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たかが婚約破棄でした。~王子側~

作者: 火鈴桃
掲載日:2016/04/26

政務の一環として隣国へ。あちらから来ていた外交官が帰るのに着いて渡り、友好ぶりを適当にアピールするだけで良いので気楽なものだ。


外交官の娘を気に入った兄上に代われと言われたが、兄上の役目は反対隣の国のガチムチ野郎の相手だろう。代わる訳がない。そもそも兄上には既に婚約者がいるのだし。



そんなこんなで、隣国へ渡ること数日。



外交官の娘から面会を求められ、暇だったので会う。平和ボケ気味なこの国の中で、この娘の口の悪さは気に入っている。口は悪いが不敬ではないし、歯に衣着せぬという程度。


「殿下のお連れの中で一番見目の良い若い殿方を私の親友のエスコート役に貸して頂きたいのです」


なんじゃそりゃ。


詳しく聞けば、なるほど。とは思うが…はいそうですか、どうぞと気軽に貸しだす気にはならない。


しかし、この娘の親友とやらが少し気になった。なので「どんな女なのか」と聞いてみた。


「ディアニーナは…腹黒い割にお人好しで、普段は淡白で無欲なのに一旦執着すると非常に粘着質ですの。教養もありマナーは完璧で淑女らしい淑女ですが、マニアックな知識の収集が趣味で時に漢の中の漢とも呼ばれます。そうですね、後は…」


物凄い令嬢だな、見てみたい。


「あら、ではこの後でディアと会いますから殿下もこっそり柱の陰から覗かれます?」


柱の陰から限定なのか?まぁいい。




「エスコートは私が引き受ける」




そう宣言し、ついでに全力で意趣返しの手伝いを約束する。見返りに、外交官の娘からディアニーナの情報を入手。


ディアニーナの親たる伯爵にはごく秘密裏に接触して『娘を嫁にくれ』とお願いしてある。やや脅迫めいた圧力をかけた気もするが、別に問題ないだろう。


こちらの国の王族は『ぜひどうぞ』から『バカな侯爵息子と婚約破棄して良かったわねー』と、かなり好意的であり、この国は『政略結婚』とは見做してないことに驚いた。



意趣返しはこの国の王家主催の夜会の場を使う事に確定、念の為に王子に確認したが『やっちまえー』と王子にあるまじき緩さだが許可もおりた。


たかが伯爵令嬢の意趣返しに寛容だと思ったが、王子との非公式な会談中にその理由が判明。外交官の娘は王子の婚約者候補であり、王子とも恋仲なのだと。


候補、が外れないのはディアニーナの元婚約者の姉も婚約者候補に名を連ねており、その父親たる侯爵がゴリゴリゴリゴリ推してくるせいでうまく話がすすまない…ので『侯爵家ムカつく』からの『その息子ギャフン言わせるの応援する!』なのだと。



意趣返しの為の打ち合わせと称して、外交官の娘宅で非公式に茶会を開催させた。この国の王子と私、外交官の娘、ディアニーナの4人だけの茶会。


ディアニーナをディアと呼べる程、距離を詰めた。


残念なのはディアは私を『殿下』と呼ぶ。愛称で呼べと命令したが言葉巧みに却下された。手強い。


その茶会後から夜会までの二週間、この国の王子と外交官の娘を最大限に利用してディアと会う時間を確保。口説き倒してようやく、私を愛称で呼ばせる事に成功。


因みに、この国の王子も私に同行する名目で外交官の娘におおっぴらに会う口実が出来るので非常に協力的だった。…早く外交官の娘が婚約者候補から婚約者になると良いな。



「殿下に改めまして、深く御礼申し上げます」



夜会を翌々日に控えた昼下がり、外交官の娘と伯爵に心からのお礼を述べられる。意趣返しが成る前に珍妙な。


エメラルドの目を潤ませて曰わく、ディアがすっかり元のディアに戻った礼だという。

更に外交官の娘が言う通りならば、ディアも私に恋心を抱きつつある。それにより、ここ最近はより一層その美しさを増しておるそうな。


娘の婚約破棄で倒れて寝付いていた伯爵夫人が床上げした事にまで礼を言われては面映ゆい。



夜会で着飾ったディアは誰よりも美しかった。惚れた欲目かと思ったが、会場の男達が軒並み身惚れているのだからやはりディアが誰よりも美しいのだろう。



柱の陰から覗いた私が一目惚れするだけある。



その後の外交官の娘との会話を聞き、その何とも言えない性格にも惚れた。顔だけならば捨て置いたが、あの絶妙な性格の捻れ具合はたまらん。


夜会での意趣返しは成功。公衆の面前で恥を晒したディアの元婚約者とその恋人に対し、ディアはなんともサッパリとした清々しい顔だ。


夜会の後で伯爵家への結婚の申し込みの日取りを決め、明日には伯爵家に結婚の申し込みを行く。

明明後日には一時的に帰国。手回しの良いこの国の王子から我が王家には既に打診済み、話を早急に詰めれば今月中には婚約成立。



「…という動きになるだろう。大人しく待っていろよ、 ディア」


そう耳元で囁くと、身を捩って頬を染める。こういう女らしい反応も普通に可愛い。プロポーズも楽しみだ。


抱き締めたまま、ディアの背中をゆっくりと撫であげる。コルセットを必要としない鍛え上げられた身体。だがしかし、私の胸板に触れる豊かな感触は柔らかい。


背中を撫で降りた手は細めの腰から引き締まった臀部、そして。


「今日の獲物は鞭なのか。私の贈った暗器はどうした?」


「反対側にございますわ。私の利き手は右。使うならば右から。左は最後の切り札ですの」


クッ、可愛い奴め。………まどろっこしいな、よしこのまま明明後日の帰国に連れて行くか。





翌年にはめでたく成婚に至りましたとさ。めでたしめでたし

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