表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/566

04-30 ミルクイベント史上最強

109話


 屋敷の門を出るとロザリンドがすぐさまアリエルの肩を掴んだ。


「ねえ、あの人がお母さん? 実の? 後妻さんじゃなくて?」

「そうだよ。超絶美人だったろ? でもちょっと面倒くさい人なんだ」


「16歳の若妻よりもっと若く見えるしゅうとめなんて悪夢だわ……」

「でもそれってロザリンドがアラサーに見えるせいもきっとあるからね」


 どうやら要らぬことを言ってしまったらしく、後頭部に軽くエルボーくらって目から星が出たところだ。無事、母さんたちに顔見せが終わったので、取り急ぎ武器鍛冶ソードスミスの店に向かうことになった。


 マローニの大通り、フードを被った220センチぐらいの真っ黒装束の人が背中に長刀を背負って歩いてるんだから目立たないわけがない。その醸し出す異様な雰囲気が、町を守る衛兵たちの注意を引く。なんどか声をかけられそうになったけれど、声を掛けられる前にアリエルが衛兵に挨拶することで顔検分もなく堂々と通りを歩くことができた。


「フードなんか被らなくていいのにな」


「これがないと街の人は私を怖がるかるじゃん。紅い眼も魂を吸い取るとか言われるし。ねえねえ、サングラス買ってよ。わたしこの国の通貨もってないんだ。ものの見事に一文無し。家出したのはいいけど、なーんも考えてなかったわ」


「サングラスなんてこの世界にはないからね! お金は預けとくけど、万が一のとき稼ぐ手段がないと困るだろうから、あとで冒険者ギルド登録にいこう。ロザリンドなら用心棒でもやれそうだ」


 この世界には眼鏡もない。

 ただモノクル付けてる魔導師は見かけるけど、あれも店で売ってるようなものじゃない。完全オーダーメイドだ。


 まずは冒険者ギルド前を素通りし、裏手にある武具屋へと向かう。ノーデンリヒトで打った新しい二振りの刀を研いでもらうのと、あとさやつばつかを付けてほしいとの要望を出した。フードを取ったロザリンドの姿を見て、武器屋のオッサンも一瞬ぎょっとしてはいたが、さすが脳筋同士話は合うようで、すぐにマニアックな話になってしまった。


 太刀のさやは居合に使うので滑りがよく抜き差しのしやすいさやをと念の入った注文の付けよう。この世界は曲剣という文化は廃れたようで、弧を描くよう抜刀する勢いでそのまま攻撃するという抜刀術という発想そのものがなかったので説明するのに少し苦労したようだが、オッサンのほうも世界最高の戦士と名高いスカーレットの魔人族が、わざわざ店に来て注文を付けているということで、全面的な協力を申し出てくれた。ここで要望に応えられないようじゃ武器屋の名折れなんだそうだ。いやホント、うちの嫁って本当にオッサンにはモテるんだなと感心したところ。


「ロザリンドおまえモテるじゃないか……」

「たぶん違うと思うけど?」

 言うと武器屋のオヤジは本音を吐いた。


「んー? 紅眼スカーレット御用達の店という噂が立つと店が繁盛するだろ? 協力は惜しまないさ」


 なるほど、芸能人のサインを飾ってるラーメン屋みたいなものか。

 しかし話が長い。


 つかの長さをミリ単位で詰めるトコまでは聞いてたけど、つか談義まで始められるともうワケわからん。パシテーは眠そうな顔になってきてるし、サオも疲れた表情を隠し切れなくなった。

 何しろこの店に入店してからもう1時間はオッサンと喋っていて、その内容はアリエルですら訳が分からんことになっている。


「ロザリンドー?、時間がないよー」

「あら、ごめんなさい。日本刀らしくつかを紐で編んでもらおうかと思ってさ」

「それ説明するだけで3日かかるから」


 まったく、そんな民族工芸の域にまで注文を付けていたとは素直に驚きだった。この世界、どこをどう切り取ってみても和風の文化なんてカケラも見えないのに。



 武器屋を出て表の大通りに出ると、すぐ白地に鷹をあしらった旗が誇らし気に掲げられている建物が目に付く。ここがマローニの冒険者ギルドだ。


 ギィ……と蝶番の鳴るウェスタンドアを開けてフードを被ったロザリンドが入ると、衝立ついたての上から覗く顔と異様な雰囲気、そして醸し出すオーラというか強者の佇まいが狭いギルド酒場にも伝わった。


 それを察したのか、周囲にいた男たちの間から津波のような殺気が流れてくる。緊張感に耐え切れず、つかに手をかける者もいて、一触即発の空気の中、ロザリンドは不安そうだ。


 まさかこれほど警戒され、殺気の洗礼を受けるとは思ってなかった。


「私ってそんなに嫌われてるの? すっごく居づらい雰囲気なんだけど」

「大丈夫だよ、みんな人見知りなんだよ。こんなの最初だけだよ。ほら、あのカウンターで冒険者登録しといて。俺は依頼に目を通しとくから」


「あ、すみません。登録をお願いしたいのですが」


「はい……えっと……ッ!(やばい……魔人族?……眼が紅いよぉ。……魂抜かれちゃう)」

「カーリ、久しぶり」


「あぁ、アリ……、パシテー先生!!」

「だから俺はアリじゃなくてさ」


 カーリはちょっと安心したようで、表情から強張りがとれた。

 冒険者ギルドっていうのは荒くれ者たちの巣だ。あのロゲみたいなオッサンたちが普通に出入りするのに、なぜロザリンドにびびるのか。


「こ、この人、知り合いなの?」

「俺のよめさん。眼を見ても大丈夫。魂抜かれないよ」


「っっっえ――っ! マジ嫁? アリエルあなた結婚したの? こんな……こんなモデルさんみたいにきれいな人と? あっ本当だ、ベルセリウス姓なんだ」

 申し込み書に書かれた姓をみてホッと胸をなでおろしてるのやら重ね重ね驚いてるのやら。


 てかロザリンドおまえヒト族の字を書けるのか……。


「もうーっ、初めて魔人族の人を見たんだからね。ビビッて泣きそうになったじゃん。目を見ちゃダメっていうからさ。すいませんアリエルの奥さん、初めて見たのでちょっとパニクっちゃいました」


 このカーリの反応はスカーレットの魔人族の眼を見たら魂を抜かれるとか魅了されるとかいう都市伝説が幅を利かせていることが原因なのだから、たぶんボトランジュではこれからしばらく、ずっとワンパターンで同じことが繰り返されるのだろう。それはそれで面倒なことだけど、噂好きの商人たちがノルドセカに、セカにと、噂を広めてくれて、そのうちあんな言い伝えはウソだったという正しい認識が広まることを期待しよう。


「はい、サオさんからね、こちら冒険者登録書です。13歳なんだ。学校は?」

「サオ、受け取ったらあっちの奥のカウンターで待ってて。そうだな、ミルク注文しといてよ」

「はいっ」

 登録の終わったサオをまずはギルド酒場のカウンターに送り出すと、しばらくして酒場カウンターのほうが騒がしくなってきた。


 その雰囲気を察したカーリが釘を刺した。


「ダメよアリエル、あの野獣どもにエサをやる気? ハティが出来上がっててクダ巻いてるから今頃大喜びで絡んでるわよ絶対に」


「うん。知ってるよ」

 ハティとポリデウケス先生が居たことは、入ってきたときの気配で知ってた。あの2人がいるってことは、サオがミルクを頼んで、絡まれてしまったとしても大丈夫だということなんだ。


「またやる気なの? ほんといい加減にしなさいよね……はい、ロザリンドさん、登録証ね。しかしアリエルの奥さん背が大きいね。私なんかチンチクリンでもう身長止まっちゃったからね。あこがれるなあ」


「ありがとう。頭をぶつけないぐらいで止まればよかったんですけど」


「だーいじょうぶよ、アリエルが領主になれば、法律を変えて、建物の方をロザリンドさんの身長に合わせるようお触れを出したらいいんだからね」


「カーリ、それは無理。暴動が起きるから」



 一方、衝立ついたての向こう側、酒場エリアでは暇を持て余したハティとポリデウケスがクダ巻いてて、往年のミルクイベントが発生したと知り、意気揚々と絡みを入れてるところだった。



「おーっと、今日初めて冒険者登録したのかい可愛いエルフの嬢ちゃん。ここは酒を頼む店なんだ、ミルクなんて頼んだらみんなに笑われちゃうよ?」


 酔ったハティは下衆ゲスだ……。シラフでもギリギリ下衆ゲスじゃない程度なんだけど、酔ったらはっきりと下衆ゲスになる。同級生の女子たちにしてみるとどっちも等しく下衆ゲスなので、ルックスはそこそこいいはずなのにモテないんだ。そこに気付いてないあたりがとても悲しいと思う。


「おい、子どもに絡むなよ。みたところこの子はまだ中等部ぐらいじゃないか。こんな荒くれ者の集まるところに1人で来たらいけないよ。ほんとに」


 サオの年齢を察したポリデウケス先生がすかさずサオの保護に回った。これが学校でモテる男とモテない男の差なんだろうな。


 そこについさっき戦慄の殺気を充満させる原因となった2メートルの魔人が、フードを外してツカツカと酒場奥まで進んでは、男たちの視線を受けながら、今まさに男たちに絡まれている最中だったエルフ少女の隣に腰かけた。


「ここのミルクは山羊? それとも牛?」


「牛でさあ」


「いいね。ドーラじゃあ高級品だ。じゃあ私にもミルクをついでくれ」


「ロザリィ、ミルクなんか頼んだら笑われるんだよ」

「誰がそんなことを言ったんだ?」


 2メートルの巨躯、2本の湾曲した角。ミルクを笑う者を探す紅い双眸。

 ギルド酒場にはハティとポリデウケス先生以外にも荒くれ者たちが何人か居るのだけれど、誰もロザリンドとは目を合わせられず、しんと静まり返っている。ポリデウケス先生などは余所見しながら口笛を吹いて知らんぷりを決め込むという念の入れようだ。


「笑うって言ったのはこいつ、ハティだ」


「まって、ちょ、まってくれ、っておま、アリ……、パシテー先生!!」

「そんなネタずっとやる気かよ」


「ハティ、ミルクを笑うものは、高らかに笑い飛ばさないと。ほら、ほら」

「アリエル黙れ、し――っ、ダメだ相手が悪いって。絶対無理」


「ねえ、私もしかして嫌わてるのかな? それとも虐められてる?」

「大丈夫だよロザリンド。みんな歓迎してくれてるのさ」


 カウンター席に座ったまま不安そうに眉を顰めるロザリンド。まさか魔人族がこれほどまでに嫌われているなんて思ってもなかったから、かなり心に堪えたようだ。


 そんなハティを見ていられないカーリが助け舟を出した。

「ハティ、その人、アリエルの奥さんだからね」

「そうだよ、俺の嫁と弟子をミルクイベントで虐めようなんて、ひどいやつだ」


「な! なんだと、嫁さんと弟子ぃ? マジで? アリエルお前、結婚したの?」

「そうだ。綺麗だろ。手ぇ出したら殺されるぞ?」


「うわあああああああぁぁぁぁ! おめでとぉぉ!! マジか! アリエルが嫁もらったのか! 今日は祝いだ。友との再会と、アリエルお前、賞金かけられたりしてよー、心配してたのに、よくもまあこんな綺麗な奥さんと、かわいらしいエルフの弟子だと? 羨ましいなおい」


 アリエルが嫁と弟子を連れてマローニに戻ったと知ってハティは大喜びだ。普段でも騒がしいやつだが、酒が入ると5倍ぐらい騒がしい。


 普段は「冒険者なんて死と隣り合わせの仕事やるのに嫁なんか邪魔なだけだ」なんてうそぶいちゃいるが、友達が幸せになったら両手離しで大喜びするというナイスガイぶりを如何なく発揮している。


「なあアリエル、魔人族の女性ってこんな美人多いの? ちょっと紹介しろよ俺にも」

 ハティはヒト族の女にモテないなら他種族を狙おうって腹積もりだったらしい。さっきナイスガイだと思ったのに、さっそくお詫びと訂正を入れたくなってきた。


 ギルド酒場ではマローニじゃあ数少ないAランク冒険者が結婚したってことで、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。ポリデウケス先生が酒場にいる全員分の酒代を奢ることになって、本当にささやかな、アリエル結婚おめでとうパーティが催されることとなった。ただし主催が先生ということで、サオだけはアルコール禁止なのだけど。


 しかし大丈夫なのだろうか。ポリデウケス先生やハティはもう完熟に出来上がってしまっていて、呂律ろれつすら危うい。


「なあアリエル、こんな綺麗な嫁さんどこで見つけてきたんだ? ちょっと俺にも教えてくれよ、ドーラに行けば出会えるのか?」


「ハティ、マジで言ってんの? でも戦時には行かないほうがいいと思う。ちょっとまだモメてるっぽいからね。和平が成立したら行ってみなよ。魔人もいいけどさ、ドーラには猫耳の獣人がいてさ、これがまた可愛くてさ、趣味の世界なんだがなあ」


「ほ――――――う。そいつはもうちょっと詳しい話を聞かせてほしいところだあ」

 ゲスな笑顔を見せるハティと、


「ほ――――――う。なあるほど、あなたやっぱりエララにも何かしたのね」

 目が笑ってないロザリンドの声……。


「い、いやだなあロザリンド、エララは知り合いの娘なんだってば。そうだパシテー、覚えてるよな? 3年ぐらい前に会ったろ? コレーって猫オヤジ。あいつの娘だよ」


「師匠、趣味の世界って何ですか?」

「サオちゃん、アリエルの言う趣味の世界ってのは、めくるめく官能の世界の事さ」


「ハティてめえ、エララ紹介してやろうと思ったのに、もうぜったい紹介しないからな」

「なんだよ――、俺とお前は親友じゃないか。エララちゃんだろ、もう名前覚えたぞ、絶対に紹介しろよ」


「パシテー、な、見ただろ、ハティはこういう奴なんだ」

「兄さまと同じ……触手があるの」


「パシテー先生、ダメですっ! 魔法少女が触手なんて言っちゃダメですよ!」


「パシテー先生が触手だとお!?」

「おおっ、やっぱポリデウケス先生も魔法少女と触手のコンビネーションが好きだったんですね」


「当たり前だ、世界中がキミと触手を愛してる」キラリーン(キメ顔)


 ダメだ……ハティもポリデウケス先生も泥酔してる。

 ハティの酒癖の悪さは有名だけども、ポリデウケス先生も相当だぞ……。


「ダメなの、ぞわぞわするの。きもちわるいのー」

「よし、パシテー、触手をナメてるやつらに触手の洗礼をしてやるんだ」


「ん――――――――っ」


 ざわっ……

 ウェスタンドアがバタンと音を立てて開き、中からザラっとした闇の瘴気がこぼれ出る。酒場奥のボックス席ではポリデウケス先生とハティが触手に捕えられ、M字開脚で身動きが取れなくなっていて、いままさにケツひん剥かれる寸前、誰も見たくない絵面の大ピンチに陥っていた。


「ちょ、ごめんなさいパシテー先生! もうふざけません。俺はまだ会ったことがないエララちゃんが待ってるんです。ここで新しい世界の扉を開けてしまうともう会えなくなるかもしれません。後生です、後生ですから……堪忍してください……」


「パシテー先生、さすがです。分かってらっしゃる。でもそうじゃない。そうじゃないんです。逆なんです。しかし受け入れましょう。私は真面目ですよ。やるんですね、これ以上やると責任を取ってもらいますからね。それでもやるんですね」


 涙目になって許しを請うハティとは対照的に、そんな恰好でドヤ顔して迫るポリデウケス先生のギャップにとうとう我慢できなくなって、肩を震わせながら、いい笑顔を見せ始めたロザリンド。


 ほら、うちの嫁はこんなにも可愛い。


「ロザリンド、あれがパシテーの元同僚と教え子だ」


「ほかに言い方があるの!」


 同時にアリエルの元担任教師とクラスメイトでもある。


 酔っ払いに恥を知れと言ったところで暖簾のれんに腕押しだということはパシテーにも理解できたようで、がっくりと肩を落として触手を解除した。


「あははは、パシテーが負けるなんて思わなかったな」

「嫌なの。変態なの。ぞわぞわするの。関わりたくないの」


 さっきまで漆黒の触手だった瘴気が、解除された途端、花びらに変化して、ざーっと音を立てて散り始め、空気に溶けていく。


 待ってましたとばかり、アリエルは風の魔法を展開し、ロザリンド、パシテー、サオたちを中心に桜吹雪の演出に加えて、ごく小さな[ファイアボール]を圧縮して光らせた状態でいくつも風に乗せて、舞わせた。


 いつか見たあのナトリウムランプの光を思い出させるような、黄色い光が舞う。


 薄暗いギルド酒場だから、まるで桜吹雪の中に蛍が舞ってるような演出をしたかったのだけど、思っていたよりもすこし[ファイアボール]の光が強かったせいか、カウンター席に座っていたロザリンドのいい笑顔が照らし出される。


 男どもが息をのむ。

 目の前に居るのは身長2メートルの異形の女性。

 その妖艶に浮かび上がる美しさを目の当たりにし、瞬きをすることも、呼吸することすらも忘れてしまう。美しい黒髪に紅い眼を艶やかに映し出すその光の演出は見事としか言いようがない。


「兄さまの魔法……綺麗なの」

「師匠、きれいです。魔法ってこういう使い方もできるんですね」


 ポリデウケスとハティは半ケツ出したまま惜しみのない喝采をくれているのだけれど、欲を言わせてもらえば、先にケツを仕舞ってからにしてほしかった。


 ギルド酒場のマスターも感動したようで、もう我慢できなくなったらしく、奥からリュートをもって出てきた。ここから先は音楽が加わって、ダンスパーティだ。


 やはり踊るとなるとパシテーが一番人気なのだけど、驚いたことにハティがロザリンドの手を取って中央に引っ張ってる。


「アリエル、こんな綺麗な人を独り占めはいけないな。さあご婦人、俺と一緒に踊ってはいただけませんか」

「ロザリンド、天井が低いからな、飛び跳ねちゃダメだぞ。ほどほどにな」

「ちょっと、私は踊れないんだ……踊れないんだってば」


「大丈夫大丈夫。わははは」

 サオもポリデウケス先生に手を引かれて中央に踊り出て、みんなリュートの音楽に乗せて、歌えや踊れの大騒ぎになってしまった。


 けれど、泥酔した者たちが調子に乗って踊ったりするとマッハで酒が回るもので……。

 何杯かお酒を飲んでしばらくするとハティが潰れて、何を思ったのか壁に落書きを始めたし、ポリデウケス先生が床に倒れて動かなくなったところで宴はお開きとなった。このままだとグデングデンにクダを巻く野郎どもとゲロを吐くまで続けさせられそうな勢いだったので、酒場のマスターに酔っ払いたちの処遇を任せ、アリエルたち一行はギルド酒場を後にした。


 みんなにお礼を言って、ほっこりと温かい気分で、次は魔導学院に行って師匠に報告しないと。


 マローニの街はロザリンドもサオも暖かく受け入れた。アリエルの心配は杞憂に終わったようだ。


「な、フードなんか要らなかっただろ?」


「そうだね……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ