その容姿はまさに豚
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「うーん、どれがいいかなぁ」
俺は目の前のクエストボードに対して、顎に手をやりながら考えている。
「私たちにできそうなのと言ったら……うーん難しいですね」
「さっさと決めてください。そしてお金を稼ぎましょう」
隣ではララたちも同じようにクエストボードと睨めっこしている。
「むぅ……」
しかし本当どれにしたらいいだろうか。
ゴブリンだと雑魚過ぎてお金もあまり入らないだろし、かと言って他のモンスターは危険な可能性だってあるはずだ。
「……ん、これは……」
何枚ものクエスト用紙を見ていたとき、ふと気になるモンスターの名前を見つけた。
それは『オーク』だ。
日本にいた頃していたゲームなどではゴブリンの次の敵と言ったら大体がこの『オーク』だった。
オークとは醜い豚の化物。
もちろん異世界だから違うかもしれないが、ここまでのゴブリンやスライムの前例を見てみても日本人の想像力は馬鹿にはできない。
「ララの魔法でこのオークって倒せる?」
「オーク、ですか?まぁ気絶していいなら倒せると思いますけど……」
「じゃあこれにするか」
唯一、比較的な安全かつ効果的な遠距離攻撃を持っているだろうララに任せてしまえば、俺だけでなく、リリカやララ本人も比較的安全なはずだ。
「決まったなら早くしてください。敵が逃げてしまいますよ」
「…………はぁ」
昨日の夜の可愛いリリカはどこへ行ってしまったのだろう。
もしかしたら幻だったのかもしれないと、俺は思わずため息を吐いたのだった。
「やっぱ日本人の想像力舐めたらいけないわ」
「何ですかいきなり」
俺たちの視線の先には所謂『オーク』というモンスターがいる。
その容姿はまさに豚の化物であり、完璧に俺が想像していた通りだった。
「じゃあもう少し近づいてから魔法を撃ってくれ」
「はい、了解ですっ!」
元気よく返事するララに従い、俺たちはゆっくりとオークに近づいていく。
「……っ」
そろそろ魔法も届くのではないかという距離にやってきたところで、オークは嗅覚が鋭いのか鼻をヒクヒクさせたかと思うと、俺たちの方へその顔を向けてきた。
「ララ魔法を頼む!」
予想していなかった事態に俺は慌ててララに叫ぶ。
「……………」
返事する間も惜しいと、ララは詠唱を始めた。
……えっ?ち、ちょっと詠唱長くない?
オークは既に俺たちのすぐ近くまでやってきているのに、ララの魔法の詠唱は一向に終わる気配を見せない。
「しょうがないですね、私が行きましょう」
「おお!」
ここで、俺たちのパーティーの壁役である幼女リリカが前に出る。
因みにリリカは今鉄鎧を着ていない。
何でもあれはギルドの廃材置き場のところにあった奴を、幼女であることを誤魔化すために借りていただけのようだ。
ところで今更だが生身の人間が、それも幼女が敵の攻撃を受けることが本当にできるのだろうか。
「……っ……」
しかしそれはどうやら杞憂だったようで、リリカはオークの振り下ろしてきた棍棒を両腕でがっちりと受け止めた。
「うわぁ……」
思わず感嘆の声が溢れる。
俺には絶対あんなことをできる耐久力も、そもそもの度胸がない。
一体どんなことをしたらあんな幼女がそんな度胸を身につけることができるのだろうか。
「……全てを燃やし尽くさん絶熱の業火」
「……っ!リリカ!もういいぞ!!」
ララの詠唱が終わりそうな雰囲気を感じた俺は、未だにオークの攻撃を引きつけているリリカに大声で伝える。
「やっとですか、遅いですね!」
愚痴を垂れながらもリリカはオークの大振りの一撃を避けると、すぐさまその場から離れる。
次の瞬間、ララがその手を前に突き出した。
「――――――フレイムバーストッッ!!!」
視界が炎に覆われた
「……っ」
風に煽られた熱風に、思わず目を背ける。
……少ししてようやく熱が収まってきた。
「…………」
確認するまでもなく、オークは跡形もなく燃え尽きていた。
まさかここまでの高威力の魔法だとは正直思わなかった俺は、ララの魔力を思い出す。
魔力―――380、というのはやはり恐ろしいものだったわけだ。
ただ魔値が低いのが難点だが……。
「魔法って凄いんですね、驚きました」
「あぁ、本当にすごいな……。リリカも凄かったけどな」
幼女が化物の攻撃を耐えたり、女の子が辺りを燃やし尽くす炎を生み出す。
今日一日で異世界の凄さを垣間見た気がする。
「それじゃあ帰ろうか」
俺は魔法を使って気絶しているのに、どこか清々しい顔のララを背負いに向かいながら、そう呟いた。
「はい、クエスト完了確認致しました」
リリカは受付でクエスト完了を行っている。
何でもステータスプレートの仕組みやらで倒したモンスターの確認ができるらしい。
もちろんパーティーであれば全員に反映されるとか。
普通は一応のリーダーである俺が行くべきなのだろうが生憎俺はステータスプレートを持っていない。
だから俺は大人しく気絶したままのララを背負いながらギルドの入り口でリリカを待っているわけだ。
「あ、やっぱ回復薬買わないといけないな……」
俺は遠くに居るリリカの腕に小さな痣が出来ていることに気づいた。
恐らくオークの攻撃を受けていたからだろう。
その内防具も揃えてやらねば、と思っているところでリリカが帰ってきたので、俺たちは宿屋への帰路についたのだった。
後日、一人だけ無傷なのに対しパーティーの女の子たちが揃って怪我や気絶しているという噂が広まり、俺の評判が“落ちた”のはまた別の話。




