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寝床探し

『…腹減ったな。』




 落ち着きを取り戻した俺は食料を求めて歩き回っていた。

 魔物の本能みたいなものだろうか。あんなにはしゃいだのはもう随分久しぶりな気がする。

 記憶はないのに、なんとなく懐かしい気分になった。


 …思い出すとちょっと恥ずかしくなってきた。

 べ、べつに誰か見てる訳じゃないし。体年齢的に子供だから仕方ないというか…

 一人でそんな言い訳をしていると、「グゥ」とお腹がなった。

 あぁ、あのまま食料も狩っておけばよかった…。



 森のなかには食料になりそうなものも含めて様々な生き物がいた。

 鹿・兎・狼・猪・熊といった動物に加えて、ゴブリンやスライム、植物っぽい生き物などの魔物らしき生物もチラホラといるようだ。

 どっちなのか判断しづらい大きいネズミや角の生えたウサギもいて、この世界では明確な区分けは無いのかもしれない。


 そうこうしていると、獲物の匂いを感じ取った。

 目をこらすと数メートルほど先にウサギが見える。まだこちらは見つかっていないようだ。

 やっぱり狩りの始まりだと思うとワクワクしてきた。

 だが、考えなしに動いて逃がすわけにはいかない。焦らず騒がずあくまで冷静に。


 一歩。

 足音を殺し


 一歩。

 気配を消し

 

 いまだっ!

 仕留められる位置についた瞬間、高速で獲物に飛び掛り相手が気づく間もなく爪を突き立てた。


『よっし!』


 初狩猟成功!

 生肉食べられるかな…と心配したが、狩った獲物を見てると普通においしそうに見える。じゅるり

 うん、問題なさそうだ。

 倫理?そんなもの前の世界に置いてきた!いただきます!ムシャア!



 その後2匹ほど狩って満腹になった俺は、山の斜面を掘って簡易的な寝床にして眠った。

 うーん、もう少しマシな寝床つくりたいな…。



 ――――



 翌日。目を覚ますと土の中から這い出て軽く体を動かす。

 見上げるとリンゴのような実が成っていたのでいくつかもぎ取り朝飯にした。

 ムシャムシャ。あ、おいしい。


 一応周りに気を配りながら、次にやるべきことを考える。

 この世界に生きる以上、自分でなんとかしていくしかないのだ。

 

 とはいえ、今のところ最低限生きていくには不自由していない。

 狩れる獲物は充分にいるし、嗅覚に優れているので油断していなければ危険な動物も避けられるだろう。

 だが満たされればさらに豊かな生活をしたいというのが人間の性である。トカゲだけど。

 衣食住…、優先したいのは安全な寝床かなあ。


『じっとしたまま考え込むのも落ち着かないし、いい場所探して軽く走り回って見るか。』



 森を駆けながら、昨日の記憶と…さらに前の"俺"の記憶を思い出しこの辺りの地理を頭の中に思い描く。

 どうやらここは、大きな山の麓にある森のようだ。

 山から離れていくと少しずつ人間の匂いが強くなっていき、逆に山に上がっていくと魔物の匂いが強くなっていく。

 山の魔物の方は、近づくと本能がピリピリと騒ぐ感じがする。俺より強いかもしれない。

 その範囲を避けたとしても呆れるほど広大なので、わざわざ近づく必要もないだろう。

 好戦的になっても怖いものは怖いのだ。


 しかし、不意に遭遇した時の対処の上でも自分がどれくらいの強さなのか把握しておくべきかもしれない。

 この森の殆どの相手は力づくで倒せそうなほどの身体能力があるが、それでも危険な相手はいる。


 体格の大きい相手と、群れで襲ってくる相手。前者はクマやイノシシなど、後者は狼など。

 力が強いといっても体格は子供程度しかないので、押し負ける可能性があるのだ。

 そして何より危険なのが人間だ。一人でも殺せば、「かたき討ち」とか「危険な魔物の討伐」のような名目で戦える人間が集まってきて、一気に危険な状況に陥りかねない。

 弱そうでも魔物らしき生き物だって油断できない。"俺"の記憶の中で一度だけ、魔法のような力を使う魔物がいたのだ。しょぼい小石が飛んでくるだけの術だったが。


 魔法か…今の俺って魔法は使えるんだろうか。

 前世のファンタジー知識を思い出して魔法の使い方をイメージしてみる。

 もしこの世界のリザードマンが魔法の使える種族なら、本能に刻まれているかもしれない。

 

 立ち止まって、本能と知識を総動員したイメージに従って手の平に意識を集中させてみる。

 

 …。

 

 ………。

 

 ・・・・・・・・・ボゥ

 

 お・・・?一瞬何かが流れる感覚がした。すぐに消えて、それからは何の反応もない。

 だが、「何か」の手ごたえはあった。

 もしかすると、後でしっかり練習すれば使えるようになるかもしれない…!

 そう思うと無性にワクワクしてきた。

 使うならどんな魔法がいいかな…やっぱり憧れるのは炎だな!

 ファイヤーボールとか、炎の槍とか・・・リザードマンだと口から炎を吐き出すとドラゴンブレスっぽくてかっこいいかもしれない・・・!

 そんな妄想を繰り広げながら、再び歩き始めた。



 日が高くなった頃、気になる場所をみつけた。


『滝だ…。』


 そこは小さな崖のようにになっていて、水が流れ落ちている。

 といっても俺の身体能力でジャンプすれば軽く上がれそうな高さで、アニメでよく見るようなドデカイ迫力のあるものではない。

 流れる川は場所によっては体が浸かれるぐらいの深さになっていて、水浴びもできそうだ。


 さらに嬉しいことに、崖沿いに少し歩くと洞窟が開いているのだ。

 中に入ると意外と広く、寝床にするには充分だ。

 崖の上に上がれば見晴らしがよく日当たりもいい。我ながらいい場所をみつけたもんだ。



 今日はぽかぽかといい天気で、日に当たっていると眠たくなってきた。


 …ああ、いいなぁ。こういうのんびりした雰囲気。

 少し離れた川のせせらぎが、子守唄のように眠気にいざなう。


(そういえば魔法練習しようと思ってたんだっけ…。まぁ後でがんばればいいや…。)


 ぐうたら人間まるだしな結論を出して、まどろみに身を任せる

 この世界では仕事に追われることも無いのだ。気の向くままに、のんびりいこう。


名前:なし

種族:リザードマン

特技:力任せ格闘術 超嗅覚

備考:強さ…下記の表でD相当

C:山の方にいる魔物(予想)

D:猪、熊などの中型の生物 

E:狼、ゴブリンなど比較的小型の生物 

F:スライムや大ネズミ、小動物など殆ど害のない生物


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