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一章:魔法使い、付与剣修復の見学、の前に。

多分これで、魔剣修復に必要な情報は出揃っただろ、とキュウヤが呟きながら立ち上がって。

キュウヤは桶を一つ手に取り、ヘルロット達の視線を切るように背を向けて。火の属性変換をしたマナで溶かしたトロパ鉱から、さくっとマナを回収。ころり、とトロパ鉱が固体になったところでさくっと〈収納〉。くるり、とその場で再び振り返ってもう一つの桶も〈収納〉した。この間、にこにこと微笑みは忘れない。

キュウヤさん…?と行動を疑問に思ったのだろうトゥエラが名前を呼ぶが、微笑むだけで言葉を口にせずに誤魔化していた。


「多分ー、わたしたちが見たらぎゃーってなるような事してたんだろうしー、気にしないほうがいいと思うー。」

「言われると確かに…。予告されたら身構えますしね、言われないところでしてもらえるのはありがたい…?」


ヘルロットの推論に、トゥエラも納得した様子。

まぁ、確かにこの領域からすると見たことの無い技術ではあると思う。要は物質からマナを抜く技術なのだが、前提条件としてマナ操作が出来ることが必須である。アビリティを極めたり、付与を極めたりしたら使えるようになるかもしれない。マナの属性変換よりは難易度低いと思うので、もしかしたら、ヘルロットやトゥエラあたりは習得できるかもしれないね?

では、マナを抜く技術は何に必要かというと。今回のように何かしらに付与したマナを回収し、素材を再び使えるようにしたり。付与やエンチャントをなくしたり。マナで動く機械の動力源を破壊したり。魔法による妨害を崩したり。ある物質からマナを回収して、他のものに付与し直すことだって出来る。幾分か使い手の想像次第で出来ることが変わる節はあるのだが、出来たら色々便利ではあるのだ。

ヘルロット的には、魔道具の核に加工するのに失敗したらマナを抜いてトロパ鉱を再利用可能な状態にできるのは、楽になるんではなかろうかと思う。研究所に送る際の送料、それなりにかかりそうだしね。

キュウヤが桶を〈収納〉した事で、応接室での諸々が終わったという雰囲気へと変わり、よっこらせっと、と声を上げながらテオラルテがソファーから立ち上がる。


「これで魔道具の核に関する見学やら実験やらは大体終わったな。

それなら、次は実際に付与剣の修復をしてみるとするかな。ヘルロット、トロパ鉱入りの桶を持って移動できるか?」

「だいじょーぶだいじょーぶ、多分転ばないー?」

「そこは自信持て?」


テオラルテからの声掛けに、首を傾けて、テオラルテから視線を逸らしながら、若干自信がなさそうにヘルロットが答える。

いるよね、液体系持つとこぼさない自信がない人。これは、転ばないのとはまた別方面ではあるが。というか、ヘルロットは中身入りの桶を持つと転ばない自信がないのか。

転ぶ、とルビナがぽつりと呟いて、疑問をさらに呟いた。


「…液体化したトロパ鉱って、こぼしたらどうやって拭くの?」

「雑巾には染み込んでいかねぇよなぁ、流石に金属だもんなぁ。」


素朴な疑問に、アトラも首を傾げる。

仮に雑巾に染み込んだとて、その雑巾自体をどうやって処理するのか。布が高いのに、使い捨ては勿体無いだろう。値段的な意味で。


「えーとねー、万が一液体化したトロパ鉱をこぼしたらねー、金属の板持ってきてねー、押すのー。」

「金属の板で、押す…?」


ヘルロットが対処法を説明し始めるが、いきなり金属の板が登場してきて、ルビナの表情が固まった。

そして未知の概念に遭遇した、という表情に変わっていく。いわゆるチベットスナギツネ顔である。この領域にも似たような表情の動物いないかな。

聞き手がそんな表情に変わっていても変わる事なく、ゆるっとヘルロットは説明を続けていく。


「そうー。金属の板で押してー、散らばった液体状のトロパ鉱の粒を集めるのねー。」

「隙間に入ってたら…?」

「板を突っ込んで掻き出すよー。」

「…液体を?」

「液体状だねー。」


それで出てくるのか、液体状のトロパ鉱。衝撃の真実に遭遇して、表情の固まる〈森の輪〉に対して、テオラルテがそんな事もあったな、という感じです遠い目をしている。もしかしなくても実話なのだろうか、今ヘルロットが話している対処法は。


「でー、集まったらー、掬って器に戻すのー。」

「どうやって…?」

「匙で掬ったりー、こう、2枚の板で挟んだりしてー?

ちょっとだけなら、そのうちトロパ鉱に込めたマナが抜けて塊に戻るからー、それを拾うよー。」


表情が固まった〈森の輪〉と対照的に、普段通りの表情で説明を続けるヘルロットである。

回路に使う前のトロパ鉱なら、マナが自然に抜けていくんだ…と知れたのは良いのだが。そもそも板2枚で液体を挟むのは難しくないだろうか。液体が抜けていきそうなのだが。


「…万が一こぼれたらいけませんから、今回は〈収納〉して持っていきましょうそうしましょう。」

「よろしく頼む。」


気が付いたら、クロムがテオラルテと液体状のトロパ鉱入りの桶の運搬方法を決めていた。

読了ありがとうございます!

また次話お会いできると嬉しいですっ。

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