一章:魔法使い、クラン申請を行う。
キュウヤの提案を聞き、しばし悩む旅人達。
まぁ、確かに、ノルキスタの住人に魔法使いである事を話しても、それで何かしら利用するそぶりもなかったし。驚いただけで、その後特に距離取るとか逆に近寄ってきたりもなかった。…いや、いたけども、自身の知識欲とか技術確認とか、そこらへんの欲求から近かった気はする。付与師兼魔道具師であるヘルロットは、自身の興味のある分野の話だったからグイグイ来てたのだろう。
そも、国際法的に魔法使いを悪意を持って利用するとか思いっきりひっかかりそうではあるが。
まぁ、今のところノルキスタで色んな人に出会ったが。魔法使いという事をカミングアウトしても、意外とすんなり受け入れてくれそうな人達だらけだった様に思う。解体部屋で見学してた冒険者もノリが良かったし、マジかよ!?で受け入れてくれそうな気配もする。他言無用、というのを念押ししておけば…町の外の人に情報が行かない様にすれば…拒否感はない。
というか、なんだ。割と好きになってしまったのだ、この町を。滞在時間はまだ一日にも満たないけれど。それでも、居心地が良かったのだ。だから、どこから来たのか正体不明なままでいるよりかは、異世界から来たのだと言ってしまう方がいい。
一つ頷いて、ミルキィは告げる。
「うん、わたしは賛成かな。」
「ノルキスタの住人って今のところ、お人好しな人達ばっかだろ?いいんじゃね?」
「いっそ明かしちゃった方が楽な気がしてくるよねー。」
「対外的に情報流通の制限をすれば問題ないだろう。」
「ここまで反対意見はなし、と。…大丈夫そうだな。」
「全員賛成でいいのだ、キュウヤ。」
「よし、決まり!それじゃ、俺達もクラン申請しに行こっか。」
口々に話し出し、結論全員賛成。キュウヤが一つ手を叩いて、次の行動を促した。
一人、また一人と立ち上がり、旅人達は冒険者ギルドの受付へと向かう。
「すみません、クランの申請をお願いしたいのですが。」
「はい。ではまず、クランの名前をこちらに記入してください。それと、リーダーになる方のギルドカードをお預かりさせてくださいませ。」
「はい。こちらです。」
キュウヤが受付に声をかけると、ギルドの受付の人が紙を出しながら、ギルドカード提出を希望する。
すっ、とギルドカードを渡し、キュウヤは紙を受け取って、カウンターで〈笑顔の行進〉と、記入する。
旅人達もそれぞれギルドカードを準備して。キュウヤはギルドの受付の人に、クランの名前を書いた紙を返す。受付の人はギルドカードとクランの名前の書かれた紙をカウンター下の魔道具に通し、キュウヤにギルドカードを返却する。
見ると、キュウヤのギルドカードに、新しくクランの名前が刻まれている。その横にクランマスターの役職名も。
「リーダーの方の登録が完了しました。副リーダーの方のギルドカードをお願いします。」
…副リーダーの登録がいるとか聞いてなかったのだが?どうする、と思ってミルキィが他の面々を見回すと、何故か見られていた。
「え、なんで、」
「リーダーがキュウヤなら、副リーダーはミルキィだね。」
あっさりとスノゥが告げると、他の面々も一斉に首を縦に振る。反対意見が無い。ええい、いつもと変わらない割り振りですね!?
にこにこ笑顔で待っていてくれた受付の人に、ミルキィもギルドカードを渡す。また魔道具に通し、返却されたギルドカードには、クラン〈笑顔の行進〉サブクランマスターの文字が刻印されていた。
…クランもリーダーも、ランクだって。地球の言葉がそのまま使われているのは、きっと、アトガキ語成立時代の勇者と魔法使いの提案からだな、きっと。
少しミルキィが現実逃避をしていると、受付の人がクランに所属する方のギルドカードの提出をお願いします、と声をかけていた。受付の人は一人ずつ受け取り、魔道具に通し、所属クラン名を刻印してギルドカードを返して、次のギルドカードを預かっていた。
9人分の所属クラン名を刻印し、最後の一人であるルディにギルドカードを返却し。ギルドの受付の人は問う。
「クランに所属される方は以上でしょうか。」
「はい。これで全員所属しました。」
問いに、こくりと頷いてキュウヤが答える。
「確認の為、クランに所属している方の名前を読み上げますね。
クラン、〈笑顔の行進〉クランマスター。キュウヤ・イチノセ。」
「はい。」
「サブマスター、ミルキィ・ウェイ。」
「はい。」
「以降の方々はクラン所属員となります。アヤナ・アオキ。」
「ええ。」
「フォード・ベルク。」
「…ああ。」
「シルト・ヴェイン。」
「はーい、なのだ。」
「クロム・レキシ。」
「はいっ。」
「ノート・ペルシ。」
「はいよー。」
「セイカ・ライズ。」
「はい。」
「スノゥ・ホワイト。」
「はーいっ。」
「ロヴェル・スルガ。」
「はい。」
「ルディ・ロート。」
「はいっ。」
「確認できました。ご協力ありがとうございました。
以上13名、クラン〈笑顔の行進〉の所属となりました事を冒険者ギルドも記録しました。これからも冒険者として励み、より一層の高みに向かっていってください。
…ところでクラン名ですが、勇者の故郷の言葉ではないでしょうか?」
にこにこと、営業スマイルだった受付の人が、驚いた顔をしてこちらに聞いてくる。結構、地球の言葉が伝わっているのだろうか。
ふわり、とキュウヤが微笑んで、受付の人に告げる。
「そうなんです。誰かに笑顔を届ける為に、活動をしていきたいと思いまして。皆で相談してこの名前になりました。」
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




