絶対に守りぬく
ブクマ評価感謝ですm(_ _)m
あと一話エピローグだけ書きたいですねぇ
「お待たせしました、お姫様」
俺はリリカを腕の中に抱きかかえながらそんなことを呟いた。
多分どこか頭でも打っていたんだろう。
でなければ俺はこんな恥ずかしい台詞は言わないだろうし。
『グルルルルゥ……』
そんなことを考えていると、目の前のドラゴンがこちらに尻尾を振り下ろしてきた。
「うわっと」
既に身体のあちこちに擦り傷や切り傷がたくさんある。
シエルが言ったとおり正直立っているだけでも辛い。
それでも俺はなんとか転がるようにして尻尾を避ける。
「ど、どうしてきたんですか!?死にたいんですか!?」
「……うーん、どうしてって言われてもな、一応助けに来たつもりなんだけど」
「っ!」
リリカは俺の言葉にどうしてか顔を逸らす。
「うわっ!」
俺は続けて振り下ろされてきた尻尾を辛うじて避ける。
しかしこのまま何も有効な攻撃手段がなければどちらにしろ俺たちは生き残れない。
今更ドラゴンが逃がしてくれるとも考えにくい。
「っくぅ……痛えなぁ……」
やはりまだ先程の攻撃の痛みが残っており、地面や服に傷が擦れるたびに痛みが走る。
「リリカ、悪いけどララを頼んでいいか……?」
俺は腕の中で目を瞑っているリリカにそう頼む。
少し考えてみたがやはり、俺たちがドラゴンに何か攻撃できる手段などない。
恐らくはララの魔法も聞かないだろう。
だからといってこのまま三人ともドラゴンに殺されてしまうのはただの無駄死にである。
それならせめて二人には逃げてもらいたい。
そっちのほうが俺的にも全然嬉しいはずだ。
「なっ……そんなことできる訳がないでしょう!?」
「頼む!申し訳ないけど俺たちじゃドラゴンなんて倒せない!気絶してるララをリリカが遠くまで連れて行ってくれたら俺も逃げられるから!」
「……うぅ……っ……っ分かりました、でも死んだりしたら許しませんからねっ……」
俺は尻尾の攻撃の合間を見て、リリカを下ろす。
そしてリリカはララのもとへ向かったかと思うと、ドラゴンの隙を見て俺たちから離れて行った。
「……はぁ」
ようやく行ってくれたか。
さっきはリリカが逃げたら俺も逃げるなんて言ったけど、そんなことドラゴンは許してくれないだろう。
俺にできることと言えば、リリカたちが出来るだけ遠くに逃げられるまでの時間稼ぎをすることくらいだ。
「……はぁ」
きっと俺の命はもうすぐ消えてなくなってしまうのだろう。
知り合って間もないパーティーメンバーを助けたことによって、命を散らしてしまうのだろう。
けど、それも悪くないと思える。
まだ自分のことさえもちゃんと教えていないような仲だけど、それでも二人を助けるためにこの命が役に立ったと思えば、案外気持ちいいものだ。
もちろん死ぬことが怖くないと言えば、それは嘘になる。
死ぬのが怖くない人なんて恐らくだけどいないはずだ。
ただそれでも死ぬのが納得できるかできないかは、“満足”しているかしていないかの差ではないだろうか。
少なくとも俺は、この自分の死に様に満足している。
可愛い女の子を二人も助けられたのだ。
日本にいたころでは想像もできなかっただろうこのシチュエーションを体験できたのだから、それだけで俺にとっては十分である。
「……ハァ……ハァ……ッ……」
だから、ここにリリカがいたらダメなんだって。
「……逃げるんじゃなかったんですか?嘘、だったんですか?」
「…………」
そんなこと今更どうだっていいじゃないか。
どうして戻ってきたりしたんだ。
「安心してください、ララさんはちゃんと安全なところにいますから」
「…………」
そんなことを言っているんじゃない。
俺がせっかく時間を稼いだのに、どうして……。
「死ぬときは一緒ですよ?だって―――」
―――私たち、パーティーなんですから。
「―――ッ!!」
その言葉を聞いた瞬間、俺はまるで何かに殴られたかのような感覚に陥った。
どうして俺は今まで自分のことを秘密にしていたんだろうか、と。
こんなにも誠実な女の子に対して、自分は一体何をやっていたのだろうか、と。
「……ごめん」
「いえ、同じパーティーなんですから当たり前です」
「……ごめん」
もう既に身体には限界がやってきていて、ほとんど動かすこともできない。
次のドラゴンの一撃すら避けることはかなわないだろう。
そんな俺にはただ謝ることしかできない。
今までずっと、信頼しきっていなかったことに。
今までずっと、自分のことを黙っていたことに。
赦してもらいたいなんて言うつもりはない。
でも、それでも。
もし“次”があるならば二度と同じことは繰り返さない。
絶対に、だ。
絶対の絶対に、だ。
そこで初めて赦しを請おう。
今まで自分がしてきたことの全てを。
だからその“次”に居合わせるために―――
――――今ここで、君は、君だけは、絶対に守りぬくッッ!!
俺の身体はもう動かない。
それでも俺は全身全霊の決意をもって、目の前のドラゴンを睨みつける。
打つ手もない、絶体絶命のピンチ。
だから俺は最後の力を振り絞って呟いた。
“ 落ちろ ”
次の瞬間、俺の視界は真っ白な世界に包まれた。




