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ならもう俺が魔法少女になるしかなくね?  作者: 魚缶
第一章∶魔法少女の宿命ってやつ?
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《今日の天気は雨模様》

 剣と化した四肢を振るい、真空の刃がビルの中を舞う。

 真空が轟音とともに着弾すると、ビルの壁に大きな切り裂き跡が生まれ、その一撃がどれほど痛烈なものかを物語っていた。


 俺はそんな化け物と化し、飛び回りながら戦う奴を相手に逃げ回りながら回避を続けていた。


 まるで赤子が刃物を振り回すかのように、乱雑にその両手両足を引きずり回すせいで動きが読めず、能力を使用しても見切れることができないでいた。



「あの野郎……無茶苦茶だッ……!」



 知能の低下とでも呼ぶべきか。

 それによって今までの理性的な攻撃から一転、野生そのものとも言える攻撃に俺は翻弄され続けている。


 隙が生まれた──と接近すれば、到底人とは思えない動きから攻撃が放たれ、逆にこちらが攻撃を受けてしまう。


 防戦どころの話ではない。


 あの真空の刃も相当のものだ。

 当たればどうなるか……想像に難くない。


 と言うわけで。

 今の俺は奴の視界から外れ、壁に寄りかかりながら隠れている。


 たまに身を乗り出して様子を見ているが、暴れ続けていて真空の刃が飛んでくるため非常に危ない。



「栞のせい、か……」



 俺は溜息を吐きながらさっきの光景を思い返す。

 奴は、簡単に使うなと言われている、と言った上で、エリカの名を出しながら、それを胸元に差し込んだ。


 そうしたら『アレ』だ。


 歪かつ異常。

 手足はもう完全に歪な剣に置き換わり、首から下は完全に黒化。

 さっきまで黄色かった髪の先端は鋼のような鈍い白へ。

 そしてなにより、もう()()()()()()()()()


 時折、刃のような歯がむき出しになるだけで、人と呼ぶことは到底できない存在と化していた。


 悍ましい、なんて言葉で収まるものではない。



「アレと戦うのは流石にキツイだろ……」



 しかしあのまま放置しておけるものではない。


 あんなモノ放置してたら間違いなくヤバいことになるだろうし、あんな栞を渡したエリカを俺は許せない。


 なにより──見捨てていけるわけがない、例えエリカの手が及んでいたとしても、彼女も人だったのだから。



「──とは考えたが、さて……どうしたもんかな」



 俺は先ほど投げられ、散らばっていたナイフを一本拾う。


 鋭く尖ったナイフ、だがこれそのものに力は無さそうだ。

 俺も奴の奴のように真空刃を飛ばせれば、と思ったのだが。


 これを投げれば気は逸らせる……? だが近づいたところで、奴の剣にたたっ斬られるのがオチだ。

 可動域を人間と同等として考えれば、それは死への一歩。


 しかし──



「……考えたところで、こんな場所じゃ思いつくはずもねぇか」



 深呼吸をした俺は、考えても無駄とばかりに立ち上がる。

《武装》、そう称するに相応しい姿となった奴を見て、俺はナイフを逆手に構えながら奴を見つめた。



「ォ、グ──ッ、ぅ、オォッ──、!」

「ああクソッ、止めてやるよッ……!」



 地面を蹴って暴れ続ける奴に向けて走り出す。

 奴は俺の走り出した音を聞いて、顔をこちらに向けると仁王立ちで立ちはだかる。


 そして両腕をバツ印に振り下ろすと、二本の真空の刃をこちらに向けて飛ばしてきた。


 無論、勢いよく飛び上がりそれを回避するが、追撃と言わんばかりに幾つもの真空を、俺の方に飛ばしてくる。


 俺は体を捻りながら回避しつつ、天井を蹴って勢いよく地面に着地、横に跳んでは更に走り出す。


 散々考えた俺の作戦は単純。

 奴が動き回ると言うのならば、こちらも動き回るまで。


 とにかく動いて、奴の死角と隙を付く。

 見えないところからの攻撃ならば奴も反撃し切れまい、し切れないで欲しい。



「視界外から──ならば、こうだッ!」



 奴の周りをぐるりと走り続ける。

 だが途中、瓦礫の後ろに飛び込むと、奴から距離を取りつつ180°の方向転換。

 音一つ立てずに向きを変えて、姿勢を低く再度走り出す。


 案の定、知性を失いつつある奴は俺のいる方と反対方向に目を向けたままだった。


 そうして完全に奴の後ろへ行くと、奴の視界が完全に前方へ向いていていることを確認し、急停止から奴の背面に向けて走り出す。


 奴の乱雑な動きによって、俺の足音は掻き消されていることもあってか、後ろへ振り向く気配もない。


 これならば──




 だが。

 そう簡単に行くならば戦いなんてとっくにとうに終わっている。


 突如、奴はその背を折り曲げて上半身をこちらに向けた。

 そして両腕を振るうと真空刃をこちらに飛ばして来る。


 咄嗟に俺は落ちていた瓦礫に勢いよく踏み込むと、弾かれたように上がった瓦礫を蹴飛ばして真空刃にぶつけて掻き消す。


 しかし奴は上半身をこちらに向けたまま()()()()()と、上半身を起こして足を前に向けたまま、蹴飛ばされた瓦礫を踏み込んで一刀両断。


 そしてその踏み込んだ姿勢から走り出す。


 俺は追撃とばかりにナイフを投擲し、奴が弾こうとした瞬間を狙って殴りにかかる、フリをして股下をくぐると奴の背中に飛びつこうとした。


 だが奴は腕を振り回し背面に向けて攻撃をする。


 俺は宙で体を反らしなんとか回避し、背面に向けて蹴りを加えるが──



「動か、ねぇッ……!?」



 びくともしない身体に少しビビりながらも、その背中を蹴って距離を取ると同時に、地面に落ちていたナイフを数本拾って投擲を繰り返す。


 そして瓦礫を一つ拾い上げると、投擲したナイフに対して構える奴へ向けて走り出した。


 奴はその両腕を構え直すと、走り出した俺に向けて幾つもの真空刃を飛ばすが、俺が瓦礫を投げたことにより瓦礫と衝突。


 散り散りになった瓦礫と引き換えに、真空刃は消滅してしまった。


 奴は俺が真空刃に当たらやかったことを視認すると、すぐさまその身体を乱雑に動かして、俺の身体を切り刻むべく両腕を振るった。


 が、俺は倒れるように極限まで身を屈め、一瞬だけ俺を見失った奴の顎に向けて一撃を叩き込むフリをして、瓦礫を投擲。


 顎に当たった瓦礫により仰け反った奴の腹に一撃をぶち撒ける。


 だが、やはり足が動かない。


 突き刺しただけでは説明がつかないぐらいにはびくともしない。



「一体、どうなって──」



 そこで、俺は気づいた。


 奴が口を開いて何かを呟いていることに。

 それは先ほどのうめき声や、意味のない呟きとは違う。

 明らかに何か──



「はな、れろッ! ()()()()()!」



 影の急かすような声にハッとして、俺は急いで距離を取る。


 だが、一手遅かった。



「『武戦魔装(ウェポン・キーパー)』、《鏃の雨模様(アロー・レイン)》」



 静まり返る空間。


 俺は奴から注意をそらすことなく周囲へと視線を向けるが、何かが起きた様子はない。


 不発──その考えが頭をよぎるが、あんな姿になった魔法少女がそんなことになるのか、と。

 それに影があそこまで急かすような声で言った以上、危険なもののはず──


 ふと、頭上から何かの音が聞こえた。

 いや……()()()()()()


 先ほどの矢によって空いた穴から、()()()見えた。


 無限にも等しい()()振り注ぐ、その景色が。



「ま、まさか……さっき撃った矢か!? このために!? ッざけんなッ!!」



 俺はアレを生み出した張本人を見るが、奴は身動き一つ取らなくなってしまった。


 次に周囲へと視線を向け、アレから逃げる方法を考えるが、ここらへん周囲一帯を覆い尽くさんと言わんばかりの数に逃げるのも不可能だと直感。



「……マジかよ」



 俺は穴から見える空を見つめたまま、呆然としてしまったのだった。

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