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強化魔法

 雨の中でブレイゴをかばって狼と戦った日、俺は魔法を使った。

 その後すぐに倒れてしまったため、念のため起きてからも数日間は魔法を使わずにいた。


 ちなみにその間は、体を鍛えたり槍の練習をしたりしていた。

 体を動かすのは、昼寝の次くらいに好きなことなので苦ではないのが嬉しい。

「やりたいことやって生きる」がいまの俺のモットーなのだ。



 さて、今日は天気もよく、日課の昼寝も終えて絶好のコンディションだ。

 魔法の練習を始めよう。


『ブレイゴはちょっと離れておいて。もし俺が倒れたら、また頼む。』

「グギャ!ブレイゴいる!ザードあんしん!」

『うんうん、そういうこと。ありがとな。』


 ブレイゴにとっては未知の言語だったはずなのに、だいたい理解してくれている。

 やっぱり頭いいな。言葉も微妙に上達してるし。

 相変わらず飛び跳ねたり腕を振りまわしたりと、全身で感情表現するブレイゴの頭を撫でてなだめる。

 なんだかさらに嬉しそうにテンション上がってる気がするけど、和むからいいや。


「ギャッギャウ!ギャギャッ!」

 しばらく頭をグリグリした後、川のほうに向かう。



 手のひらに魔力を集めて火に変えようとしたのが最初の目標。

 体内の魔力をそのまま火の属性に変えたのが対オオカミでの魔法だ。

 まずは後者を使いこなせるようになるべきだろう。

 魔法として望んだ効果は得られたものの、火力が高すぎてオーバーヒートしてしまった。

 具体的にはたぶん、熱中症・魔力切れ・疲労のトリプルコンボだろうな……。



 やり過ぎないように今度は小さい火のイメージで、体内の魔力に火を灯す。

 魔力が活性化して体が暖かくなっていくのを感じる。

 たぶん今はまだ、"火属性の魔力"という状態だと思う。


 1.自身の魔力を活性化

 2.活性化魔力を火属性に変換

 3.火属性魔力をエネルギー源として、炎を作り出す。

 これが現在想定している炎魔法の手順だ。

 さらに強く炎のイメージをつくれば火を出せるかもしれないが、体内で発火させるわけにもいかないので今はここで止める。


 体の内側に意識を向けて、魔力の調節に集中する。

 すると、自分の体に変化があることに気づいた。

 体内の魔力が活性化すると同時に、体がそわそわするというか……力を持て余すような感覚がある。

 周りの音が大きく聴こえ、空気の流れを感じ取れるほど感覚が鋭くなる。

 これは……もしかして――


 前世のゲーム知識で似たような能力に見覚えがある。

 これは、強化魔法のような効果が表れてるんじゃないだろうか。

 体内の魔力を活性化したものの、使用しないままの状態――

 そのエネルギーが、身体能力強化という形で発現しているのか。


 そういえばオオカミを殴った時も、いつもより力が増していたような気がする。

 想定してた炎魔法より役に立つんじゃないかこれ。棚からぼたもち、思わぬ収穫だ。

 元々の能力が高いからか、効果も実感できるほどに大きい。

 じっとしていられないほどに力が増し、感覚は鋭く研ぎ澄まされ、体は燃えるように熱く……熱?


『うおっと、やばいやばい。』

 急いで魔力を切って川に飛び込む。

 予想外の新魔法習得に気をとられて魔力調節がおろそかになっていた。

 川の冷たさで体の熱が冷やされていく。

 サウナの後の水風呂みたいで気持ちいい。


「グギャー?」

『あー、うん。大丈夫だよ。』

 岸の上から覗き込むブレイゴに手を振ると、手を振り返してくる。

 すると、何かを閃いたような顔をして跳びはねるブレイゴ。


『どうした?ブレイ――』

「グギャオー!」

 ――俺と同じように川に飛び込んできた。

『ちょ……ぶはっ』

「グギャッギャ!ギャウギャーウ!」

 水のなかで嬉しそうにバタバタしているブレイゴ。


 俺が飛び込んだのを見て楽しそうと思ったのか…。実際ご満悦のようで何よりだよ。

 俺は水しぶきが顔面直撃しておもいっきり水飲んだけどな!


「ザード!いく!ギャギャウ!」

 俺の手を引っ張って岸に戻るブレイゴ。また飛び込みたいらしい。

『はいはい。飛び込むのはあそこの深い場所だけだぞ。』

「グギャ!」


 あんまり水の中にいると寒くなるんだけど……って、こういう時こそあの魔法の出番じゃないか。

 再び、体内の魔力を少しだけ活性化させて火属性に変換。

 そして、先に飛び込んだブレイゴに続いて川に…ジャンプ!

 なんだか懐かしい感覚だ。結構楽しいな、これ。



 深い場所に飛び込んだり、浅い場所で走り回ったり、水の中で魚を捕まえたり。

 ブレイゴと川で遊びながら魔法の調節を試していく。

 結局、俺たちは夕方頃まで川で遊び続けていた。


『ブレイゴ、そろそろ帰るぞー。』

「グギャー…。」

 なごりおしそうに答えるブレイゴ。よっぽど気にいったらしい。


『明日また来ればいいよ、今日はご飯にしよう。』

「グギャ。ごはんギャ!ギャウ!」

 明日も川遊び確定になってしまったな。晴れるといいな。



名前:ザード

種族:リザードマン

特技:力任せ格闘術 練習中槍術 超嗅覚 サバイバル

魔法:身体強化【火】

備考:川遊びができるようになった!

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