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第4話 ステータス

「クエストってどういうことだ?」


俺はテュケーに引っ張られながら尋ねた。テュケーに握られた部分は少し赤くなっていた。


「クエストはクエストよ。みんなの要求を聞いてそのお礼に何か受け取る。そんな感じよ」


階段を降りると、そこにはまた違った光景が広がっていた。バーのような作りになっていたが、その空間は明るかった。まるで昼間のカフェのようだった。

そこには様々な服を着た人たちがいろいろな場所で会話をしていた。


「上の音ゲーの場所は動きやすいようにトレーナーとか、ジャージとかが多いけど、ここは冒険するための人が集まっているからそれぞれの特性を生かした服が多いの」


「なるほどな。ちなみに音ゲーをやっている人はみんな冒険者なのか?」


「そんなことはないわよ。大抵は一般人ね。冒険業を退いた人や、仕事で魔法を使う人なんかがいるわね」


そう言ってテュケーはカウンターの方へ歩いて行った。そして、そこで受付の人と会話をしている。俺は少し離れたところにいたので、正確に聞き取ることはできなかったが、どうやらクエストの手続きをしているようだった。

しばらくするとテュケーがこちらに向かって歩いてきた。


「とりあえず、冒険者登録は済ませておいたわ。後は、仲間ね。クエストを受けるんだったらパーティを組まなきゃ」


「二人で行っちゃダメなのか?」


「ダメね。簡単なクエストだったらソロでもいけるけど、ランク150あたりだったらせいぜい報酬150チューンが限界ね。3000チューンも稼ごうとしたらもっと難易度の高いクエストに行かなきゃ」


そう言ってテュケーは近くにあったテーブル席に腰掛けた。俺もそれに従って、そこに腰掛ける。


「っていうか、俺3000曲もプレイしてないと思うんだけど」


「うーん。だったら宿代かしらね? でも普通の部屋ならせいぜい60チューンくらいだと思うんだけど」


「よくわからないけど、部屋にも筐体があったな」


その言葉を聞くと。みるみるテュケーの顔が青くなっていった。


「そ、それ最高級の部屋じゃない……。普通貴族の人が泊まるような部屋よ。多分1000〜1500チューンくらいするんじゃないかしら」


え? 1000チューン……?


「は!? なにそれ! どういうことだよ!」


それとは対照的に少し重い感じで、テュケーは答えた。


「多分、適当に処理をされちゃったのね。どの部屋を借りたいか言わずにカードを見せちゃったでしょう。だから一番高い部屋に泊まるように登録されちゃったのね」


「え!? 登録!? じゃあ俺は毎晩そこに泊まるようになるのか?」


「ちょっと待って。ランクカードを出してみて」


俺はどうしようもないので、とりあえず言われたままにランクカードを取り出す。それを手渡すと、テュケーは裏側の文字をゆっくりと見た後、ホッとした顔で俺にカードを返した。俺は受け取るとランクカードを消した。


「大丈夫よ。裏面に『宿場』って項目があるでしょう。そこが未登録になってたから次からは安い部屋に泊まれるわ」


「そうか。それならよかった」


いや。本当に良かった。あんなに高い部屋にとめられていたら、いくらクエストで稼いでいてもキリがないだろう。


「さてと。メンバー募集しないとね。うーん1000チューン以上の報酬を受けるにはこのランクだと四人は必要そうね。後、二人集めないと」


「あの子連れて行けばいいんじゃないか? あのローブの……ええっと……ガイアだ」


するとテュケーの顔が少し変わった。なんだか暗くなっていた。


「ガイアはダメよ。あの子はあそこから離れられないの」


「離れられない? それってどういうーー」


「さ! 気を取り直して、どんなメンバーが欲しいかチャチャッと決めちゃいましょう!」


「お、おう。そうだな……」


うーん。何だろうあの態度。何だか腑に落ちないけど、それ以上言及するのはなぁ……。やめておくか。

現在11時ごろ。冒険に行くものはすでに出発しており、周りはある程度静かになっていた。


「出来ればバランスのいいパーティにしたいのだけど。これステータスってどういう風に確認できるんだ?」


「ランクカードの表に書いてあるでしょう。出してみて」


また、出すのかよ!? しかしテュケーは全く気にしていないようだった。

ランクカードを見てみると、確かにステータスが表記されていた。


HP 125

攻撃 83

防御 76

魔力 82

素早さ 79


「うーん。これってどうなんだ? いい方なのか?」


「ちょっと見せて」


テュケーはそれを眺めると、ふむふむ。と頷いた。


「面白みのないステータスね。特に秀でた面も無ければ、劣っている面もない。よく言えばオールマイティ。悪く言えば中途半端ね」


何だよ面白みって……。器用貧乏ってことだろ。何だかなぁ。やっぱり尖ったステータスがある方が何だか異世界っぽいんだけどなぁ。


「ただ、逆に言えば、ランクはすぐに上がりそうね。この感じだと苦手な譜面もほとんどないでしょう。だったらランク上げで行き詰ることはなかなかないでしょうね」


「ちょっと待って。そもそもステータスってどうやって決まるんだ? ランクだけじゃないのか?」


「そうね。ランクだけじゃなくて、どんな譜面が得意かにもよるわね」


「得意な譜面?」


それってどういうことだ? 俺が首を傾げていると、それを見たテュケーは一旦息を整えたからゆっくりと話し出した。


「ええっと。例えば体力譜面だったらその名の通り、HPと防御が育ちやすいわ。他には、高速譜面だったら、素早さ。暗記譜面だったら、防御と魔力。テクニック譜面だったら、攻撃。リズム難譜面なら攻撃と魔力みたいな感じね」


「なるほど。わかりやすい」


その言葉を聞いて、テュケーは満足そうにテーブルに置いてあった水を飲んだ。


「じゃあ、テュケーのステータスはどんなのなんだ?」


「いいわ。見せるわよ」


そう言ってテュケーは手のひらを広げてランクカードを取り出した。そして、それをそのまま俺の目の前に持ってきた。


ランク 272

HP 156

攻撃 193

防御 139

魔力 126

素早さ 152


「……なんかデコボコしたステータスだな」


「い、いいのよ別に。全てが中途半端に高いよりも、飛び抜けた才能がある方がいいって偉い人が言ってたわ」


「ふーん」


とりあえず面倒なので、俺はテュケーの言葉を軽く流すと、そのステータスをまじまじと見つめた。


「テュケーってテクニック譜面が得意なのか。そして、暗記譜面が苦手と」


「ま、まあそうね。今はすべてのゲームのランクアップのための曲が暗記譜面なの。だからここ最近全くランクが上がっていないのよ」


とりあえず、テュケーのステータスが知れたからパーティの仲間の要件をまとめるか。


「テュケーは物理攻撃が得意か。素早さも十分高いし。じゃあ、パーティとして欲しいのは、魔力が高い人と、防御が高い人かな」


「ん。わかったわ。取り敢えずそのことを受付の人に伝えてくるわ」


そう言ってテュケーは受付の方に歩いて行った。テュケーは受付で、何やら話すと、やがてゆっくりとこちらに戻ってきた。


「一応要望については話しておいたわ。ただ、今昼間だし、パーティメンバーが集まるかどうかはわからないってさ。もしかしたら1時間くらい待つことになるかもね」


そう言ってテュケーはついでに持ってきていた、ジュースを、俺にも渡してくれた。俺はそのジュースを飲んで、どんな仲間が集まるか、楽しみに期待していた

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