1-22. 新規開発/先行観測ドローン(試作)
綾芽ラボ。
机の上に、小型の機体が置かれている。
四枚ローター。
黒基調。
無駄な装飾はない。
俺は腕を組んだ。
「……よし」
魔法少女端末の次。
次に必要なのは――
現場を見る目だ。
魔法少女は強い。
でも、万能じゃない。
現場に入るまで状況が分からない。
敵の数。
地形。
負傷者。
逃げ遅れ。
全部、到着してから判断している。
それは――遅い。
「なら、先に見ればいい」
発想は単純だった。
競技用ドローン。
レース撮影用の高速機。
あれを参考に、新規設計すればいい。
最初は多機能にする予定だった。
救助誘導。
照明。
通信補助。
センサー増設。
……だが。
重量オーバーで飛ばなかった。
「無理なものは無理」
割り切る。
今回は多機能化を捨てる。
優先するのは三つ。
機体強度。
速度。
バッテリー持続時間。
役割は絞る。
見るだけでいい。
それだけで価値がある。
端末を操作する。
魔法少女端末と連動。
変身を検知すると――自動起動。
対象を追跡。
リアルタイム映像送信。
危険動作を検知したら警告。
さらに。
通報座標へ先行出動。
現場を事前確認。
敵規模を推定。
それを協会に送信。
「これで派遣判断が早くなる」
魔法少女は有限だ。
強さも違う。
適当に送るのが一番危ない。
なら。
先に情報を取ればいい。
小さく息を吐く。
「……とりあえず」
机の上の機体を持ち上げる。
「試作ドローン一号」
一台だけ。
量産前提じゃない。
まず動けばいい。
端末を起動。
「音声入力確認」
機体が静かに反応する。
《待機中》
「追跡モード」
《登録端末なし》
正常。
問題なし。
ケースに入れる。
「主任に報告だな」
許可を取らないと運用できない。
……いや。
報告しないと後で怒られる。
そっちの方が大きい。
ラボの扉を開ける。
廊下に出る。
ケースを抱えながら思う。
「今回は、普通の開発だし」
たぶん怒られない。
……たぶん。
――その予想が甘いことを、
このときの俺は、まだ知らない。




