アぁ、タマらナイ。
ブクマ評価感謝です。
戦闘描写は嫌いです……
俺は、レベルアップをしていたのだろうか。
そして、物凄い力を身につけていたんじゃないか?
「どうしたんですか、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ何でもない」
しかしこれは今はまだ話さなくてもいいはずだ。
まだ俺のこれは個人の想像にすぎない。
本当に俺が思っているとおりのことだったら凄い事だが、ただの勘違いだった時は恥ずかしいだけだ。
「……じ、じゃあ俺は風呂に入ってくるから、先に寝てていいぞ」
「言われなくても待っていたりしませんよ、安心してください」
俺はもっと一人で考えたいと思い、風呂に逃げることにする。
異世界の風呂はどういう原理なのかさほど日本とかわらない。
日本にいたころのシャワーを思い出させるような出方でお湯がでてくるのだ。
まぁ今はそんなことはいい。
俺は一度、異世界に来てからの出来事を整理してみることにした。
まず、異世界に落ちた。
これがすべての始まりでもあり、俺の異世界ライフのスタートでもある。
次にスライムにあった。
スライムは最後まで俺から離れたくなさそうにしていたが、水がないところで生活できるかも分からなかったので仕方なく置いてきた。
今度時間が出来たときにでも見に行ってやるのもいいかもしれない。
そしてそれから特に何かあるわけでもなく数日が経って、ドラゴンにあった。
ドラゴンの口が近づいてきたときはさすがに死を覚悟したが、その時ドラゴンの真上に巨石が現れたわけだ。
いや、正確には現れたところを見ていたわけではないので、何とも言えないのだが……。
そして結果として巨石はドラゴンを押しつぶし、俺はこうして生きていられている。
ドラゴンの件も終わって、さすがに人が恋しくなった俺は人に会えるところを探して森を出た。
このとき、俺がゴブリンだと思っていたモンスターを小石で倒したのだ。
そして街についてから色々あって、今に至っている……。
「はぁ……」
思い返してみればこの数日間だけで相当な出来事に出くわしている。
ただその中で一つだけ気になることがある。
ドラゴンを押しつぶした巨石についてのことだ。
もし、あれが偶然でもなんでもなく俺がやったことだとしたら、リリカが教えてくれたヴァンプというモンスターを俺が小石一つで簡単に倒せたことの辻褄が合うのではないだろうか。
他にも考えてみれば、ララを軽々と持ち上げられたこともそれが原因だったのかもしれない。
もし、本当にドラゴンを押しつぶした巨石が、俺のやったことであれば、一体どれだけのレベルが上がったのだろう。
そもそも異世界人である俺にこの世界の法則が適応するかすらも分からないような状況だが、もし本当にレベルが上がっていたら俺のステータスも恐ろしいほどに上がっているはずだ。
ステータスプレートがあれば一発で解決したのだろうが、それを嘆いても仕方がない。
分からないなら、実験すればいいのだ。
「……よし」
俺は一人、風呂場で拳を握りしめていた。
「寝てる、よな……?」
俺は暗闇に包まれた部屋の中で、音を立てないように部屋の出口へと向かう。
これからやることは寝ている二人にはまだ教えていいかが分からない。
同じパーティーメンバーとして教えるべきなのかもしれないが、今じゃなくてもいいはずだ。
「……よし」
廊下にも誰もいないことを確認した俺は、音を立てないように目的の場所へと向かった。
「…………」
俺は今、街から出て少しだけ歩いたところにいる。
ここは今日俺たちがオークと戦ったところだ。
そして暗闇が支配する視界の先には―――オークがいる。
こちらに気付いた一匹の大きなオークが棍棒を構えて、ゆっくりと向かってきている。
―――――――ドクン。
きた。
俺が求めていたのはこれだ。
心臓がドクンドクンと脈打っているのが分かる。
まるで自分の心臓では無いかのように、はっきりと、一節一節を感じられる。
異世界の季節など知ったことではないが、頬を伝る風は冷たく心地よい。
――――タノしミタぃ。
俺の中の何かがそう呟いた気がした。
もはやここでやろうとしていた実験など忘れて、ただ目の前のオークを見つめていた。
―――――アぁ、タマらナイ。
―――――コのかイカンがタマラなイ。
―――――さァ、シあオウ?
気が付いたとき、俺はとてつもない虚無感と共に、オークの死体を見下ろしていた。
一体何時からオークと戦っていたのかなど最早覚えていない。
けれど俺は今しがた自分の身に起こったことを何一つとして不思議に感じていなかった。
ただ何とも言えない虚無感だけが、俺の胸の中に残っていただけだった。
「ってなにも確かめられてないじゃん!」
少ししてようやく冷静になってきた俺は、本来やろうとしていた実験をしていなかったことに気が付いた。
既にだんだんと日が昇り始めようとして来ているのか、少しずつ明るくなってきた。
これは急いで終わらせて帰らなければならない。
「……お、ちょうどいいところに」
どうやら一匹のオークがこちらに歩いてきている。
「……」
だがそこには既に先ほど感じたような胸の昂ぶりはなく、俺は淡々と事を進める。
「……っ」
ちょうど手のひら程度の石を拾い上げ、未だ遠く離れているオークめがけて投げつける。
日本で野球部でもなんでもなかった俺ではこんな距離投げても途中で落下してしまうのは当たり前だ。
しかし俺が前もって予想していた通り、その石はありえないほどの速さで真っ直ぐオークへと向かっていっている。
――――。
そしてオークに断末魔を上げる暇すら与えず、俺が投げた石はオークを粉々にした。
「やっぱりかぁ」
オークが粉々に弾け飛ぶことに若干の気持ち悪さだけを感じながら、俺は自分の予想が正しかったのだと理解した。
俺は、ドラゴンを倒して、強くなっている。




