一章:魔法使い、これからの見通しについて。4
静かに語られたキュウヤの言葉。それを聞いて、エディスの顔色が悪くなる。
トラおじじは、額に手を当てて考え込み始めてしまった。
「裏に何かがある、って事か?」
「状況がね、変だと思うんだ。
ルビナリオの冒険者達が別の町に行って、ルビナリオの冒険者ギルドの現状を訴える事が出来ている以上、情報の封じ込めは行われていないと判断できる。
情報を封じ込んでない段階で、今のルビナリオの状況が周囲に伝わるのは時間の問題なのは目に見えていたはずだ。
それにも関わらず、何故情報の封じ込み、もとい冒険者達の他の街への移動を禁じなかったのか。あるいは情報を他の町に伝える事を禁じなかったのか。首謀者達が何にも考えずに現状を生み出したのなら話は簡単になるけど、そうでないのならば。」
「…複数の思惑が、ルビナリオの冒険者ギルドで動いておると。」
トラおじじの言葉に、こくりと真剣な眼差しをしたキュウヤが頷いた。
すっかり湯気が立ち上らなくなったハーブティーで喉を潤しながら、キュウヤは話し続ける。
まぁ、現状見えているルビナリオの冒険者ギルドの所業は、悪いことやってる割に適当な部分がある。雑というかなんというか。
「そう考えた方が、割としっくりくると思う。」
「確かにのぅ。今のこのルビナリオの状況を知った他の冒険者ギルド支部や本部の混乱さえも、裏で暗躍しとる者の狙い通り、という可能性すらあると。」
トラおじじがキュウヤの言葉を受けて呟いた後に、顔色を悪くしたエディスが何かに気付いたのか。
口を開いた。
「不当な扱いを受けるから、と、ルビナリオの冒険者ギルドに所属する全てのE、Dランクの冒険者がルビナリオを離れた場合、薬草採取や周辺の魔獣討伐する人手が足りなくなってルビナリオの街自体が詰む。
ルビナリオの街のダンジョンを攻略している大手クランが、不当な扱いを不服としてルビナリオを離れる事もありうる、よな…?」
「そうなるとダンジョン攻略も停滞しかねんぞ。ダンジョン内の魔獣が増加するだけで済めば良いんじゃが。」
「更に言うなら、それ、街が日常を送る上でも割と打撃受けてるよね。薬草といった採取物や、魔獣素材の取引量は減るし、街中の依頼の受注数すら減るだろ。」
キュウヤの結論に、トラおじじとエディスが沈黙する。
現状、他の町の冒険者ギルドに情報が持ち込まれた、と言うことは、すでにある程度のE、Dランクの冒険者がルビナリオから移動している、という事でもあるのだ。
つまり、もうすでにルビナリオの街の日常に影響が出始めている可能性がある。
冒険者の移動は普通にあるだろうが、限度というものもある。
「思った以上に深刻な問題だった…?」
「現状分析したらとんでもないもの引き当てた気分ではある。」
現状の状態に顔色を悪くしたまま、ぽつりとエディスが呟いて。はふり、と息を吐いたキュウヤも、額に手を当てて呟いた。
冒険者ギルドが冒険者を不当に扱っている、という情報や状況から、ルビナリオの街がヤバいという結論まで出てくるとは。
トラおじじは背筋を伸ばし、キュウヤに問う。
「今の考察結果を、ルビナリオ周囲のギルド支部やギルド本部と共有させてもらってもよいじゃろか?」
「どうぞどうぞ。むしろ情報使ってください。最悪、ルビナリオの街の混乱や衰退までもが狙いの可能性出てきましたし。」
「今の話し合いの情報は記録してますので、ご希望でしたら時間はいただきますが、書面に書き起こしたものをお渡しできます。」
ルディの提案に、トラおじじはほんのり表情を和らげた。
「お願いしてもよいかの。」
「はいっ。一刻ほどお時間ください。ギルドの受付の方に渡したらいいでしょうか。」
「受付に声をかけて、ギルドマスター室まで持ってきてもらえんじゃろか。」
「わかりました!では後ほど、お届けしますね。」
ルディは童顔である。二人のやりとりに、若干じじ孫みを感じてしまった。
さっそくルディは〈収納〉から紙とペンを取り出して、記録を写していく。
「今すぐ取れる方針としては、ルビナリオの街に、余力のある冒険者ギルド支部からCランクの冒険者を、ダンジョン攻略の名目で派遣し、E、Dランクの冒険者を保護、適宜指導していく、事かの。流石に他所の冒険者の前で不当な扱いは…しないでほしいのぅ。」
「地元の冒険者がいる方がダンジョン攻略しやすいだろう、というお題目で雇っていく形で保護するのが自然かなぁ。
うーん、関わっているクランがどんな動きをするかも読めないし、裏で暗躍してる人が関わってこないといいんだけども。」
「ルビナリオ入りした冒険者達に、情報収集もしてもらって。それを精査してから、ルビナリオ入りかな。トドメは任せて。
あ、他のギルド支部には魔法使いが決定打な事は伏せといて欲しいかな。万が一、ルビナリオ側に情報が漏れて決定打になる行動回避されても困るからね。
ちなみにこれ、依頼になる?」
「依頼じゃぞ?しっかり後で指名依頼出しとくからの。魔法使いに動いてもらうからには、依頼はしっかりと出すし、報酬は本部にも出してもらおうかの。
ちなみにじゃが、希望する報酬はあるかの?」
トラおじじの提案に、キュウヤとミルキィは互いに顔を見合わせた。
「ちょっと、他の面々とも相談してからでもいいですか?」
「結論は、ルディが書き起こした資料持って行った時に伝えてもらいますんで…。」
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




