祈るばかりである。
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聖女の回復魔法が俺の劣化版な件について。連載中です。
「こ、これどうしよう……」
岩に潰されて絶命してしまっているドラゴンに思わず溜息をつく。
もしかしたらあのドラゴンは超雑魚だったりするのかもしれない……とか考えてみたがあの姿から察するに多分ゲームで言ったらボス級、良くても中ボス以上の実力はあったはずだ。
そんな敵が目の前で死んでいったという事実にまだ頭が追いついていない。
そもそもあのいきなり空に現れた巨石がなんだったのかも分からないのだ。
「……もしかして」
しかし、空から物が落ちてくるという事態そのものに身に覚えが無いとはいえない。
それは大きさは違えど、普段から経験していることに似ているような気がしなくもない。
「……俺がやった訳じゃない、よな……?」
別に今までだって、物が降ってきたりすることは俺の意思なんかでは決してなかった。
それらは本当に偶然に近くに落ちてきたもので、俺とは何の関係もない。
「…………はぁ」
しかしここでそのことを考えていても仕方がない。
ただ俺にできることと言ったら一刻も早く、スライムの待つ湖へと帰ることだけだ。
「……ん?」
分からないことを何時までも考えているのも意味がないと考えた俺は、早速湖へと戻ろうとする。
その時、ちょうどさっきまで俺が居たところからではドラゴンが陰になって見えない辺りに何か袋のような物が落ちていることに気がついた。
「? もしかしてドラゴンの秘宝とかか?」
しかし目的の袋の下へ近づくに連れて、俺の期待はどんどんと砕かれていく。
なぜならその袋は俺の手に収まる程度の大きさしかなかったのだ。
もっと大きい袋であれば金貨や宝石、ほかにも何か良さそうな物でもたくさん入っている可能性もあっただろうが、こんなに小さくては入れられるものも少ないだろう。
「うわ、軽っ」
持ってみても、本当に何か入っているのかと思ってしまうほど軽い。
諦め半分で、その袋を逆さまにしてみる。
―――ガチャガタギャタッッ!!
「……え?」
しかしそんな大きな音を立てて落ちてきたのは、その小袋からは考えられないような量の様々な類の金品。
見た限りでは宝石もあるし、金貨や銀貨っぽいものまである。
「ど、どういうことだ……?」
思わず自分の手に持つ小袋を穴が開くのではないかというほど凝視してしまう。
そこで恐る恐るその小袋の中に手を入れてみる。
するといとも簡単に俺の腕の肘あたりまでを飲み込んでしまった。
「……」
これ、もしかしなくても魔法の袋じゃん……。
日本にいた頃プレイしていたゲームなどでもこの手のアイテムにはお世話になったものだ。
「ということはやっぱり魔法とかもあるってことだよな……?」
男なら一度は憧れたことのあるだろうモノ―――――魔法。
手から炎を生み出し、空からは雷を落とす。
年が上がるにつれて次第にそんな夢も見なくなっていたが、それを今になって自分でも扱えるかもしれないという事実に俺は思わず興奮を隠せない。
「……あ、一応後から使えるかもしれないから、ちゃんと拾っとこう」
俺は暗くなって集めにくくなる前に急いで地面に落ちた金貨やらを袋につめる。
やはり慣れていないからか、明らかに袋自体の容量以上のものを入れていることに違和感を覚えてしまう。
「あ、これはナイフだから自分で持ってた方がいいか」
あらかた落ちたものを拾い終え、最後にナイフが落ちているのが目に入る。
だがナイフを袋に入れていても必要なときに間に合わない可能性を考え、俺は自分で持っていることにした。
「じゃあ、帰ろうかな……」
他に何かすることもない俺は、足元が見えなくなる前早めに帰る準備をする。
「…………」
ただやはりどうしても今では巨石に潰されたドラゴンが気になってしまう。
もしかしたらこのドラゴンは自分が異世界にやってきたりすることがなければ、もっと長く生きれていたのかもしれない。
そう考えてしまうと、本当はあの岩が自分とは何の関係もなかったとしても、どうしても罪悪感を感じずにはいられない。
きっと死んでしまったドラゴンはこのまま誰にも気付かれることなく、自然に還るのだろう。
「…………」
黙ってドラゴンに近づいた俺は、手に持っていたナイフをドラゴンの翼に突き立てる。
幸いにしてドラゴンの翼は岩に潰されることなく、綺麗なままだったのだ。
手の中のナイフはすんなりとドラゴンの鱗と鱗の間に刺さり、簡単に鱗を剥ぎ取ることができた。
「……よし、じゃあそろそろ本当に帰ろうかな」
俺はドラゴンの真っ赤な鱗を、魔法の袋の中に詰め込むのだった。
そして早速、湖に向けて来た道を戻ることにする。
「痛っ!」
その時、偶然か必然か、俺の頭に木の実が降ってきた。
俺は地面に落ちたソレを、今日集めた木の実の中に追加しようと手に取る。
その木の実は先ほどのドラゴンの鱗のように、真っ赤に染まっていた。
ただ、それが俺の血ではないことを祈るばかりである。




