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第9話 イリス

目覚ましの音で目がさめる。どうやら7時を迎えたようだ。

うーん。まだ7時か。確か、昨日テュケーが、うさぎは昼からしか出ないから午後の1時に集合ね。なんて言ってた気がするな。ってことは午前中は暇か。うーむ。ランク上げに行くか。


「カード」


目の前に出てきたランクカードを眺める。そこにはランク『155』と書かれていた。

ステータスの方はまだあまり高いとは言えず、使える魔法も今は0だ。所持金は0。昨日晩御飯に情け程度のパンを食べたからだ。

ここにいても、仕方がないので、とりあえず、音ゲーがあるところに向かうことにする。


いつも通り、真ん中の道を行き、そこで警備している兵士に軽くお辞儀をしながらゲートをくぐる。まだこの世界に来て5日目だが、かなりこの生活にも慣れ始めてしまっている気がする。

どのゲームをしようか悩んでいると、後ろから声がかかった。


「おはようございます。早いんですね」


振り返ると、イリスが立っていた。イリスの格好は昨日とは打って変わっていた。ロングスカートは変わっていなかったが、上は、腕が動きやすそうな服を来ていた。


「あれ? プシケとは一緒じゃないのか?」


「あ、はい。彼女は予定が無いとなかなか起きてこないので」


「あっ。そうなんだ……」


……。しばらくの間沈黙が続く。気まずい。実際昨日はほとんど、プシケとしか話してなかったからなぁ……。どうしようか。


「な、なあ。今日はこんなに早くからどうしたんだ?」


「えっ。あっはい。魔法を補充しとこうかと思いまして、ついでにランク上げなんかを」


「あれ? 昨日補充に行ったんじゃなかったか?」


「昨日は結局1時間粘って、『メイクハンド』って曲と、十二色のうちの一色しかフルコンボできなかったので、今補充しようかなと」


「なるほど。大変だな」


そうか。十二色の虹魔法って確かかなり高難度って言ってたな。そりゃフルコンするのにも時間がかかるな。


「では、私はなるべく午後までにたくさんの魔法が使えるようになるために、フルコン目指して頑張ってきます」


そう言って、イリスは奥の方の筐体へ向かっていった。


……さてと。じゃあ俺もランク上げでもしようかな。いや、その前になんかフルコンボして、魔法を取っておくか? うーむ。


結局ランク上げをすることにした。

飽きてきたら、別のゲームに変えながら、3時間ほどぐるぐる筐体を巡ったりしていると、ランクは189を指していた。


しばらく歩いていると、イリスが筐体の前でプレイしているのが見えた。曲は『虹色の魔曲・白銀の煌光』とかいうのをやっていた。あれも、十二色の虹魔法の1つなのだろう。3時間かかっても全てフルコンできない曲に、何時間もかけるのは無駄な気もするが……。何かこだわりでもあるのだろうか?


「本当、いつ見てもすごいよねー。イリスって」


突然後ろから声が聞こえた。声が聞こえた方を向くとプシケが立っていた。


「なんだ、プシケ。来たのか」


「んー。昨日、一昨日で結構な量の魔法使っちゃったからね。早めに起きて補充しに来たんだ」


早めって……もう10時過ぎてるんだけど。


「ん? そういえばさ、一昨日、服をつくってもらったから、昨日着る服を作れなかったんだよな」


「そうだよー」


「じゃあなんであの半自爆技みたいなのは一昨日と昨日使えたんだ?」


「魔法ってさ。人にもよるけど一回につき持てるのは15個くらいで、同じ曲の魔法は使えないんだよ」


「まあ、そんな制限はあるとは思ってたが」


「でも、同じ曲が使えないだけで、似たような種類の魔法は使えたり……?」


あっ。はい。察しました。この子あの自爆技2つ持ってますわ。


「っていうか、ここら辺は一般常識な気がするけど、なんで知らないの?」


ちょっとした質問をプシケが投げかける。ただこれは責めているというよりは、単に質問をしているようだった。

ふむ。異世界から来たことを伝えてもいいが……ここは。


「あー。実は記憶喪失なんだよ。あの、日常のことだけいい感じに」


そんなわけあるか。自分でツッコミを入れながら、プシケの返事を待つ。


「それってまさか、プェプェニツァッツァ病ってやつ!? 初めてみたよ! それにかかってる人!」


……は? 何を言っているんだこの人。何そのふざけた名前、そんな病気があるのかよ。まあ、おかげで、なんとかなりそうだけど。


「ま、まあ。そんなところだ。ところで、イリスがあの曲に拘るわけってあるのか?」


「んー。全く知らないよ。僕も知り合って3ヶ月とかだし、なんだかあれだけ必死になってると逆に聞きづらいというか。」


「そ、そうなのか。ってか知り合ってまだ3ヶ月とかなんだな」


「まあね。同じ日に、この中級者用のところに来たんだよ。それから知り合って」


「……え? ここに来たのって意外に最近なんだな?」


「それはね、16歳になるまでは授業でしかここ使えないんだよ。使っているのは一部の金持ちくらいかな。だから、あまりランクも上がらないんだよ」


へぇー。なるほど。そんなシステムだったのか。ちゃんと16歳未満には、教育が施されていたんだな。

……え? いやいや。まてまてまて。ここでプレイできるのは16歳以上ってことになるよな。


「ってことはお前16歳か。もっと下だと思ってたわ」


「うぐふぅ! それ言われるの何人目だと思ってるんだよー! 少しは気を使って!」


「あ、すまんすまん。ってかそうなると、イリスも16か意外だなぁ」


「まあ、成長は人それぞれだからね。っと。僕はそろそろ魔法習得に行ってくるよ。君も頑張ってね」


そう言うと、プシケはどこかに行ってしまった。しばらく、人の成長について色々考えてみたりもしたが、結局どうでもよくなってやめた。

その後ランクを上げて、気がつくと200を超えていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「さあ! 揃ったわね!」


テュケーが声を上げる。ってかテュケーって今までどこにいたんだよ。


「ところでどう? ランク上がった? カヅキ?」


「一応200は超えたけど」


「……え?……早すぎないかしら?」


「でも、この時間までに6時間ほどあったし、ランク上げるための試験って大体8分くらいだろ? いけるじゃん」


「いやいや。それって練習せずにランク上げに挑んでるってことでしょ!? どうなってるのよ……。流石にここまできたら少しは苦戦するかと思ったのに」


そんなこと言われても知らんがな。まあ、正直なところ、この難易度なら日本にあった音ゲーでも難易度マックスの中の下位曲くらいだしな。ランク上げの試験も、大体missの数や最大コンボ数くらいしかまだ聞いてこないし、落ちる要素が見当たらない。


「ま、まあいいわ。それについてはまた今度話し合いましょう。今はとりあえずうさぎ狩りに行くわよ!」


テュケーはそう言うと腕を高く振り上げた。



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