聞かされ、ヘレーネの目の色が変わった。
なぜなら魔人族の始祖の名がルビス・カサブランカと伝えられているからだ。この名は夫であり族長でもあるアイガイオン・アルデールと、ヘレーネ含む5人の側室しか知らず、真の名を秘匿するエルフ族同様に、カサブランカの姓は秘匿され族長とその妻にのみ伝承されているのだ。
ロザリンドの夫になった男が本当に『許されし者』だとしたら超優良物件だ。まだここエテルネルファンに噂が広がった程度だが、世界最強の魔導師と謳われたフォーマルハウトを秒殺したことで、自動的に世界最強の魔導師という称号はロザリンドの夫、アリエル・ベルセリウスとなった。
だがしかし一族の最長老を殺されてしまったエルフ族の反発もある、今のところアリエルが精霊使いであったことだけが幸いして、表向きエルフ族が敵になるということもないという不安定な状況だが、アリエルが『許されし者』だったとすれば、政治的にもエルフ族を抑え込むことが容易になる。
「ロザリィ、本当にいい男を捕まえたわね! ところで母さんもあなた達に聞きたい事があるの。いい?」
「話せることならいいよ」
「フォーマルハウトがアルカディア人って話。興味あるのよね」
「それについては俺から話してもいいですか?」
「はい、ぜひお願いします。」
とは言ったものの……。
「さて、何から話したものか……」
まずはフェアルの村にあった『下垣外誠司』のサイン。これがアルカディアの日本人の名前であること、それを当のフォーマルハウトに問い質したら、確かにアルカディア人だという反応を見せたが、情報も聞けず、致し方なく流れに任せてボッカンしてしまったこと。
そして勇者軍の生き残り3人を尋問して(ちょっと話を聞いただけだけど)、アシュガルド帝国の話を聞いた結果、5年おきに、神々の道を通って、アルカディアから勇者たちが召喚されて来ること、6年前の段階で勇者候補47人、俺たちが命からがらやっと倒した勇者キャリバンと同等かそれ以上の力を持った者が12人いることを話した。
この場にいる皆が言葉を失った。
せっかく千年の戦争が終わったというのに、新たなる戦いがすぐそこに待ってるなんて考えたくもなかっただろう。俺だってあんなキャリバンクラスの強敵がワンサカワンサと行列作ってやってくるなんてゴメン被りたい。てか正直ウンザリだ。
「また……厳しい話だな。で、アリエルたちはどうする?」
「俺は、まだやらなきゃいけないことが残ってますけど、それらを片付けてから、うーん、そうですね……次の勇者召喚に合わせて帝国に潜ろうかと思ってます。うまくいけば四年後、延期になってもその次、9年後までに」
「アリエルお前、教会を敵に回しただけじゃ飽き足らず帝国まで敵に回す気か」
「エル坊、トリトンはもうダフニスの腕枕はイヤなんだとさ。勘弁してやってくれ」
「そんな命知らずじゃないってば。俺の場合はこっそり入ってボカーン! が一番簡単なんだよ。隠密行動にも逃げ足にも自信があるしね。アルカディアに繋がる神々の道を破壊することができれば、もう勇者が召喚されてくることはないから。それとね、神聖典教会と神聖女神教団は同じ女神ジュノーを信仰する教会で、もともとは派閥違いらしいからね、二つの教会は裏で繋がってるから神聖女神教団もほぼ敵なんだ。ひとつ、旅人としての願望を言わせてもらうと、正直、あわよくばアルカディアに行ってみたい……というのは、あるけどね」
みんな苦虫を噛み潰したような渋い顔をしているというのに、ロザリンドの父さん、アイガイオン・アルデールだけがいやに上機嫌になった。もう目の輝きが半端ないほど。
「なあフランシスコ。うちの婿は軍を率いるでもなく国を相手に戦おうとしておる。まったく、ロザリンドはなんという男を選んだのだろうな。わはは」
「父上、笑い事ではありません。我々もどう動くか決めないと」
「お兄さま、戦争は終わったのよ。どうも動かなくっていいわ。家族とのんびり過ごせばいいじゃん。私たちは私たちでやるわよ」
「わははは、聞いたかフランシスコ! ロザリンドもやる気だ」
「父上、笑い事ではないです。わりとマジで」
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この渡航では歴史的な成果があった。
和平交渉がうまくいって終戦になった。
てくてくの仇、フォーマルハウトを倒した。それと同時にサオの婚約は消滅。
フォーマルハウトからは一つも情報を得られなかったけれど、どうせ満足な情報なんて聞けなかっただろうから、もうどうだっていい。絶対、カリストさんたちにもう一度話を聞いた方が実になると思う。
サオはフォーマルハウトの弟子の一人を死なせてしまった。
てくてくの仇討ちに関わる、アリエル一派とフォーマルハウト一派の抗争という扱いなので、死んだ奴も決闘に敗れたことと同じ扱いになった。サオは責任を問われなかった。もちろん、心筋梗塞っぽい瀕死の発作を起こしてしまったトリトンが心配することもない。
人を死なせてしまった夜は一緒に寝てやったのだけど「私は大丈夫ですよ。いずれこういうことが必ずあると思ってましたから」と、意外とクールな受け答えができたので、ホッと胸をなでおろしているところだけど、そういうサオの指先が小刻みに震えているうちはまだ少し心配だ。
サオが言うにはマナのコントロールには少し自信があったのに、自分が調節した魔力よりもずっと大きな魔法が出てしまったことは大変ショックだったらしい。そんな、師ですらまったくコントロールできない感情的な部分がうまく行かなかったからショックだなんて、もう師匠を超える気満々で自分を律しようとすることに驚いたほどだ。
また、意識不明の重体だったフォーマルハウトの弟子二人は意識を取り戻しはしたが、火傷が酷くて、しばらくはベッドの上から降りることができないとかで、傷口にムチャクチャ沁みる薬をたっぷり塗られて声にならない悲鳴を上げてるらしい。これはサオに手を出そうとしたバカ者の自業自得ってことで笑い話になった。
だけどこの二人、フォーマルハウトの敗北を知らされ、その結果、死んだという事実を知らされると、しばらく言葉に詰まり、結局のところ、故郷に帰ると決めたらしい。
滞在中に断った縁談30件、一つとしてアリエルが自ら断った縁談はなかった。
滞在中に断った弟子志願者45人。これまで魔王軍でも評価の低かったサオがわずか9カ月でフォーマルハウトの弟子3人を同時に相手して、うち一人を殺してしまったという大事故を好意的にとらえたのだろうか、うち、何人が可愛らしいエルフ少女なのかを知りたかったけれど、サオが断固として伝えなかった。
ノーデンリヒトは人魔共存特区になり領法の原案が採択された。
それに伴い、第一次移民団がやってくる日取りも決まった。もともとノーデンリヒト出身の者たちの悲願だったらしいが、一度には受け入れきれないので少しずつ受け入れるということで大筋合意をしたようだ。
移民希望者の中にあのベリンダが含まれていたのに気付いたロザリンドが警戒感を露わにする。
「姉さんなんだからいいじゃないか」というと「そりゃあなたはね!」と、なぜかこっちが怒られる羽目になってしまった。まったく、なんで怒るのか理解できない。
みんな短い平和をのんびり、ゆったりと暮らすことにした。
マローニに戻り、冒険者をしながら、パシテーの家名を取り戻さなきゃいけないし、帝国の転移門を逆行してアルカディアに向かったあと、その転移門を破壊しなくちゃいけないし。
やらなきゃいけないことは山積みだ。
今だけ、今だけのんびりしたい。
次話から新章に移ります。




