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1-25. 協会通達/観測ドローン正式採用

 協会・本部会議室。

 

 長机。

 

 資料投影。

 

 室内は静かだった。

 

 

 モニターに映る。

 

 林の俯瞰映像。

 

 逃げ遅れた男性。

 

 妖魔三体。

 

 魔法少女の侵入ルート。

 

 そして――上空からの観測ログ。

 

 

 映像停止。

 

 沈黙。

 

 

 技術部が資料を確認する。

 

「現場到達前に敵配置把握済み」

 

 

 別の席。

 

 「侵入前に撤退経路確保」

 

 

 さらに。

 

 「負傷率、想定比三割減」

 

 

 ページがめくられる。

 

 「戦闘時間短縮」

 

 「救護判断高速化」

 

 「後方指示誤差、ほぼゼロ」

 

 

 小さく誰かが言う。

 

 「……戦術前提が変わるな」

 

 

 否定は出なかった。

 

 

 本部長が視線を動かす。

 

 「提出元」

 

 

 職員が答える。

 

 「第三ラボ」

 

 

 主任が短く頷く。

 

 「試験運用は完了。現場評価も提出済みです」

 

 

 資料が次へ進む。

 

 構造図。

 

 重量。

 

 通信仕様。

 

 既存端末連動確認。

 

 

 技術部。

 

 「量産可能」

 

 「整備容易」

 

 「教育不要」

 

 

 本部長。

 

 一秒。

 

 「採用」

 

 

 即断だった。

 

 

 「正式名称」

 

 「先行観測ドローン」

 

 

 主任が言う。

 

 「現場呼称は“観測機”で統一します」

 

 「了承」

 

 

 決定。

 

 

 本部長が続ける。

 

 「全国支部へ通達」

 

 「全ラボ設計共有」

 

 「量産体制移行」

 

 「都市防衛線優先配備」

 

 

 短い言葉だけで、全てが決まる。

 

 止まらない。

 

 

 最後に。

 

 本部長が静かに言った。

 

 「これは――」

 

 一拍。

 

 「魔法少女の死亡率を下げる装備だ」

 

 

 誰も動かなかった。

 

 全員が理解している。

 

 

 さらに。

 

 「妖魔対応体制を、一段引き上げる」

 

 

 ここで初めて、数名が静かに頷いた。

 

 

 大きな拍手も、歓声もない。

 

 

 ただ――決まった。

 

 

 世界の防衛線が、静かに一段前へ出た。

 

 

 

 同時刻。

 

 第三ラボ。

 

 

 綾芽は机で設計図を見ていた。

 

 

 端末が鳴る。

 

 《協会通達》

 

 

 開く。

 

 

 【観測ドローン正式採用】

 

 

 止まる。

 

 

 【全国量産開始】

 

 

 「……え」

 

 

 さらに。

 

 【追加改良要請あり】

 

 

 沈黙。

 

 

 それから、小さく息を吐く。

 

 「……仕事増えた」

 

 

 でも。

 

 口元が、ほんの少しだけ上がる。

 

 

 窓の外を見る。

 

 遠い空。

 

 

 (届いた)

 

 

 本当に、少しだけ。

 

 守れる距離が広がった。

 

 

 ……でも。

 

 

 上空観測があるなら。

 

 “もっと早く届く手段”も作れるな。

 

 

 そこまで考えて、手を止める。

 

 「……いや、今はやめとこう」

 

 

 

 第三ラボの灯りは、今日も静かに点いていた。

 

 

 なお、設計者はとっくに帰されている。

 

 ――未成年だからだ。

 


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