一章:魔法使い、本日二回目の解体部屋に行く。
解体部屋まで後少し、と言うところで。書き終わったのでトラおじじのところに行ってきますね、と書き起こしが終わった様子のルディが大きめのバインダーを〈収納〉して、にこにこ笑顔で告げてきた。片手には何枚かの紙を持っている。
おれも一緒に行くよ、とロヴェルがルディに声をかけ、年少組が行ってきます、とミルキィ達に声をかけて、二人並んでトラおじじの元へ。
残った九人は、そのまま解体部屋に行くことにした。ルディ、書き上げるのはやいなぁ…。
「こんにちはー。また来たのだー。」
「まっとったぞー。」
扉を開いて、シルトが挨拶をすると、解体部屋のエヴァリオスが片手を上げて挨拶を返してきた。
講義を受けて二刻ほど経過しただろうか。流石にまだ買取先の選定や買取価格の決定まで決まってないだろう、とミルキィは考えていたのだが。
「預かっとった〈巨岩山鳥〉の羽根と〈歩行樹〉の丸太の買取先が決まったけんの。」
「…はやいですわね?」
「商業ギルドに話を持って行ったら一発でした!」
「さすがノルキスタの商業ギルドだぜ!」
まさかのエヴァリオスの宣言である。アヤナが首を傾げながら驚くと、解体部屋の職員達が嬉しそうに商業ギルドを持ち上げていた。
レアモノで需要もありそうな素材だし、推定商業の元締めのとこならまぁ、買い取ってくれるか…。
いくらなんだろうねぇ、買取価格。とスノゥがうきうきしていると、解体部屋で待っていてくれたのか〈森の輪〉の面々が来た。
「皆さん、お疲れ様です。」
「訓練場どうだったかな?先輩方優しかったでしょー!」
ルビナがにっこにこでこちらに聞いて来たのだが。アビリティと魔法披露して、トラおじじとエディスと会議してたんだよなぁ…。
「なかなかにノリの良い方ばかりですわね。」
「考察力も素晴らしかった。」
にこにこと笑顔を浮かべなら、アヤナが。表情が変わらないながらも眼差しが柔らかな、フォードが。何か違う、という印象を受ける感想を話していた。アトラが首を傾げているが、聞いてるだけだとそうなるかもしれない。
「…うん?」
「何かやって来たんです?」
ジト目でトゥエラがこちらを見て来たので、若干視線を逸らしながら、小声でミルキィが答える。
「属性付きアビリティ披露して来たかな…。」
「…はい?」
「暴露してきた?」
ミルキィの言葉に、トゥエラの表情が固まり、小首を傾げてエデュライナが問う。
ちなみに、全員小声で、固まって話している。少し離れたところでキュウヤとクロム、セイカが〈緑化人〉の売却できる素材について解体部屋の人に聞いており、またスノゥとシルト、フォードとアヤナがエヴァリオスの話を聞いている。
「暴露したねぇ。」
「ノルキスタの町の人以外には内緒だよ、って念押ししてるんだぜ。」
「…秘密を抱えなくて良くなったと喜ぶべきなのか、それとも新しい悩みの種を抱えそうだと悩むべきなのか。」
ノートの言葉に、トゥエラが真顔で悩み始めていたのだが。…勘いいですね?
思わず、ミルキィが視線を逸らすと、視界の端でトゥエラが遠い目をしていた。トゥエラの表情を見たエデュライナが、ミルキィに問う。
「何か、あった?」
「…そのうち、トラおじじから指名依頼はいるかもしれないかなぁ…。色々あったんだよ…。」
「さっきの勘といい、トラおじじとエディスとの会議で何があったんだよ…。」
思わずミルキィも遠い目をしていると、ノートが目を丸くして聞いてくる。だがしかし、不確定情報多いから、あんまり大っぴらには話せないからねぇ。
ノートには後でねと伝え、トラおじじから指名依頼入るかも、と聞いて緊張の走る〈森の輪〉には、まだ情報出揃ってないし、許可貰ってないから、と詳細を話さないことを伝える。
そこに、解体部屋の職員と話していた三人が戻ってくる。緊張の走っている〈森の輪〉を見て、キュウヤが首を傾げた。
「ん、どうしたの?」
「トゥエラも勘がいいねぇ、ってなってたかな。
で、〈緑化人〉の解体依頼と素材売却するの?」
「あー…さっきの話か。こっちもトラおじじもまだ色々整理しないといけないし、情報足りてないから割とわかってない部分があるんだけど、もしかしたら遠征するかもね、って話だよ。本決まりじゃないから、詳細もわからないけどね。
で。〈緑化人〉系統は、武器と装飾品と頭の花と肩から上に生えてる葉、魔石が買取素材だって。」
「頭の花と葉は薬作成に使われるみたいなんですが、ランク高い方が高い効果を得られるそうです。」
「武器はボロボロのものは素材として、比較的マシなものは手入れをすればそのまま使えるから一定の需要があるそうだ。人によってはサブウェポンとして使用しているらしい。」
キュウヤ、クロム、セイカが口々に〈緑化人〉の素材について話す。まぁ、割と無難な買取素材ですね?いらない部分は引き取って肥料に変えてしまえばいいのではなかろうか。
でだ、とキュウヤが腕を組んで、真面目な顔をしてこの場にいる皆に問う。
「〈緑化人〉系統の素材、どれくらい売る?」
〈森の輪〉の面々が、ちょっとぽかんとした顔をしているが、旅人達としては割と本気で考えないといけない話である。
…討伐した総数、下手すると千とか超え出たような気がするなぁ!
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




