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第17話 宴

クエストを受けるところに行くと、既に人が集まっていた。どうやら空間魔法か何かで店を広げているらしく、大人数でも入れるようになっている。


「おお! 主役の登場だぞ!」


一人の男がこちらに気づき大声で叫ぶ。それを聞いた人たちが一斉にこちらを向く。殆どが称賛する声を上げていたが、中には疑惑を持っている人もいただろう。


俺たちは空いている席に座ることにした。はじめのうちは俺たちに色々と質問をしてくる人たちが俺たちの周りに集まってきたが、ひとしきり質問すると、皆、宴の中心に向かっていってしまった。

テュケーとプシケもその最も盛り上がっているところに行ってしまい、帰ってこない。

俺とイリスは少し落ち着いたところで、適当に注文して夕食でも食べることにした。


「すごく騒がしいな。宴ってこんなものなのか?」


すると、イリスは首をかしげた。


「いえ、私も初めて参加するので、わからないんです」


「そうか。しかし、俺たちが置いてけぼりなのもなんだか寂しいもんだな」


「まあ、ここにいる奴らのほとんどは飲んで騒ぎたいだけだからな」


後ろから声が聞こえた。振り返ると一人の青年が立っていた。


「よう。久しぶりだな。と言っても1週間も経ってないが」


そんなことを言っているが、一度も会ったことが無い気がする。いや、まて……。どこかで見た気もするな。


「俺だよ! 俺。あの真ん中のゲートで警備をしている騎士だよ!」


そう言うと、そいつは、ゲートの前でとっているポーズをした。


「ああ。あの俺を騎士団に連れて行こうとしたやつか」


「それは本当にすまなかったと思っている。俺もただマニュアル通りに動いていただけなんだ」


「まあ、それくらいわかってるよ。俺だって今まで見たこと無いような奴がいたらああするしかなかっただろうしな」


「そう言ってもらうと助かる」


そう言うとそいつは俺の隣の席に座った。イリスはなんだか居心地が悪そうな顔をして、一言、プシケのところに行ってますね。と言うと去っていった。


「俺はアドニスって言うんだ。よろしくな」


「俺はカヅキ。そう言えばもう一人いた騎士はどうしたんだ?」


「ああ。先輩なら仕事中だよ。俺は今日はオフなんだ」


そう言うと、アドニスは店員を呼んで色々と注文していた。

騎士団と話す機会なんて滅多に無いな。何か色々聞けたらいいんだけど。


「そう言えば、騎士ってどういう人たちがなってるんだ?」


「ん? そうだな。俺みたいに志望して、試験に合格してなるような奴もいれば、スカウトされる人たちもいたな」


なるほど。様々な方法で騎士になれるらしい。まあ、騎士になる気はないけど。


「騎士ってどれくらいなんだ? 結構強いのか? あんまり見たことがないんだが」


アドニスは少し考えて、口を開いた。


「そうだなぁ。ピンからキリだとは思うが、それでも1番低くてもランクは300超えてるしそこそこやるとは思うが」


300超えてるのか。ってことはアドニスも300超えってことになるな。まあ、ゲートを警備する騎士だし、それくらいは必要なのかな。


「アクアポイズムを討伐したのは俺たちが初めてって聞いたけど、騎士たちは討伐してないのか?」


アドニスはその質問に店員が持ってきたフライドポテトを食べながら答えた。


「騎士たちはクエストを受けられないんだよ。それに、俺はこの街出身だが、大抵の奴らは王都から派遣されてたりするしな。あんまり街の名誉とかには興味無いんだよ」


へぇ。そんなシステムだったのか。国から派遣されるものか。てっきり街が自衛のために設置しているもんだと思ってたな。


「ちなみにこれくらいの5万人の街なら兵士は500人くらいだな」


「ん? それって少なくないか」


「まあ、個人で警備しているような会社もあるしな。国の機関はこれだけいれば十分なんだよ」


そう言うと、アドニスは立ち上がった。なんでもこの後は夜勤らしく、そろそろ家に帰って準備をしなければならないそうだ。

最後に1つ聞いておきたい質問をすることにした。


「なあ。騎士団もこのタワーで音ゲーをプレイするのか?」


「いや。騎士団には騎士専用のところがあるが。それがどうかしたか」


「いや。なんでも無い」


アドニスはそうか。と答えると、手に持ったポテトの袋からフライドポテトを食べながら、階段を上へと上がっていった。


騎士団はあそこを使ってないのか……。ってことは普通に俺よりもスコアが高い奴がいるってことだな。確かに街は広いけど、あのスコアを超えてくるとは……。気になるな。どんな奴なんだ。


俺が椅子に座って考えていると、後ろから何やら冷たいものをかけられた。


「!? なんだ! ってうわ! これ酒か!?」


「えっへっへっ。どお〜。楽しんでるかい〜」


後ろを振り返ると、酒の瓶を持ってふらふらしているイリスがいた。顔は真っ赤に染まり、しっかりと立てていなかった。


「うわっ。マジかこいつ。ってかお前まだ16だろ。酒飲んでいいのか?」


「ふふふ。学校卒業したら何やってもいいのよー。さあどんどん盛り上がっていこうじゃないか!」


俺はイリスに引っ張られると、皆んなが盛り上がっているところに巻き込まれた。そこではテュケーとプシケが色々と騒いでいた。二人はこちらに気づくと手招きをした。


「どうやらイリスに捕まったみたいだね。気をつけたほうがいいよ。酒が入ったイリスは危険だからね」


プシケは俺にそう伝えると、再びテュケーと盛り上がっていた。俺はイリスに腕をがっちり掴まれると、連れまわされた。そして結局朝まで、飲み明かすことになった。





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