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1-0. プロローグ
山間部は燃えていた。
施設の外壁は崩れ、煙と魔力の残滓が空を歪めている。
地面には、倒れた魔法少女たち。
血。
破片。
静まらない妖魔の咆哮。
《上位種、三体確認》
「生存反応は」
《交戦中、残り四名》
見えた。
結界を張る少女。
前線で踏み止まる剣。
指示を飛ばす声。
そして――後方で支援する一人。
次の瞬間。
横合いから、上位妖魔。
弾かれる。
崩れる。
支援の少女の頭から、血が落ちた。
動かない。
世界が、止まる。
「レイ」
《待機中》
「シールド最大」
《展開》
「突っ込む」
一拍。
《衝突軌道、確定》
「――行け!!」
魔導シールドが機体を包む。
一直線。
妖魔群へ。
衝撃。
爆音。
土煙。
横転した機体。
それでも少年は扉を蹴り開け、倒れた少女のもとへ走る。
「……生きてる」
微かな呼吸。
手を握る。
強く。
震えない声で言った。
「……次は、遅れない」
夕焼けの中、横転した救援機が静かに軋む。
それは、戦うための機体じゃない。
――間に合うための機体だった。
これは、まだ。
彼が“最前線に立つ”ずっと前の話。




