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一章:魔法使い、これからの見通しについて。2

まず、まだ確定情報ではないことを念頭に置いて欲しいんじゃが、とトラおじじは話し出す。その表情は真剣なもので。隣に座るエディスも同じ表情。

キュウヤは静かにコンロ型の魔道具の稼働を止め、ガラス製のティーポットにお湯を注いでいく。ゆらり、お湯の中で揺れるハーブ。


「ルビナリオの冒険者ギルドが、D、Eランクの冒険者を軽視しておる、という話が出てきておる。」

「ノルキスタに避難してきたDランクの冒険者達から聞いた話なんだけどな。ここ最近初心者講義が雑で冊子を渡しておしまいだったり、EランクDランクの冒険者の依頼報酬や魔獣買取費からギルド税を割り増しで取っているとか、依頼報酬がそもそも安かったり、とあるクランが依頼を取らせないようにしてて、それを冒険者ギルド側が注意すらしない、って事が起きているらしい。冒険者ギルド内の規則を思いっきり破りまくってる状態だな。

ちなみに、今日貰った冊子に冒険者ギルドの規則としてギルド税についてや、依頼取得妨害の罰則についても載ってるから。冊子はしっかり読んでほしい。」


トラおじじの言葉を補足するかのように、エディスが喋る。

何がどう規則違反なのかしっかり判別できるように冊子はしっかり読み込んでおいた方が良さそうである。

ガラスのティーポットの中のお湯が、ゆっくりと確実に色付いていく。


「情報の裏取りをしようにも、大森林に出来たダンジョンに関する事象でノルキスタの冒険者ギルドは手一杯じゃ。

今、打った手としては、冒険者ギルド本部にルビナリオ支部が初心者講義をまともに行なってない事や、EランクDランクに対する不当な扱いがある事を伝えておる。

じゃが、本部もすぐには動けんじゃろて。噂レベルだと判断されてもおかしくないし、監査するにも段取があるじゃろうしのぅ。」

「加えて。冒険者ギルドの本部は、この国ストーヴェ王国の隣国であるフィフナート通商連合にあるんだが。ルビナリオはストーヴェ王国の北部に位置する関係で、馬車を乗り継いでも下手すると半月ぐらいかかるんだ。」


物理的な距離はどうしようもない。

ところで気になる事があるので聞いてしまおう。


「冒険者カードの履歴追っても証明できないの?」

「冒険者カードに蓄積されとる情報のことじゃろ?あれはなぁ…どんな依頼をしたか、どんな魔獣を討伐してきたかの情報だけなんじゃよ。報酬金額やギルド税の情報は冒険者ギルドに蓄積されとるだけなんじゃよなぁ…。」

「正直こちとら、これに関する裏帳簿あってもおかしくないと思ってんだよな。」

「あー…。」


なんということでしょう。まぁ、冒険者カードの内部情報は、昇格に関する情報だけあれば普通は問題ないもんねぇ。普通、まさかの冒険者ギルド側が不正するとは思わないじゃん…?

カップにハーブティーを注ぎながら、キュウヤが顔を顰めて呟く。


「冒険者ギルド側が不正すると、証明めんどくさいな…?ハーブティーどうぞ。」

「いただこうか。ほんっとそうだと思う。まぁ、その辺りは冒険者ギルド本部にどうにかしてもらうしかねぇや。」

「ありがとうのぅ。こちら、半分ギルド側の冒険者の台詞じゃぞ。」

「おいこらじーさん。単に訓練場で指導者役の依頼やってるだけだが?一応情報集めてたり、それをギルドに流してたりするが、こちとらギルド職員ではないんだが?」


トラおじじとエディスが漫才している。エディス、結構いろいろやってるんだねぇ。それはトラおじじに指名されるわ。

冒険者ギルド本部の方には、是非ともギルド支部が不正できないような仕組みを作り上げて欲しい。初心者冒険者が犠牲になってるような仕組みは、そのまま緩やかに衰退していくだけだろう。そも、人が育たない。

まぁ、トラおじじが何を話したくて、どうしたいかは見えてきた。ハーブティーを何口か飲んで、キュウヤが告げる。


「話聞く限り、ルビナリオの冒険者ギルド支部はどうにかしないといけないのは確定かな。ただ、情報の裏取りができてない、と。」

「その辺りの判断する為にも、情報の裏付けが欲しいところだけど。

あ、情報提供者の人と話させてもらえたら、嘘かどうかの判断ぐらいならできるよ。」

「…魔法使いすげぇな?いや、〈笑顔の行進(スマイル・パレード)〉が凄いのか。過去の魔法使いがそんな能力あったとか聞かないからな。」


ミルキィが自己申告すると、エディスが驚いた顔をしてミルキィの方を見た。

対峙しとけば変化わかるから、そこから嘘かどうかは判断できるんだよなぁ。


「そのあたりは一度お願いしたいのぅ。」

「任されるー。日程決まったら教えて欲しいなぁ。」


ゆるっと、情報提供者の人との話し合いについての話をすると、真面目な顔でキュウヤがトラおじじに問う。


「で、トラおじじ。確認したいんだけど、俺達に何かあったら冒険者ギルド本部って出て来る?」

「魔法使いが冒険者ギルドに登録すると、登録地の冒険者ギルド支部が直接的に支援し、冒険者ギルド本部が魔法使いの後見になるのぅ。皆様方になんかあったら本部が出て来るぞ?」

「成程。それじゃ、ルビナリオの冒険者ギルド支部を魔法使い保護法違反にしてしまえば、後見の冒険者ギルド本部が出てくるわけか。」


にやり、とキュウヤが一つの結論を出した。

読了ありがとうございます!

また次話お会いできると嬉しいですっ。

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