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第18話 まぁず

討伐後の宴から二日後。現在はリーフドラゴンの討伐に来ている。結局まだ所持金額はマイナスなので、こうやって稼ぐしかない。

なぜリーフドラゴンなのかというと俺たちが住んでいるラクトの街の近くの森でなぜかリーフドラゴンが大量発生しているのだ。1匹あたりの報酬が6000チューンまで上昇しているのも狩りに来ている理由だ。

現在2体討伐。3体目と交戦中だ。


「そっち行ったぞ! プシケ!」


「任せてよ!」


プシケはそう言うと、自慢の盾でリーフドラゴンの攻撃を受け止める。盾は『ただ護るための障壁』によってビクともしない。


「『火焔車』」


俺はそう叫び、巨大な火の玉をリーフドラゴンに向かって飛ばした。リーフドラゴンは避ける暇もなく、炎に包まれる。慌てて水に浸かろうと逃げ出す。


「私が追うわ。みんなは待ってて」


テュケーはそう言うと、一人で火だるまになっているリーフドラゴンを追いかけていった。


「おお。流石テュケー。速いな。俺たちは少し休むか」


「そうですね。私も魔法があと4つになったのでほとんど役に立たなくなってますし」


そう言えば、イリスって2つの魔法が操れないとか言ってたな。なんでだろう? 同じ魔法なのに。チョット見てみたいな。


「なあ、コントロールがつかない魔法を使ってみて欲しいのだが」


「ええ!? 今ですか? うーん。まあ危なくはないですからいいですけど」


そう言うとイリスは杖を構えた。


「『虹色の魔曲・茶冥の岩石』」


イリスが唱えた瞬間。巨大な岩石がイリスの周りを漂い始めた。そして、イリスが一本の木を目掛けて杖を振ると、そちらに向かって岩石が飛んでいく。

が、途中で空に向かって飛び出したかと思うと、見当違いの方へ飛んでいき見えなくなってしまった。


「な、なるほど。確かにうまく操れてない感じがするな」


俺がそう言うと、イリスは少し落ち込んだ様子で答えた。


「やはりダメですね……。何ででしょうか」


正直わからない。普通に考えると、その魔法だけ他の魔法に比べると強力で、今の魔力じゃ操れないとかありそうだけど。でも、他の魔法と比べても特に強いって感じはしなかったなぁ……。


「まあ、魔力が高くなったら使えるようになるんじゃないか?」


「それもそうかもしれませんね。気長に待ちます」


とりあえず、イリスの魔法の話はここで終わることになった。プシケは既に休みは十分なのか、木の実なんかを採取していた。


「テュケー思ったより遅いね。あの速さならすぐ仕留めると思ったんだけど」


「確かになあ。俺たちだけで、もう一体くらい討伐しとくか?」


「それでもいいかもしれませんね。少し奥に行ったら一体くらいはいるでしょう」


そんなわけで、テュケーを置いて、森の少し奥に進むことにした。とは言ってもそんなに進む気はないのだが。


しばらく歩くと、奥の方に影が見えた。


「ん。居たな。かなり小さめのやつだが」


俺がそんなことを言うと。


「え? 僕には人影に見えるんだけど。あれ普通に人じゃない?」


プシケのやつよく見えるな。とか思いながら、目をよくよく凝らして見ると、なるほど確かに人間だ。

こんなところにいるってことはあの人もリーフドラゴンを討伐しに来たのかな。ここは普通に挨拶くらいはしとくべきか。

しばらく歩くと、向こうもこちらに気付いたようだ。その男は短めの赤髪で、武器のような類はもっていないようだった。

ただ、その男は何もない方角をただ眺めているだけのようだった。


「こんにちは。そちらもリーフドラゴン討伐に来ているんですか?」


簡単な挨拶で声をかける。すると向こうも少し汚い言葉ながらも返してくれた。


「ん。ああ。結構いるみてぇだからな。減らしとかないとな」


「それでしたら一緒に討伐しませんか? 集団で追い込めた方が楽でしょう」


俺の提案に向こうは。


「おっ。それもいいかもな。じゃあ、ちょっくらやってみるか」


快く承諾してくれた。どうやら向こうもリーフドラゴン討伐にやって来たらしく、眺めていたのもリーフドラゴンを探していたかららしい。

男は続けて自己紹介をした。


「そうだな。俺は『まぁず』って言うんだ。まあ呼び方は好きにしてくれ。ああ、あとタメでいいぜ。」


……まぁず? まぁずってまさかあの俺の上のスコアを取っていたやつか!?


「俺はカヅキ。スコアネームは『るな!?』って言うんだけど、見覚えはないか?」


その話をした瞬間、ほんの一瞬だけ不思議な顔をした。その喜びとも驚きとも表現できない顔は直ぐに消えていった。


「おお! 知ってるぜ! なんでもラクトの街で初めてアクアポイズムを倒したとかで話題になってたな」


そうまぁずは言うと手を差し出した。どうやら握手の構えのようだった。俺はそれに応じるように右手を差し出した時。


「危ない!! そいつに近づくな!!」


後ろから怒号のような何かが聞こえてきた。振り返ると、テュケーが恐ろしい形相で叫んでいる。俺は一体なんなんだと思い、少しテュケーのところに行こうと、そのことをまぁずに伝えようとして振り返った時だった。

何かとても快い音がした。しかしその快い音は周りからならばの話であろう。

その音がどこから出てきたか、直ぐに理解することができた。


俺の右腕がありえない方向に曲がっていたのだ。

俺はその吐き気のする痛みに耐えながら、まぁずの方を向く。するとその男は不気味なまでに口元が歪んでいた。


「くっくっくっ。あーはっはぁっ!! アクアポイズムを倒したからどんなにヤベェやつかとと思ったら全然じゃねーか! 上が言うほど警戒する相手でもねぇな」


その男はそう告げると。


「まあ。殺さずには置いといてやるよ。くくっ。利き腕を壊されたんじゃ当分音ゲーなんてできないだろうしな」


そう言うと何かを呟いて、一瞬で消えていった。

俺は途切れそうになる意識をなんとかつなぎながら、その姿を目に焼き付けた。

直ぐにテュケーがやって来て、持ち合わせたもので、応急処置をしてくれる。

そして、そのまま俺たちは帰路につくことになった。





腕を固定しながら、街に帰る。イリスとプシケはまたあの男が来ないか警戒しながら歩いているようだった。


「なんなんだ……。あいつは」


俺がボソッと呟くと、直ぐ隣で歩いていたテュケーが反応する。テュケーは少し黙った後、口を開いた。


「あいつは……魔王の幹部の一人、『ラスム』。武器は使わないで、素手で戦うのが特徴だったはず」


「魔王の幹部……!? そんな奴がどうして俺なんかを狙ったんだ」


テュケーはその質問には答えなかった。そして微妙な空気の沈黙の中、俺たちはラクトの街に到着したのだった。

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