表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/65

第14話 本質

アクアポイズムは高速で毒を飛ばしてくる。俺たちはそれをしっかり見ながら取り敢えず避けることにした。

外れた毒が後ろの木に当たって朽ち果てる。それほどあの毒は強力なのだ。


「なるべく近くで、魔法を浴びせば倒せるんじゃないか?」


魔法といえども、やはり近距離の方が威力が高い。遠くだと威力が減衰してしまうからだ。


「そうでしょうね。私が行くわ。援護して」


確かに1番素早さの高いテュケーに任せるのがいいだろう。

俺は槍を取り出すと、軽く念じてその形を弓にした。


「行くぞ!」


俺は弓を引いてアクアポイズムに向かって撃ち放つ。

しかしやはりアクアポイズム。持ち前の素早さで、いとも簡単にその矢を避けた。


しかし避けた先にはイリスが待ち構えている。イリスは直ぐに魔法を放った。


『虹色の魔曲・黒鉄の暁闇』


あの黒い刀のようなものが、アクアポイズムに切り掛かる。アクアポイズムはさすがに避ける暇もなく、思い切り当たった。

ダメージはそこそこに、どうやら目潰しの効果がついたらしい。その隙にテュケーが近づく。テュケーは再び雷系統の魔法を剣に纏わせると、勢いよく切り掛かる。

と、次の瞬間アクアポイズムはプルプル震えだした。プルプルは徐々にブルブルとなり、周りに毒の粒を撒き散らしていく。


「テュケー! かわせ!」


「わかっているわよ!」


テュケーはそう言うと空気を蹴って方向を変えた。人間技じゃねえ。


アクアポイズムはプルプル震え続けている。どうやら、今のところやめるつもりはないらしい。


「ここから魔法撃ち込むか?」


「そうね。それもありかもしれないわね」


テュケーがしばらく考える。そしてテュケーはプシケを呼んだ。作戦を伝えているようだ。


「取り敢えず正面突破は無理そうだから、まずはやはり魔法を打ち込むわよ」


ってなるとイリスに任せればいいのか。魔法のエキスパートだもんな。


「任せたわ。カヅキ」


「……え? ちょっと待って! ここは明らかにイリスに任せるべきなんじゃ」


テュケーは真剣な顔をすると、持っている剣を眺めながら。


「多分だけど瞬間的な火力だともうすでにカヅキの方が高いわよ。だから任せるわ」


テュケーはそう言って剣を仕舞う。瞬間的な火力か。ランクは確かに上がってきたけど、そこまでじゃない気もするが……。


「その後は私がプシケを連れてあいつの元へ突っ込むわ。雷を受けてひるんでいる隙に、プシケに『自己の発電力』って技を使ってもらうわ。あの炎技の電気が版みたいなものよ」


そう言ってテュケーはプシケを抱えた。イリスはいざという時のための援護。何か不都合があったら直ぐに知らせる係りでもある。


そして作戦開始の合図が送られた。


俺は取り敢えず、アクアポイズムに魔法を打ち込む。


『雷霆』!


ライトニング・ボルテッシモとは異なり、一本の雷撃がアクアポイズムに向かって飛んでゆく。アクアポイズムはもちろんそんなものは見えないし、気づくこともできないようだ。


凄まじい衝撃音とともにアクアポイズムに魔法がぶち当たる。あまりの衝撃で砂埃が舞っているそのタイミングを見計らって、テュケーが飛び出す。そしてプシケはいつでも魔法が使えるように、最後の一言を残して待機していた。

と、その時1つの声が響く。


「ストップです! 止まってください!」


イリスが大声で叫ぶ。それに気づいたテュケーは動きを止めた。そしてテュケーは直ぐにイリスがその指示を出したのか察した。

テュケーの数メートル先は砂埃ではなく毒の霧が発生していたのだ。


「こんな技も残っているのか……。こいつ意外に討伐報告少なくて、詳しい生態がわかってないとは書いてあったが」


テュケーは一度下がって距離をとる。

くそっ。やられたな。あれじゃ近づけない。それに風向きが変わればかなりやばいぞ。今はこちら側に向かって吹いてないから大丈夫だか、こっちに吹き始めると危険だ。


そこに風が吹いていく。するとその風は毒の霧をさらっていくと、アクアポイズムの姿が現れた。

アクアポイズムは仰向けに倒れており、動かなくなっていた。


「え? まさかあの魔法で倒してしまったのか?」


「可能性はあるわ。ゆっくり近づいて確かめましょう」


俺とテュケーで、そっと近づく。アクアポイズムが動こうとする様子はない。


「何だか、あっけなかったな」


「まあこんなものでしょうね。カヅキの魔法の威力が高くなっていたってことよ」


テュケーが髪を払いながら、そんなことを言ってくる。褒められるとやはり嬉しいものだ。

テュケーはアクアポイズムに近づいて、討伐を確認しようとする。その時、アクアポイズムの瞳が輝いたかと思うと、テュケーの腕に切り傷が生まれる。


「な、なんだ!?」


ぐるるるるる。と唸るその猫のような生き物は、鋭い爪と牙を持っていた。その代わりかは分からないが毒は持っていないようだった。


「テュケー! 逃げろ!」


テュケーは急いで体勢を整える。しかし、アクアポイズムの凶爪がテュケーを切り裂く。


「うっ。ぐ……」


テュケーが胸を押さえる。あまり傷は深くはないようだが、焦って体が動いていない。

俺は力を込めて、アクアポイズムに向かって駆けて行く。絶対にここで仕留める。出来なくてもテュケーの体勢を立て直す時間をとる。


武器は剣に変えてある。力を込めて、アクアポイズムに切り掛かる。アクアポイズムは鋭く伸びた爪で防ぐ。その隙に、足で力一杯アクアポイズムを蹴り飛ばす。アクアポイズムは何メートルか吹き飛ぶと、少しひるんだ。


「一度引くぞ!」


俺はテュケーを抱きかかえると、イリスとプシケがいるところまで戻る。


全く……。まだこいつはこんなに元気があるのか。どうやら毒も消えたみたいだから、全く別の生き物と捉えて戦ったほうがよさそうだな。


RPGとかでいう第二形態だな。いいだろう。純粋な力比べのようなものか。俺は武器を槍の形に戻すと、アクアポイズムの方に刃を向けた


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ