一章:魔法使い、おばば様に交渉する。
二月中に一章、終わりませんでしたね…?
こっそり気配を消したまま、ミルキィは周囲にふよふよしている精霊に問う。結果。そもそも、精霊には魔獣の不要素材を肥料化するという概念がなかった。
これは精霊術で肥料作るのは無理だわ。〈念話〉でさくっと報告し、不要素材が溜まってきたら皆で肥料に変えればいいや。そしてノルキスタの冒険者ギルドに引き取ってもらおう。
解体部屋の職員が〈笑顔の行進〉が解体している間、〈森の輪〉に人族について学んだ。ルディとロヴェルには後で説明する予定である。
〈森の輪〉に教えてもらった内容的に、ミルキィ達は〈隣空族〉という事になるのだろうが。そうなるとキュウヤの種族特性の説明が面倒である。〈隣空族〉じゃないだろ、って言われかねない。まぁ、実際そうなんだけども。外見上は〈隣空族〉である。
とりあえず、ツッコミをもらわないためにも、なるべく武器攻撃の回数を減らす立ち回りをしてもらわねば。いっその事、基本指示役とか、統括役で前に出ないような立場にいてもらうか。〈念話〉で、念押しするミルキィである。
ドワーフがいない世界にドワーフが転移したらカオスな事になるだろう。今の旅人達は、そういうのを事前に防いだようなものなのだが。異世界旅行はこれが難しい、と、ミルキィは心の中で呟いた。
ミルキィがぐるぐると思考を巡らせていると、クロムから声を掛けられた。
「そうでした、ミルキィ。」
「ん?どした?」
「勘の話ですが、お薬は必要ないんですか?」
「あると嬉しい。回復薬系はもちろんだけど、風邪薬とか一般薬もあるといいかも…。」
そういえば、あの時薬の話はしてなかったね!
ミルキィの言葉を聞いて、クロムは一つ頷き。今度はキュウヤに声を掛けた。
「キュウヤ、〈大緑化人〉数体分の素材を交渉に使ってもいいですか?」
「その程度なら問題ないよ。」
穏やかに微笑んで、キュウヤがクロムの問いに答える。その答えを聞いて、また一つ頷いて。
「ノート、セイカ、製薬に興味は?」
「あー、成程?ある程度作れた方がいいよなー。」
「ああ、こちらの技術に興味がある。」
ノートとセイカを見上げて、クロムが問うと。二人から色良い返事が返ってくる。
ありがとうございます、とにこりと笑って、クロムは薬師のおばば様に声を掛ける。
「おばば様、ご相談があるのですがよろしいでしょうか。」
「何となくわかったけれども、一応聞いとこうか。」
「では、簡単に。僕、ノート、セイカの三人に、製薬の手解きをしていただけないでしょうか?
お礼として、〈大緑化人〉三体分の素材をお渡しさせてください。」
にこり、と営業スマイルを浮かべたクロムに、表情を鋭くしたおばば様の視線が刺さる。
まぁ、普通素人が気軽に手を出せる領域ではない。ないのだが。…全員ポーション作れるんだよなぁ。腕はあるぞ、少なくとも。
「…生半可な技術では許されない領域だよ?」
「元々の世界でも薬剤作成はしていましたので、ある程度の知識も技術もあるとは思います。」
「…ん、なんだって?」
クロムの言葉が何もかも想定外だったのだろう。薬師のおばば様が目を丸くして聞き返していた。
解体部屋で話しているもんだから、話し声が聞こえたのであろう解体部屋の職員の人も目を丸くしていた。
「耳が悪くなったのかもしれないねぇ。悪いけどこのおばばにもう一回教えてくれるかね?」
「そうですね、ここだけの話ですよ?ここにいる皆さんも守ってくださいね?…我々は魔法使いです。製薬も経験済みです。」
営業スマイルを崩さずに、クロムが簡潔にもう一度告げて。薬師のおばば様も解体部屋の職員の人も固まった。
怪我に気をつけるんやでー、と一人驚いていないエヴァリオスが周囲の解体作業中の職員に声を掛ける。
「…はい?」
「こちらの世界の製薬技術を学びたいんです。おばば様、いかがでしょうか。」
にこにこと、クロムが薬師のおばば様に声を掛けるが。驚きが抜けきらないおばば様は、答えを告げる事ができていない。そらそうだ。
「エヴァさんエヴァさん、魔法使いですよ、昔話の登場人物ですよ、何で驚いてないんですか!?」
「持ち込まれた素材を考えてぇな。冒険者登録とほぼ同時に、あの巨大な〈魔猪豚〉やろ、〈砂哭蛇〉やろ。今日の〈巨岩山鳥〉の羽根は状態が良かったし、〈歩行樹〉の丸太なんて見るなんて思ってもなかったんやで。で、〈大緑化人〉と〈精鋭緑化人〉複数やろ。
冒険者になる前でも、〈巨岩山鳥〉の素材を綺麗に持ち込めるような実力者がいたら、そもそも有名になっとるやろ。ランクAの中でも討伐が面倒な魔獣やぞ?素材確保しようと思うたら更に難易度が上がるぞ。
そんなもん持ち込んでくるような新人がおるかいな。普通おらんやろ。でも現実的に持ち込まれとる。なら、普通ではない想定ぐらいはしとくべきやな。例えば、勇者とか、魔法使いとか、な?」
「ムキムキ、なかなか鋭い所あるんだねぇ…?」
まさかの考察で割と見抜かれていた件について。まぁ、確かに新人が持ってくる魔獣ではないようなのばかり持ってきてたもんねぇ。
薬師のおばば様がエヴァリオスの考察力にも驚いている。
「あぁもう、わかったよ。また教わりたい時にうちの店に来な!うちの店なら誰かに聞きゃあわかるからね!」
「では、交渉成立ですね。追加報酬ですが、こちらの世界のでの製薬方法もお伝えします。」
話がまとまって、二人握手を交わす。…何とか話がまとまって良かった。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




