第12話 master頑張ります
『アクアポイズム』というモンスターがいる。このモンスターは、水辺に住むネコのような姿をした魔物らしい。普段は大人しいモンスターだが、腹が減ると、恐ろしく凶暴になる。身体から毒を飛ばして、食べられない植物を枯らし尽くす。そして、残った果物などを食べて暮らしているのだ。
こいつの問題はしぶとさでもある。
体のほとんどが、水分で、猛毒である成分で構成されているため、打撃はほとんど効かない。
さらに人に害のある猛毒を撒き散らすため、離れていても危ない。
そうして付けられた、報酬金額は『200000チューン』四人で山分けしても一人当たり50000チューンと3分の1を返すことができる。
というわけで、こいつの討伐方法について、テュケーも加えて相談しているところだ。
「流石に無謀な気もするよねー」
プシケが、コップに入れてある氷を転がしながら言う。その言葉に二人も軽く頷いている。
「まあでも、持っていく魔法を強い雷系のにすれば、可能性はあるかもね」
「けど、弱いやつじゃ、たかが知れてるだろ?」
テュケーは手を顎に当てる。そして少し考えながら、
「そうね……。少なくともprofessionalの魔法じゃ厳しいかもね。それこそ、今回手に入れたライトニング・ボルテッシモとかを使っていけばいいんじゃない?」
「ってことは、masterしまくって、フルコンして魔法を集めればいいのか?」
テュケーはさらに難しい顔をした。それを見ながら、俺はコップの水を少し飲んだ。
「masterなんてホイホイフルコンボできるような難易度じゃないでしょう。あなたは別かもしれないけど。それに、イリスの虹魔法は流石にmasterは無理でしょう」
「そうですね……。フルコンボとなるとまず不可能ですね」
「そうよね。じゃあ、イリスはその曲を詰めて、魔法の威力を上げておいて」
「わかりました」
ん? 曲を詰めるとその魔法の威力が向上するのか。ってことは、ライトニング・ボルテッシモとかも、all perfectすればかなり威力が出るのか。
「じゃあそんな感じで、明日までに準備しましょう。出発は7時。少し遠いからクエストの店員が送ってくれるわ」
テュケーの言葉で、各々立ち上がる。俺はコップの水を飲み干すと、カードを見て1つため息をついた。
はぁ……。こんなの返し切れるのかなぁ。
その後、イリスとプシケはprofessionalを詰めるために真ん中の道をまっすぐ進んで行った。実際、左の方でもprofessionalはプレイできるが、あの雰囲気にまだ慣れないらしく、し慣れているところですることにしたらしい。
俺はとりあえず、雷系統の魔法を探すことにした。
パッと見た感じ、あったのは3つ。1つはライトニング・ボルテッシモだが、残りはまだ、やったことのない曲だった。
「『雷霆』と『せいでんき☆ぱにっく』か。ってか後者の方はテュケーが最初に使ったやつだな……。これはする必要がないな」
というわけで、『雷霆』を選択する。ちなみに今回プレイしているのも、前回と同じく、あの筒状の何かを叩くタイプのやつだ。
この曲は、professional→masterでの難易度上昇が尋常じゃないらしい。まあ、professionalじゃやらないくらい難易度は低いのに、masterだと、見た感じ上位曲だもんな。
特徴的なのはBPM300でとんでくる16分音符90連だ。ただ、これに似たような感じの曲は現実世界にもあったし、それに比べてこれは最大コンボ数が810らしく、少ない。でもやっぱり全体的に密度が高いらしいから気をつけないとな。
難易度の選択をすると、画面が切り替わって曲が始まる。む。やっぱりBPM300は伊達じゃないな。かなり早い。
200コンボの声が流れる時、16分音符が交わり始めた。幸いにも、ここはそんなに長くない上に、すべて赤音符なのでなんとかなる。しかし、600コンボ付近のあの90連には絶句するしかなかった。前半は赤音符と青音符が4個ずつくる単純な複合だが、後半からいり混じる。流石に初見じゃ捌ききれないな。
『結果発表』
perfect 621
great 26
good 18
miss 45
うーん。複合を覚えないとなぁ。流石にあれは叩ききれないぞ。そんなことを思いながら、テュケーの方を見る。
テュケーはテクニック譜面が得意というだけあって、長複合も楽々叩き切っていた。さらにアレンジを入れるのもうまい。
まあ、とやかく言っている暇はないんだ。早くフルコンボしないと。
結局この曲に10チューンくらい使ってフルコンボした。あとは、ライトニング・ボルテッシモを詰めてall perfectを達成した。連打もかなり入れることができたので、よかった。ランキングも1位だ。
その後適当にめぼしい魔法をいくつかとって、残りはランク上げに費やした。