一章:魔法使い、属性変換する。2
3/20 属性にまつわる部分の表記を一部変更しています。
どうやって、液体化したトロパ鉱を浮かせているかというと。
マナを操作してチューブ状にしたものを、桶の中の液体状のトロパ鉱と木材の間に発生させて。液体状のトロパ鉱の水面に、マナ操作で軽く圧をかけてチューブの中に液体状のトロパ鉱が入っていくようにすれば、見た目的には液体化したトロパ鉱が空中を浮かんでいるように見えるのだ。
で、木材側のチューブの端っこな方に液体化したトロパ鉱が届いたらそれで回路を描くという方式である。
なお、この操作をする前に、必要十分なマナを放出しておくのがコツである。自分のマナだと、割と自由自在に動かしやすいのだ。なお、大掛かりなマナ操作をした場合、マナ操作をし終えた後は、空気中のマナ濃度が濃くなりすぎないようにマナを分散化する必要があるのだが、今回の作業に使ったマナの量だと換気するくらいで十二分に対応可能である。空気中のマナ濃度が薄くても植物が育ちにくいとかの弊害があるが、濃くてもこれはこれで問題があるのだ。適正なマナ濃度を守るのはかなり大事な事である。
これで準備万端、といったところでヘルロットが口を開いた。
「ねー、なんで中身が変わらない桶二つ分用意したのー?」
「すまん、意味があるから二つ用意したのはわかるが、違いがわからん。」
更にテオラルテからも申告が。
思わず〈森の輪〉の方を見ると、中身違わないよね勢二人、観察している勢一人。残りの一人は。
「んん…?上手く言葉に出来ないんですけど…、片方だけ、さっきヘルロットさんが使っていたトロパ鉱とはなんかちょっと違う気がする…。」
緩く首を捻って考え込んでいた。
その反応に思わず旅人達は互いに顔を見合わせた。これは…この領域の人達が自力で魔剣修復するの、やっぱり無理なんではなかろうか。
はふり、息を吐いてからシルトが説明を始める。
「説明するのだ。こっちのは単なるマナで溶かしたトロパ鉱。こっちのは火に属性変換したマナで溶かしたトロパ鉱なのだ。」
液体化したトロパ鉱の入った桶を順番に指差しながらシルトが説明すると、え、と驚きの声が誰となく上がる。
「え、ええっ、ちょ、ちょまっ…うそぉ…。」
「…違いが、本気でわからんな…?」
ものづくり系職人の二人が特に狼狽えていた。反対にやっぱり違ったんだ、とトゥエラが安堵の表情を浮かべる。
その横でアトラが首を傾げながら、疑問を呈す。
「なんで、トゥエラだけ違いがわかったんだ?」
「うん、うちら全然わからなかったー。」
「精霊術師だからじゃないかな、多分。」
ルビナがアトラの言葉に重ねた後、考えを巡らせていたスノゥが一つの推論を口にする。
そもそも、この領域のヒトは自力で火とか水とかの現象にマナを変換することができない。つまり、属性に対する知識や感覚がそもそもあまり育っていない、とも考えられる。そもそも、属性という概念があるかどうかすら怪しい。その状態でマナを火属性に染めたとて、わからないのも無理はないかもしれない。
では、何故トゥエラだけ多少なりとも違いを感知できたのか。推定、属性変換可能な精霊との接触の多い精霊術師だからである。属性によく触れてきた、かつ、自身で属性変換できる精霊との関係性がある、というのが、違和感を感じれた理由なのではないだろうか。
「トロパ鉱を溶かしたマナの違いがわかんなかったー、って魔剣修復すること考えると結構まずいよねぇー?」
「結構どころか、かなりまずいと思うなぁ。少なくとも、どこまで魔剣としての効果が発動するか見極められないってことになるからねぇ。」
やや表情の固いヘルロットと問いに、苦笑しながらスノゥが答える。
魔剣って、この領域にとってオーバーテクノロジーでは無いのだろうか。修復するには、技術も知識も感覚も足りていない現状である。まぁ、変に増産できるよりはいい、のだろうか。
更なる難易度上昇を目の当たりにし、嘆き始めるヘルロットを見ないふりして、ルビナが手を挙げた。
「すっごい初歩的な質問したいんだけども、いいー?」
「どぞどぞー?」
「ありがとうー!それじゃあ、そもそも属性ってなぁに?」
スノゥが促した先の質問に、旅人達が思わず固まった。まさかの反応に、え、え?と狼狽えるルビナ。
そうだよね、いきなり属性ありきで話されても、こまるよねぇ。そもそも属性という考え方、概念がこの領域ではほとんど使われていないのに、いきなり属性という言葉が出てきたら何それ?ってなるよね。
「え、そんななんかやばいもんなんか?」
「やばくはない、やばくはない。やばくはないんだけど…。どう説明したもんかな、と。」
アトラの言葉に頭を悩ませながら、スノゥが答える。
スノゥが言葉に詰まるのも無理はない。世界によって属性の捉え方が違うのだ。
例えば、世界の構成する重要な要素としてみたり、個人の特性を示す言葉としてみたり、現象を分類分けしたものだったり…という感じである。
さて、どう説明したものか。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




