新たな試み
洞窟から出た俺に、朝日が差し込む。
大きく伸びをして、軽く準備運動。
うん、相変わらず動きやすくていい体だ。
洞窟を見つけてから数日が過ぎた。さて、今日はなにをしよう。
あの日昼寝から起きた時、よく考えると外で寝ていたら襲われる危険があることを思いだした。
危うく初日の失敗を繰り返すところだった。
そこでここ数日、自分の縄張りアピールとしてこの辺りにマーキングをしてきた。
俺は森の中ではかなり強い部類のはずなので、獲物が豊富なこの森でわざわざ寝床に寄って来る奴はそういないだろう。
そしてもう1つ。ここ数日練習してきたのがものがあった。
ファンタジーもののロマン、魔法である!
かざした手のひらに意識を集中させて力の流れをイメージする。
なんとなく、力が集まってくる感覚がある。
よし、ここまでは順調だ。きっとこれが魔力みたいなものだろう。
(燃えろ・・・!)
その力を炎に変えるイメージを……と考えようとすると、音もなく拡散して消えてしまった…。
『また失敗か…。』
炎に変えようとすると、手のひらから意識が逸れて集めた力が霧散してしまう。
だが、力が消える時に一瞬赤い光に変わったように見えた。
ほとんど未知の技術であるため直感に身を任せるしかないが、やり方は大きく間違っていないと思う。
…となると、炎に変えるイメージと力のコントロールを同時に安定させる練習が必要だな。
やりすぎると、全身の虚脱感に襲われ狩りもままならなくなるので、魔法の練習はここまでだ。
……あの時は空腹とのコンボで酷い目にあった…。
その後朝飯に狩ったネズミと木の実を食べながら、今後の予定を考えることにした。
今の俺としては、ただここでのんびり生きていければいい。
食べるものには困らないし現状大きな危険もない。
あと家(洞窟)の上で昼寝するの超きもちいい。
というわけで、次はより快適に暮らすための道具類を作りたいと思う。
ほぼ野生動物な暮らしからようやくランクアップするときが来た!
道具といえば、もし人間と交流できれば格段に便利な道具が手に入るのだが…
こっそり村に近づいて様子を見てみるのもいいかもしれない。
今はまだ怖いから遠くから見るだけ。
とりあえず森からいろんな種類の石を拾ってきて割ってみる。まずは石ナイフを作ろう。
ガンッ
ガンッ
バラバラになって崩れたり、異様に硬かったりでなかなか思うようにはいかない。
種類によって割れ方に差があるようで、理想に近い割れ方をした石を中心にまた拾ってきて割っていく。
ガンッ
ガンッ
痛っ!指打った・・・。
ガンッ
ガンッ
……
『ふう…。』
気がつくと日が高く昇っていた。難しいなぁ。
石割り作業で疲れたので、昼飯は拾っておいた木の実でいいや。
リンゴのような実を食べ終えると、そのまま崖の上に登って寝転がる。うん、今日もいい天気だ。
さあ、おひるねタイムだ。
作業の続き?そんなものお昼寝の前には些細なことなのだ。
体がおひさまを求めている!
というわけで、おやすみ。ムニャムニャ
――
しばらくして目を覚ました俺は、朝と同じように軽く体を動かす。
うん、絶好調。
昼寝をすると体の調子が格段に良くなる気がする。本能には従うが吉なのだ。
今ならイノシシだって敵じゃない!意気揚々と森に向かう。
まだお腹はあまり空いてないが、この期を逃す手はない。俺の本能も狩りをしたいとソワソワしている。
ハンティングの時間だ!
数分後。立ちすくむ俺の前には……一対の牙と血走った目。
…本当にイノシシが出てしまった。
名前:なし
種族:リザードマン
特技:力任せ格闘術 超嗅覚
備考:趣味は昼寝。日課にしよう。