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群れる狼

 さて、今日はちょっと離れた所を探検してみようか。

 槍を手にとって軽く準備運動。近くにいたブレイゴに声をかけた。

『ブレイゴ、ちょっと出かけてくるよ。』

「グギャ!」



 普段行く場所から離れていくと、あまり見ない動物も見かけるようになってきた。

 水を飲むシカの群れ、犬っぽい頭の魔物…コボルトって言うんだっけ。

 拠点近くに多いオオカミやウサギはこっちにも沢山いるようだ

 それらを遠巻きに眺めながら森を駆けていく。


「グルル…。」

「グギャ、ギャギャ。」

 しばらく歩いていると、オオカミの群れとゴブリンの群れが戦っているのを見つけた。どちらも6匹程度だ。

 ちょっとみていこう。漁夫の利でも狙えればラッキーだ。


 慎重に距離をとるオオカミと群れで猛突撃を繰り返すゴブリン。

 始めはゴブリンが優勢だった。倒されてもすぐに他のゴブリンが群がり、オオカミを袋叩きにする。

 だがその隙にオオカミたちはゴブリンを取り囲み、少し離れた位置でゴブリンを待ち構えていた。

 ゴブリンは連携もなくバラバラに突撃しはじめ、群れから離れたものから各個撃破されていく

 そして戦いは、オオカミの勝利に終わった。


 オオカミも群れとなるとなかなか強いな。というかゴブリンって道具作ったりする知能はあるくせに戦いになると近くの敵にひたすら突撃するだけだったな。

 なんという脳筋……というと、なんだか自分も人の事いえないような気がしてきたので考えないことにしよう。

 ブレイゴは全然違うんだけどな。ブレイゴだったらどう動くだろう……いや、たぶん隅っこで震えてるだけだなー…。

 オレなら――いかんいかん、うずうずしてきた。



 木の下に目をやるとオオカミがゴブリンの肉を漁っていた。身を乗り出してよく観察してみる。

 やられたゴブリン、便利な道具とか持ってたりしないかな。

 棍棒、腰布、袋……目新しいものはないな。でも袋はもらっておくか。


 突如、オオカミの一匹がこちらを向いて唸りだした。

「ガゥ!グルルル…!」

 あ、バレた。仕方ない、一旦降りよう。


 オオカミはすぐにこちらを包囲しはじめる。

 警戒はしているようだが、さっきより余裕があるように見える。

 相手にとっては初めて見るとはいえ、ゴブリン程度の体格のやつ1匹。

 獲物がとびこんで来た、とでも思っていることだろう。

 確かに群れだと危険な相手だが、俺には新兵器がある。

 胸に手を当てて体の中の魔力を呼び起こす。――さぁ燃え盛れ!《身体強化》発動!


 実戦は初めてなのでまずは抑え目で発動してみる。

『かっこいい詠唱とかつけるべきか…な!』

 後方に大きく跳躍して包囲から抜け出す。

 ちょっと跳びすぎて着地失敗しかけた。あぶないあぶない。


 追ってくるオオカミを見据えて槍を構える。まっすぐ突っ込んでくるとは不用心だったな。

 力強く地を蹴り正面へ――突進突き!


 オオカミの牙が眼前に迫る……が、こちらに届くことはない。

 俺が突き出した槍は、オオカミの喉元を赤く染めていた。

 魔法で強化された一撃は、易々とオオカミを貫き絶命させることに成功した。


 これはいい。かなりの反動があったが地に足着いている状態なら耐えられそうだ。

 次いで2匹のオオカミが襲い掛かってくる。槍を構えなおし……槍が抜けない!

『うおぉっと。』

 槍を手放し攻撃をかわして一匹目に回し蹴り。ただの蹴りでもかなりの威力だ。

 もう一匹を迎撃するには体勢が悪い、一旦立てなおそう。

 力任せにジャンプして木に掴まり、戦況を整理する。


 残る敵は三匹。

 一匹は真下でこちらに唸り声をあげていて、残る二匹は警戒して距離をとっているようだ。

 さっきの槍取りたいんだけどな……。槍は深く刺さっていて抜けそうにない。

 仕方がない、素手でいくとしようか。ちょうどテンションもあがってきたところだ!


 《身体強化》!さらに大きく魔力を込める。

 体が熱くなっていき、感覚までもが強化されて相手の動きがはっきり見える。


『っどりゃあ!』

 掴まっていた木を蹴って真下にいたオオカミへ急降下攻撃。

 反応する隙も与えない。

 一撃で仕留めて次へと意識を向ける。あと二匹だ。


 攻撃の隙を狙われると厄介なのだが相手は困惑して距離をとっている。

 慎重なのが裏目にでたな。


『だがその程度じゃ、距離をとったうちには…入らないっ!』


 強化した脚力で跳びかかり一気に間合いをつめると、その勢いのまま殴り飛ばす。

 勢いは全て相手にぶつけるので着地を考える必要はない。

 オオカミは遠く飛んで行き、木に叩きつけられる。…後1匹!


 次の一匹が間髪いれずに攻撃を仕掛けてきた。

 攻撃直後の崩れた体勢を狙ったトドメの一撃。俺の首を食い破らんと迫る牙。

 ――みえている。

 死の気配が近づくほどに研ぎ澄まされる感覚は魔法でさらに強化され、相手の姿と気配をコマ送りのように明確に捉える。


 食い破られるのは……お前の首だ!

 頭をずらして牙をかわし、相手の首に喰らいつく。


『グゥゥルアァッ!!』

 そのまま相手の頭を地面に叩きつける。

 二、三度叩きつけると完全に動かなくなった。



『ふー……、よっし勝利。』

 立ち上がり息を整えると小さくガッツポーズ。

 …あ、別に倒さなくてもよかったんだった。

 木の上で見ていた時は欲しいものだけ掠めとって身体強化で逃げるつもりだったんだけど、つい熱が入ってしまった。

 ここじゃ後で取りに来るのも面倒だし、今日はここまでにして戦利品を回収するとしようか。


 やはりというべきか、かなり便利だなこの魔法。

 群れが相手でも簡単に蹴散らしてしまった。

 とはいえ、まったくのノーリスクというわけではない。

 魔力消費はもちろんのこと、体がかなり熱い。

 火属性の魔力を全身にいきわたらせているため、意図せずとも体温の上昇は避けられないようだ。

 初めて使ったときとは違ってまだ体調に影響がないところをみると、この体は熱には相当強いらしい。

 ならあの時は一体どれだけの熱さになってたんだろう……。


 刺さったままだった槍を引き抜いてみると穂先の石部分が砕けてしまっていた。

 全力でやると槍の耐久力がもたないな……。

 今のところ耐久力を上げる方法も思いつかないので、後でブレイゴに多めに作ってもらっておくか。

 さて、帰ろう。

 俺は、たくさんの獲物を抱えて洞窟へ走り出した。

名前:ザード

種族:リザードマン

特技:力任せ格闘術 練習中槍術 超嗅覚 サバイバル

魔法:身体強化【火】

備考:相変わらずに好戦的なってしまうトカゲ

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