一章:魔法使い、属性変換実験の結果。
「実験用の線、書いたよ。」
〈歩行樹〉の木材の上に、ひかれた2本の液体状のトロパ鉱の線。
回路として成立していないため硬化していないものの、しっかりとマナの込められた液体状のトロパ鉱で描かれた線はちょっとやそっとの事で線が滲む事はないだろう。
キュウヤから見て木材の上側の方に描かれたのが、途中で込めるマナを火属性に変えたもの。木材の下側に込めたものが、トロパ鉱を普通にマナを込めて溶かしたものと、火属性のマナを込めて溶かしたもの2種類を使用して線を描いた方になる。
見て感知する限り、2種類の液体化したトロパ鉱を用いた方の線は、途中で切れ目が入っているようになってしまっている。更に、切れ目が入っているようになっている部分で、何も変化させてないマナと火属性に変換したマナが混じり合ってしまっている。マナを固着化していない影響か、今もじわりじわりと互いに侵食しあっており、このままだと最終的には完全に混ざり合ってしまうのではなかろうか。
途中で線を書く時に込めるマナを火属性のものに変えた方では、線に継ぎ目もなく、込められたマナがきっちり2種類に分かれており、混ざり合う様子はない。
「トゥエラ。この2本の線の違い、わかる?」
「ええ…特に違わないような、若干違和感を感じる範囲が違うような…。」
エデュライナの唐突な質問に、困惑しながらトゥエラが、木材の上の液体化したトロパ鉱の線を見比べた。顔が若干顰めっ面になる程、がっつりと見比べているものの、やはりあまり違いがわからない様子。
だがしかし、微妙な違和感で、あってる事を言ってることがすごい。トゥエラってやっぱり凄いんだなぁ。
「どっちがどっちかはヘルロットが研究する部分が少なくならないように、敢えて言わないでおこうかな。
下の線の方はこれ、2種類のマナが混ざり合っているし、線が途中で接続されていないみたいになってるから、回路としても成り立たないね。少なくともこっちは失敗として見ていいかもしれない。
上の方は種類の違うマナが別物として共存している感じだね。線も分断された箇所はないから、回路としても問題なく動くだろうね。」
さっくりとした、マナの状態を確認出来ない人向けのキュウヤの説明である。
同じトロパ鉱で、同じようにマナを込めて溶かしているにも関わらず、線が繋がらなかったという事は。属性変換したマナで溶かしたトロパ鉱は、なんの変換もしていないマナで溶かしたトロパ鉱とは性質が若干違ってしまった為に、繋がらなかったのだろうか。
ううん…トロパ鉱、奥が深い。トロパ鉱買えたら色々実験したいなぁ。どこで購入できるかしっかり聞いておかねば。そして買わねば。
「トゥエラの違和感、じみーにあってたんだねー。凄いっ。」
「自分でびっくりしてるよ…。」
にこにこと満面な笑みでルビナがトゥエラを褒め、ちょっと照れくさそうに頬を緩く赤に染め、トゥエラが微笑む。
「凄いよねー。違和感あるのがすごく羨ましー。ちょっと研究に付き合ってほしいぐらいだねー。」
「冒険者としての仕事がありますので…。」
ヘルロットがトゥエラをスカウトし始めたけれど、速攻でお断りされていた。特に今、Cランクへの昇格試験の真っ最中だしね。
ああ、マナ変換出来てるかどうかを見てもらいたいのか。
「残念ー、ふられちゃったねー。」
「そらそじゃろ。頑張って自力で感知できるように…どうやったら出来るようになるんだろうな?」
「それはねー、わたしが今一番知りたいー。」
テオラルテの言葉に、真顔でテオラルテを見ながらヘルロットが答えているのだが。テオラルテ、圧を感じているのではなかろうか。
解決法を旅人達が伝授する訳にはいかないので、ヘルロットには頑張ってその辺りの研究してもらって解明して貰うしかない。
今までになかったものを開拓していく分野になる。手法もない、概念もない、技術もない、ないないづくしの現状。少なくとも、平坦な道ではないだろう。
それでもヘルロットはきっと研究、分析していくのだろう。そして研究所の研究の進捗を見てにやにやもするのだろう。若き研究者に幸あれ。
ま、とりあえずこれで魔剣修復の手法は決まったね、と、キュウヤがポツリと呟いた。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




