End.『解剖が尽きない夜』
画面の白が、少しずつ濁っていく。
文字が画面を侵食していくほど、私は落ち着いていった。
落ち着くほど、吐き気がする。
私はもう、何を感じているのか分からないわけじゃない。
分からないふりをする方法を、知りすぎただけだと思う。
遠くにする。
罰する。
無効にする。
黙らせる。
裁く。
笑って沈める。
それぞれは、私の身体に溶け、呼吸をしている。
息をするたびに、誰かの言葉が沈む。
息をするたびに、私の中の何かが生き残る。
名前をつければ終わるのかもしれない。
そう思って、何度も言葉の候補を検索した。
罪悪感。優越。保身。冷淡。支配。
どれも違う。
でも、もう、どれでもいい気もする。
結局、私は何も選ばない。
選ばないことで、私はまた自分を守れる。
ここまで来てもなお、私は自分が可愛いのだ。
髪はまだ湿っている。
素足から伝わるフローリングの床は冷たい。
月明かりは、雲に隠れてさっきよりも薄くなっている。
私は今日の解剖結果を保存しない。
保存しないのに消さない。
ラップトップを閉じるだけ。
閉じたら、なかったことになる気がする。
でも、知っている。なかったことにはならない。
明日もきっと、同じ画面を開く。
同じ感情を掘り起こす。
同じように、分からないふりをして、分かったことにする。
解剖は終わらない。
感情が名前を拒んでいるのではない。
私が終わらせないだけだ。
夜がさらに深く沈む。私が終わらせない限り。
解剖メモ:私は理解したいのではなく、終わらせたい。




