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一章:魔法使い、学ぶ。

内々で相談した結果、収納関連はとりあえず五人だけ開示する事になりました。複数人開示しておいた方が、後が楽だろうという判断。今後、色々と収納したり出したりする必要があるだろう。

また、〈森の輪〉と相談して、この洞窟自体をノルキスタの冒険者が森の冒険の際に仮宿として使えるように、7日間の間に作った家具や食器などの一部を置いておき、一旦畑もそのまま残す事に。畑の作物は動物には狙われるだろうが、魔獣には狙われない。そのため残しておいてもリスクは少ないだろう。

この洞窟は出入り口が一つで守りが固めやすく、洞窟前の草地で焚き火もできるので、夜番もしやすい。草のベッドも置いていくので就寝時に使えば体への負担が少なく出来るし、机や椅子があるので休憩もしやすいだろう。

更に、複数種の魔獣を討伐した事や、森に生息しているとは考えにくい泥を纏った魔獣や岩の生えた魔獣がいた事、統合して考えるにダンジョンの存在が疑われる事も〈森の輪〉に伝える。

相談していくうちに、トゥエラが報告する事が増えていく…と秋風を背負った表情をしていた。アトラにしてもらえば?という課長の言葉にその手があったか、といきいきとしだしたが。反面、アトラは渋い顔。昇格試験のためにも頑張れ。



お昼前。荷物も収納し、洞窟も掃除して。

15人で一路、ノルキスタへと向かう。移動予定時間は5時間ほど。

…それなりの近場に人里があった様子。



道中、キュウヤが〈捜索〉を使用しつつ進む。〈捜索〉を展開していれば魔獣の不意打ちを防げ、安全性を確保できるからだ。

キュウヤが討伐指示を出しつつ、他のメンバーで魔獣討伐、収納系スキル公開組が討伐した魔獣を収納しつつ、進む。


「トゥエラ君や、さっきのはなぁに?」

「精霊術ですね。」


先程の魔獣討伐担当は自ら志願したトゥエラと前衛担当のアトラだったのだが。

トゥエラがなにやら別の言語を呟き、短杖を魔獣に向けると、どすりと、何かに魔獣の胸部が撃ち抜かれたのだ。ミルキィ達にとっても知らない現象。

早速課長が質問しにいくと、短杖をホルターに納めながらトゥエラが答える。討伐した魔獣はミルキィがさくっと収納する。

…なるほど、これが噂の精霊術。


「アトラ、精霊術と魔法使いの魔法の違いは?この問題は次のランクの昇格試験にも出るからな?」

「うぇぇっ。」


一戦交えた後に質問が飛んでくるとは想定していなかったのだろう。

狼狽えている。片手剣を鞘に収めたアトラが思いっきり狼狽えている。反面、にこにことしたトゥエラの笑顔にやや圧を感じるのは気のせいではないだろう。その笑顔のまま、ルビナの方を見て。


「ルビナが解答してもいいんだぞ?」

「ぴにゃ!?」

「二人とも、いつでも質問に答えられるよう、常に覚悟をしておくべき…。」


〈森の輪〉の情報担当コンビが二人して容赦なく畳み掛ける。なかなかに有言実行してますね?


「えっと、えっと…精霊術は、後期アトガキ語で精霊にお願いしてマナを捧げて、マナの形を変えてもらう…?」

「魔法は…異世界から来た人にしか使えなくて、マナの形を自分自身で変える…?」

「そうだな。精霊術は精霊に後期アトガキ語で請願し、精霊にマナを捧げて炎だったり、水だったりにマナを変質していただく事。魔法は魔法使い、あるいは勇者にしか使えない。自らの言葉で自らのマナを変質していく事だな。」


トゥエラの言葉を聞いて、よっしゃあ、とアトラはガッツポーズ。ルビナも嬉しそうな笑顔だ。

先程、精霊術を行使していたトゥエラが呟いていたのは、後期アトガキ語という事なのだろう。なるほどねぇ。

と思ったが、ふと違和感に気付く。何故後期アトガキ語のアトガキは、日本語なのか。


「…日本語?」

「日本語、ですね。」


他の旅行者メンバーも気付いたのか、小さなざわめきがおこる。さもありなん。異世界の地でこういう形で日本語に遭遇するとは誰が思うか。

異世界転移者がいるとは聞いていたが、まさか言語の名前という形で遭遇するとは。


「そう、後期アトガキ語という名はニホン語なんですよ。」


こちらの困惑を受け取ったのか。トゥエラが頷きながら語る。


「今よりも昔、古代と呼ばれる時代、精霊に人がもっと近かった頃、ある一つの問題が起きました。…疫病です。人も作物も呑み込んだ疫病は、あちらこちらに荒野を築く程に猛威を振るったそうです。」


淡々と、語られて。

歩みは止めず、辺りを警戒しながら。昔話は続く。


「人々は解決の手段を、疫病への対抗手段を望みました。祈りの声は神々に届き、神々主導で勇者召喚が行われました。その時に召喚されたのが、チキュウのニホン人の少女だったと語り継がれています。」


さわさわと、風が吹いて、木々の葉が揺れる。


「彼女は疫病問題を解決している最中、精霊に誓願するときの言語に文字が付き、記録にも扱われるようになった事を知りました。その際に『後から文字がついたの?それならアトガキ語だね!』と話したそうで。それから、それまで名前のなかった精霊に誓願するときの言語は、アトガキ語、と呼ばれるようになったそうです。」


そこまで語ると、ああ、そうでした。とトゥエラはこちらを振り返って。

告げる。


「そうでした。アトガキ語の話をするならこれも話しておかないと。その当時の勇者が、後の勇者と魔法使いへの伝言を冒険者ギルドに依頼してまして。

冒険者になる際に受ける講義で、必ずその伝言を聞かされるんです。

それが、ええと、8…進数だそうですよ?」

「8進数…ですと…?」


え…10進数じゃないの…?

読了ありがとうございます!

また次話お会いできると嬉しいですっ。

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