第26話 魔王軍幹部ラムス 5
「うごぉぉぉぉぉ!! キエロ!」
ラムスは恐ろしい化け物の姿で襲いかかってくる。攻撃の速さは先ほどまでのラムスに比べるとかなり遅いと言える。だが、問題は
「近づけないわね」
やつを纏っている炎の鎧。かなりの熱を持っていて近づくことすらままならない。ラムスが歩いた付近の森は炎上し始めている。
ラムスは拳を振り上げて、こちらに叩きつける。俺たちはギリギリでなんとかかわす。地面が揺れ、そこに生えていた草が炎上しながら、そこにはクレーターのようなものができていた。
「あのパワーはやばいな。一撃必殺だと思っても問題なさそうだな」
ラムスの方を見る。ラムスは確実にこちらを狙っている。
うーん。普通これだけ暴走したような敵はコントロールできずにランダムに暴れまわったりするんだけどななぁ。ノンデメリットでここまで強くなれるって考えると恐ろしい魔法だな。
「あの炎を消さなければ近づくことすらできないけど、もう水魔法はない。どうすればいいんだ?」
考える。敵の攻撃が先ほどまでのとは違い遅くなってくれているので、頭を回しながら敵の攻撃をかわすことができる。さらに一応湖の中にいれば、相手もやってこれない。水が弱点なのは変わっていないようだった。あの炎を抜ける方法を考えるんだ。もしくは遠くからダメージを与える魔法で倒すか?
「みんな、後どれくらい魔法は残ってるんだ?」
「私はもうないですね。残ってた魔法は使い切ってしまいました。あの短期間で虹色の魔曲をフルコンすることはできませんでした」
そういやリーフドラゴンの討伐に行ってからほとんど時間を空けずに来てるんだよな。そりゃイリスはあまり魔法を増やしておくことができないか。
「私は剣に関する魔法が後3つほど。氷、風、炎だから正直全くと言っていいほど役に立たないと思うわ。そもそも剣で切りにいけないから、意味がないんだけどね」
テュケーもそう言ってくる。なんやかんやで、いきなり来てしまった感が否めない。これは明らかに俺の失敗だ。
「僕は仲間一人の防御を少し上げる魔法と、いつの間にか持っていた風魔法、後は自分を燃やす魔法がもう1つかな」
……うーん。詰んでね? だって流石にこの魔法じゃかなり厳しいものがある気がする。奴の体力がどれくらいあるかもわからない中で弱い一発を加えてもなんの効力もないだろう。
「……やっぱり使うしかないわね」
テュケーがゆっくりと呟く。ポケットに手を突っ込んで何かを漁っている。そして4つの飴玉を取り出した。
「なんで今ここで!?」
俺は驚きを隠せなかった。だってテュケーが持っている飴玉は、ガイアが作った美味しいらしい飴玉だったから。
「それでどうしようっていうんですか?」
「これは自分のステータスの中で任意のステータスをしばらくの間倍にするという、禁断のドーピングアイテムよ」
そう言ってテュケーはそれぞれに飴玉を渡す。見た目はミルクキャンディのような美味しそうなつくりをしていた。
「なんでそんなヤベェアイテムをすぐ使わなかったんだよ」
「出さないだけのデメリットがあるからよ」
「デメリットってなんだ?」
「1つ目、効果が切れた後しばらくの間かなり体がだるくなってしまう。切れる前に決着をつけないといけない上に、決着がついても動かなかったら逃げられる可能性もあるからよ」
「他には?」
「2つ目、かなり体に負担がかかるから、上手く体を動かさなくなる可能性がある。そして重要な3つ目、ランクが30下がる」
は? ランクが下がる? それってどう言う意味だ? ランクってそんな任意のアイテムを使って下げることができるものだったのか?
次々と疑問が湧き上がってくる。が、それ以上にステータス2倍の魅力は素晴らしい。その質問をぐっと堪えて、どうすれば奴に打点を与えられるか考えることにした。
奴に近づけない原因は炎の鎧。通ることができるのは炎魔法への耐性が高いやつくらいだろうな。だが、うちのパーティに魔法抵抗が高い奴なんていない。そこさえ解決すれば……。
俺は仲間たちの顔を見る。皆真剣に方法を考えていた。どうやったらあいつを止めることができるか。
炎魔法を防ぐ要領だ。プシケか? いや、防御は高いが火あぶりになる耐性はないは……ず?
ふと気になったことができた。もしかしたらこれを生かせば打点を持っていけるかも知れない。
俺はプシケに話しかける。
「なあ、プシケ。さっき言ってた自分の体を燃やす魔法って、さっき使ってたやつとほとんど性能変わらないのか?」
「そうだよ。大体同じ魔法。こっちの方が魔力のコスパが悪いから普段ならあんまり使わないんだけどね」
ってことはいけるかもしれない。後は、奴に重大なダメージを与えられるかどうか。これが勝負の決め手になるだろう。
もう既にイリスは使えない。ってことは俺とテュケーでどうにかするしかないのだが。
飴は全部で4つ。これをうまくいかすには方法は……これが1番だろう。
「なあ、テュケー。この飴って一人で何個も食べられるのか?」
その質問にテュケーは驚きの声を上げる。
「そ、そりゃ問題はないとは思うけど……」
「あ、あともう一つ。ランクが下がるのは使った直後か? 切れた後か?」
「切れた後よ」
「おけ。プシケ。お願いがある。本当にいいづらいんだが……ランク90ほど下げてくれないか?」
プシケは静かに目を閉じた。そして、そっと口を開いて
「やるしかないんだよね。僕が。どう言う作戦かはまだ聞いていないけど、それだけの意味があるんだよね」
俺は無言で頷く。プシケは少し辛そうな顔をしたが目を開けまっすぐこちらを向いて力強く頷いた。
本当にプシケには申し訳ない。これを成功させないとどうしようもないんだ。
「じゃあ作戦を伝える」




