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臆病で有能な勇気

 目を覚まして周りを見る。ゴブリンはまだ寝ているようだ。

 体を起こそうとするが、なんだかズキズキする。

 寝すぎたときこんな感じだったっけ。どれくらい寝てたんだろう。


 とりあえず立ち上がって体の調子を確かめる。

 あ、脱皮してる。体から古い鱗がボロボロと落ちて、下からきれいな鱗が見えていた。

 やっぱ俺脱皮するんだな。

 よし、大きめに剥がれたものを記念に置いとこう。


 川で体を洗い、軽く準備運動をする。

 さっきは気づかなかったが、俺が寝ている場所のすぐ横にたくさんの木の実が置いてあった。

 オオカミに襲われてたときにゴブリンが持っていたもののようだ。

 肉がもらえると期待していたわけでもないだろうに、健気なやつだなぁ。

 こっそり外に出てウサギでも狩ってこよう。肉が欲しいだけなら、楽に狩れるしそこらじゅうにいるのでいい獲物だ。


 二人分の獲物を手に戻ってきた俺は、ゴブリンを起こす。

 俺が起きたことに気づくと、案の定しがみついて大泣きしていた。

 かなり心配かけたみたいだな…。



『さて、俺たちの名前を決めようと思う!』

 二人で肉を食べながら、ゴブリンに話しかけた。

「グギャ!」

 うん、いい返事だ。理解してるかどうかはさておき。


『お前はブレイゴ、俺はザードにしようと思う。どうかな?』

 身振り手振りを交えて伝えてみる。

 ブレイブ(勇気)+ゴブリンでブレイゴだ。

 一見正反対だけど、案外度胸あるなと思うこともあるんだよな。

 将来への期待も込めて……勇気!ってかっこいいしな。

 ちなみに、ザードは"リザードマン"から三文字とっただけだ。

 俺の名前だし適当でいいのだ。


「グギャ!ブレイ……ギャ?」

『ブレイゴな…って言葉わかるのか?』

 喋れないと思っていたが、俺の言葉を知らなかっただけなのかもしれない。


「グギャギャア!ブレイギャ…ブレイゴ!ギャウ!」

『そうそう、いい感じだ。俺の名前は?』

「ジャーギョ…ザーグォー……」

『ザード。』

「ザードー!」


 一応、言葉の意味も理解しているようだ。

 根気よく教えていけば普通に話せる日も来るかもしれない。

 といっても日本語を教えたところでこの世界では役にたたない可能性が高い。

 今はまだ、最低限必要な単語ぐらいでいいだろう。


 ブレイゴは、名前が嬉しいのか、小躍りして喜んでいる。

「ザード!ブレイゴ!グギャッギャ!」

『うんうん。さて早速だけどブレイゴ、お前にこれを作ってほしいんだ。』

「グギャ……?」

 そう言って石ナイフをみせる。単純なものだし、ゴブリンの里にもあるんじゃないかと思う。

 近くにある石を拾い、割るような仕草をしてみせると納得したように何度も頷いた。


『大丈夫か?』

「グギャギャウ!」

 ブレイゴはちょっと誇らしげな顔で答えた。「任せろ!」と言っているような気がする。

 何を言っているかはわからないが、何を言いたいかはなんとなくわかるようになってきた。



 作るのには時間がかかりそうなので、その間に少し槍の練習をすることにした。

 この前のようなことにならないためにも、直感や元々の身体能力だけに頼りきるのはよくない。もちろん最大限活用はするが。


 吊るした石に当てる練習をしたり、狩りに使ってみたりして使い勝手を確かめて体に慣らしていく。

 持ち手から先までが長すぎると命中精度が著しく落ちる。逆に短すぎるとせっかくのリーチが無駄になる。

 二つの調整と使い分けが重要になりそうだ。

 いつもより狩りに2倍近く時間がかかってしまった。



「ザード!グギャッギャー!」

 洞窟に戻ると、ブレイゴが嬉しそうに駆け寄ってきた。

『おー、できたか。』

「デキギャ?デキギャ!グギャ!」


 出来たものをみると、俺より格段に上手い。

 薄く平らで、しかも他の石で荒い部分を削って整えている。

 手間が省けるぐらいに思っていたがこれはすごい。


 試しに獲ってきたウサギを解体しよう。

 イノシシと比べて皮が薄くなかなか上手く解体できなかったが、これがあればもうなにも怖くない!

「グギャ?」

 ブレイゴが興味深そうに覗き込んでくる。

 ちょっと待ってて、いま解体するから。



 皮と肉を分けるようににナイフを入れて……あっ

 いや、ここをこうして……あっ


 …。

 ……。


『よし、ブレイゴあとは頼んだ!』

「グギャ!?」

 ブレイゴに押し付けて、保存肉の準備を進めることにきめた。

 がんばれブレイゴ!



 しばらくして問題なく解体を終えたブレイゴ。やっぱり上手い。

 どうしよう、この子が優秀すぎて俺の"元人間"なとりえが殆どなくなってきた…!?

 そういえば、ゴブリンもリーダーっぽい奴は毛皮着けてたな。

 解体はしたっぱの作業なんだろうか。


『すごいなブレイゴ。よくやったぞ!』

「グギャウ!ブレイゴ、スゴイ?ギャッギャ!」

 こんなに優秀なのに戦う力だけで判断して群れを追い出したんだったら、ゴブリンたちの目は節穴だな。

 いくつかの小さな木の実を粉々に砕いて、調味料代わりに肉にかける。

『ほら、昼飯にしよう。』

「グギャ!」


 昼食後にはブレイゴも一緒に昼寝しようといつもの特等席に連れて行ったのだが、寝たい気分ではなかったらしくどこかへいってしまった。残念。


 今日は病み上がりだから魔法の練習も控えておきたいし、のんびりするか。

 ……まあいつもそんな感じだな。


 いつもどおり、今日もいい天気だ。


名前:ザード

種族:リザードマン

特技:力任せ格闘術 練習中槍術 超嗅覚 サバイバル

魔法:体温上昇(不安定) 身体強化?(不安定)

備考:いつもどおりが一番だよね。

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