一章:異世界転移者、召喚者
説明回は続くよ…
「異世界から来た…。」
エデュライナの落としたカトラリーをルビナが拾い、キュウヤの持っている新しいものと交換している横で、トゥエラが頭を抱えていた。
アトラとルビナも目を丸くして、対照的に悪い笑顔の課長。
ミルキィも内心びっくりしている。相談なしの真実暴露である。
「ええーと、えっと、異世界から来た人って勇者だっけ?」
「勇者だと王都とかで召喚して呼び出された人らだろ。…って事は魔法使い?」
「二人ともよく覚えてた、よく覚えてたけど…嘘ぉ。」
さて、〈森の輪〉の面々が驚きの声を上げるのも無理はない。
勇者、あるいは魔法使いと呼ばれる異世界からの訪問者はこの領域に住むものにとって有名ではあるが、そうほいほい会えるものではないのだ。
異世界から何らかの目的を持って召喚された存在を勇者と呼び、異世界から迷い込んだ存在を魔法使いと呼ぶ。必然、異世界人の絶対数は少なく、この領域の一般人だと一生涯かかわり合わない事も珍しくない存在。
そんな存在が11人もしれっと洞窟に住んで、畑も作って、食糧難打開の策があるという。その衝撃たるや。
「多分、魔法使い側だと思うのだ。少なくとも召喚されてこっちに来た、とかではないのだー。」
「トゥエラ、依頼とかではなく、冒険者ギルドに案内するべき。」
「だなぁ…。冒険者の魔法使い保護義務あるしな…。」
にゃはは、と笑いながらシルト。エデュライナは真剣な眼差しでトゥエラの方を振り向いた。トゥエラは頭を抱えたままで、ルビナもアトラと一緒にどうしよどうしよ、すごい人たちだったよ、と大混乱である。
うんごめん、迷い込んだんじゃなくて、旅行しに来た部分もありましてね…?
冒険者には魔法使いの保護義務があるのには納得だ。普通、見知らぬ世界で、地球とは植生の違う、しかも命の危険になりうる魔獣がいるような場所に戦闘経験の無い少年少女がいきなり放り出されたら、なにをどうするか、というところから躓くだろう。命を落とす可能性だってある。故に保護義務が発生しているのだろう。
「えーと、案内してもらえるなら、魔石で悪いけど報酬は出すよ?というか出さないとこちらの気がすまないかな。」
「…わかった。依頼人に従う。条件を詰めたい。」
困ったようにほんのり眉を顰めたキュウヤの申し入れに、はふりと息を吐いてエデュライナが答える。少しだけ崩れた表情をすぐに引き締め、背筋を伸ばして。
そっとテーブルに、手のひらで包めるくらいの大きさから握り拳ぐらいの大きさまでの色とりどりな魔石入りの、蔦で編んだ籠を置く。このくらいの大きさなら、依頼料としても成り立つだろう。多分。
「…はい?」
「あの、ミルキィさん、今、どこから取り出しました…?」
「どこからって…あ。」
これはうっかり。
依頼料の話をスムーズに進めようと思い、魔石を取り出したのだが。いつも通りに亜空間から取り出した事自体に、〈森の輪〉の情報担当コンビがまた顔を強張らせる。ごん、と鈍い音を立ててトゥエラが机に伏せた。
大丈夫?大丈夫ですか?と机の上のものを寄せながら、キュウヤとルディが声をかけるも微動だにしない。
「すげぇ、〈収納術〉持ち…?」
「手品みたい…。」
アトラとルビナも感嘆の声を漏らす。
「そういう系統のスキル持ちではあるんだけど。…もしかしなくても、収納系スキル持ちって、そんなにいない?」
「…魔法使いよりは多いけれど…。」
「うんわかった。そんなにいない事は把握した。」
ミルキィの言葉にエデュライナが言い淀む。
収納系スキルはレアだったようです。あると便利だけど。なんなら全員修得済みのスキルでしてね…?
人数絞って開示した方がいいスキルの様子。
真面目な顔で頷いて、冷静にセイカが告げる。
「…追加依頼として、こちらの常識を教えてもらった方が良いのでは無いか?」
「このままだと、人里行ってもやらかしかねないもんねぇ。」
はっはっは、と課長が乾いた笑いをあげる。
人里に行かないわけにはいかないのだ。作物育成の方法も冒険者ギルドに託したいし、依頼達成のための情報収集もあるし。
追加報酬になるだけの魔石ってあったっけ?と問う課長の前に追加報酬用の、先ほどと同じ魔石入りの籠を置く。
「アトラ、トゥエラ、エデュライナ、うちら凄い人たちと知りあっちゃったんだねぇ…。」
「魔法使いに出会えるなんて思ってなかったんだぜ…。トゥエラ、追加依頼どうする?」
「森の見回り依頼がどうしてこうなった…。受けます、追加依頼も受けましょう。」
しみじみと呟くルビナとアトラの横で、むくりと頭を持ち上げながら、トゥエラが依頼了承を告げる。
「期間は本日から一週間前後、一緒に行動するので、疑問に思った事などをその都度聞いてください。こちらからも一般常識を話します。…この際だ、アトラとルビナも説明に参加しような?皆さんの知識習得の邪魔はしませんので。」
「え、ええっ、そんなぁっ。」
トゥエラの瞳がガチである。アトラの顔色がやや青ざめ、ルビナが悲痛な声を上げる。そんなに説明が苦手なのか。
これも昇格試験のため、とエデュライナが二人に言い聞かせている。
「そこは全然構わないよ。教えてくれるだけありがたいからね。依頼料はどうしようか?この籠の中から、好きなものを選んでもらえると助かるな。」
「わかりました。…では、これらを。」
トゥエラは魔石を三つ選んだ。中間ぐらいの大きさの青の魔石と、紫の魔石。一番小ぶりな赤の魔石だ。
握り拳大の魔石は高いのか。
「報酬を渡すのは冒険者ギルドに到着後、依頼書制作してから、で大丈夫かな?」
「はい。冒険者に依頼をする時は基本的に冒険者ギルドを通してください。この辺りの詳細はギルドについてからまた。」
「わかったよ。じゃあ、一週間ほど、よろしくね?」
キュウヤとトゥエラが握手を交わして。
依頼成立した様子。
「うう…昇格試験受けるのぉ…?」
「受ける。打診は受けてた。」
その横でルビナがぺっそぺそになっていた。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。
修正点:報酬量少なかったので、魔石ひとつ増やしてます。




