一章:魔法使い、森を進む。
地の文は基本的に10進数で表記してます。
8進数設定頭がこんがらがりますね??
この領域、まさかの8進数だった事に衝撃を受けた昼下がり。伝言を頼んでくれた、昔々の勇者だった少女に感謝だ。
数字は日常の様々な場面に出てくる。時間しかり、お金しかり、個数を数えるのだってそうだ。8進数だった事を教えてもらっていなかったら、どこかしらで大混乱していた事だろう。場合によっては、トゥエラに報酬として提示した魔石の数の話で混乱していただろう。ただでさえ色々と絶句させてしまっているのに。
異世界の常識は、学ぶきっかけがないとなかなか習得が難しい。今回の8進数のように、想定外から思いもよらなかった常識がやってくることもある。トゥエラ達にしっかり学ばないとなぁ、と思いつつ。
すぱん、と、〈魔猪豚〉と呼ばれている、人よりも大きな猪と豚の中間のような顔の、牙の生えた魔獣の首を一閃で切り捨てた。ぽん、ととぶ獣の首。遅れて、首のない身体がずしんと大地に横たわり、断面から血がぶしゃりと、大地に溢れて。さっくり収納収納。やや離れたところに落ちた頭も忘れずに回収して収納。軽く刀を振って汚れを払い、鞘に収める。そして刀も収納。
「…今向かっている村でこの魔獣の燻製肉作れないかな…。」
前狩った時に作ったベーコンおいしかったです。
うーん、ペペロンチーノ食べたい。
「ミルキィ…?感想そこ…?」
「…切り上げで首吹っ飛ばした…?アトラ、出来る?」
「無理無理無理無理無理!おれの剣じゃ振り下ろしても骨が切れねぇっ。」
これはうっかり。
若干周囲を引かせてしまった。最近うっかりがちょこちょこあるような気はするが、気にしない事にする。
「皆さん、結構どころか、かなり戦えるんですね…?確かに報酬でもらった魔石も駆け出しの冒険者では狩れない強さの魔獣のものもありましたけど…。」
「これは誤算。」
トゥエラがまた頭を抱えそうな気配がする。
移動中だから雰囲気だけだが。頭を抱えていたら危険ですよ?
「俺も含めて、全員それなりには戦えるからね。でもまさか、この森でここまでの大物に出会えるとは思ってなかったなぁ…。元々、こんな巨大な魔獣も生息していたのかな?」
「聞いた事ないなぁ…あーんなでっかいのでてきたら、間違いなく話題になるのにー。」
以前狩った〈魔猪豚〉はバイクぐらいの大きさだったのだが、今回ミルキィが首狩りした〈魔猪豚〉は軽自動車ぐらいは背丈も横幅もあった。
駆け出しの冒険者どころか、駆け出しを卒業した冒険者パーティーでも危機に陥るレベルのヤバい個体である。
「ミルキィさんや、ミルキィさんや。」
会話しながら〈探索〉を発動し続けているキュウヤが、ふっと遠くを見て。
「まだ戦い足りない?」
うら若い女子に向かって言うには、幾ばくか斜め上に逸れた疑問。
しかしその言葉にミルキィは満面の笑みを浮かべて頷いた。
そしてキュウヤはす、と、進行方向とは少し右にされた方向を指差し。告げる。
「それならここから2時方向、駆け足5分接敵想定。推定魔獣〈砂丸亀〉および〈砂哭蛇〉、10以上の混成集団。周辺に同一種の混成集団と思われる反応あり。毒持ちの蛇がいるから確実に殲滅を。…いけるね?」
「まっかせてよ!」
「合流はできるね?それじゃ、いってらっしゃい。」
キュウヤが軽く手を振ると。ぽーん、と。了承を告げてミルキィが次の獲物に向けて走り出す。
あっという間に、その姿は見えなくなって。
「それじゃ、ミルキィも〈探索〉持ちだし、後で合流できるから、先を急ごうか。」
キュウヤの方針に、目を丸くした〈森の輪〉の面々が彼を見る。色々と疑問が彼らの胸の内を駆け巡っているのだろう。
一方、旅行者組は気にした様子はなく。
「…村の近くに推定ダンジョン産の魔獣がいるのも問題ですし、毒を持っている蛇がいるのも問題ですわね。」
「ここから大凡三時間程度の距離なのだろう?それなら殲滅せねば危険だな。」
アヤナとフォードが淡々と告げ、シルトは大丈夫なのだよー、と〈森の輪〉の面々の肩を軽く叩く。
「ミルキィ、ああ見えて血の気も多い事あるし、戦闘能力高いのだ。一人でも何の問題もないのだ。」
「毒持ちの蛇を相手にするなら、下手に奇襲リスクのある混戦状態にするよりも一人で一刀両断していく方が楽だしねぇ。結論、ミルキィ放牧すればどうにかなるでしょ。」
シルトの言葉の後を引き継いで、スノゥは〈森の輪〉の面々に説明を続ける。
「でもほんっと、毒持ち魔獣がいるってのが問題よね。トゥエラ、この辺りに元々毒持ち生物っていた?」
「魔獣、動物問わず毒蛇ならいますが、滅多に遭遇しませんね。」
「ふーむ、それならある程度は対処はできるとみた。でもやっぱ特化解毒薬はあるとお守りにはなるよねぇ。」
トゥエラの言葉にふむん、とスノゥは腕を組みながら、考える。
「シルト、育成した薬草で解毒薬に使えそうな種類は?」
「2種だなー。採取したのも含めていいなら5種になるけど、そんなに量ないのだ。」
「それなら、シルトとフォードで薬草系限定の〈探索〉起動してよ。もうちょっと採取できるなら収穫しておきたい。」
「俺としても賛成かな。二人とも、任せたよ。」
スノゥの提案に〈探索〉を起動し続けているキュウヤも同意する。そっちまでは手が回らないかな、と苦笑い。
話を聞いていたアトラが首を傾げて、質問なんだけどさ、と、声を上げた。
「何でそこまでするんだ?村にも解毒薬はあるんだぜ?」
「すっごく簡単に言っちゃうと、〈砂哭蛇〉がダンジョン由来の魔獣の可能性が高くて、それならダンジョン攻略する時にも解毒薬いるよね?って話。森で集団行動してるなら、遭遇して毒を受けるリスクも高い。」
それに、とアトラを見上げながら、スノゥは続ける。
「どの薬草が〈砂哭蛇〉の毒に対抗する解毒薬の材料になるかわからない。どれだけ使うかも不明。そんなわけで追加の採取も重要になってくるわけ。…うーん、冒険者ギルドで話さないといけない事増えていってない?」
そんなスノゥの言葉に、トゥエラが頭を抱えたくなっていた。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




