一章:魔法使い、講義を受ける。5
さて、とローナが前置きをして。受講者である旅人達を含めた新人の冒険者達を見回して、告げる。
「最後に、冒険者ギルドの成り立ちを軽くお話しして座学は終わりにしましょう。」
ゆらり、高めに括ったサフランイエローの髪が揺れる。
「昔々、遠い昔。今よりももっと精霊が身近であった時代…古代、と現代では呼ばれる時代に疫病が流行った時代がありました。」
昨日、トゥエラにアトガキ語の話を聞いた時代のお話ですね?
「人にも作物にも猛威を振るった疫病ですが。魔獣は影響がなかったようで、変わらず出現し、度々被害をもたらしていたそうです。
国は、疫病対策に追われ、魔獣対策まで出来ていませんでした。その際に、民間より有志が立ち上がり、自ら魔獣を討伐していきました。討伐した魔獣を解体し、商会に卸し、資金を稼ぎ、消耗品を入手し、装備品を手入れし、また魔獣を討伐する、という事をしていたそうです。」
ローナによって、語られる冒険者ギルドの昔話。
年若い新人冒険者達は特に、ローナの話に聞き入っていた。
「有志達のその動きは、次第にその輪を広げていきました。
解体した魔獣の素材を販売する商会が。素材販売や消耗品購入や装備品の手入れなどで動いた金銭の流れを書類に起こす元文官が。魔獣討伐に参加する人々も増え、怪我をした際には薬師の方も神官の方も手を貸した、と言われています。
更に、その動きはある街からうまれたのですが、周囲の街町へと広がっていきました。」
穏やかな声が、物語を紡ぐ。
「はじめは有志達数人から始まった魔獣を倒す輪は、多数の人員が参加していき、疫病の影響が小さくなり出した頃、余力が出てきた国の要請で、組織だった動きを求められるようになりました。
組織を立ち上げる事になって、最初に魔獣を倒し始めた有志達は悩みました。どの様な組織にするのか、国に属するのか、そうしないのかなど、考えなければならない事がたくさんだったからです。帳票を作成した元文官達や、商人達も一緒に悩んだそうですが、なかなか形はまとまらず。
その時、一緒に魔獣を討伐してくれたある人物達が一緒に組織について考えてくれる事になりました。…疫病対策の際に召喚された勇者と、同時期にこの世界に迷い込んだ魔法使い達です。」
疫病対策の時の勇者は、昨日トゥエラに習ったアトガキ語命名の勇者だろう。この時期に魔法使いもいたのか。
「勇者も魔法使いも、有志達に賛同しそれぞれ違う地域で魔獣討伐をしていたそうですが。ついに組織を立ち上げると聞いて、会議の場に来たそうです。
勇者と魔法使いは、それぞれ組織についての案を持ってきたと言われています。内容はほぼ似通っており、初対面であった勇者と魔法使いは即座に意気投合しあい、様々な提案をしてきたそうです。
結果、勇者と魔法使いの案も取り入れながら、冒険者ギルドは立ち上がりました。国に依存しない独立した組織として。ランク制度や初心者への講義、資料室を設置することなど、勇者と魔法使いの提案だったと伝わっています。
また、国の組織として冒険者ギルドを欲しがって国々に対しての説明をして回ったのも、勇者と魔法使いでした。勇者と魔法使いが国々を回り、時に戦ってくださった結果、冒険者ギルドは今の形を保つ事ができたのです。
さて、冒険者ギルドが立ち上がった時、一番最初に受け取った依頼が、当時の勇者による、後の勇者と魔法使いに向けた伝言でした。冒険者ギルドにとって象徴となるこのはじまりの依頼は、今もなお、冒険者ギルドの各支部の掲示板にのらない依頼として存在し続けているのです。」
ローナは再び、講義に参加している新人冒険者達を見回す。
「冒険者ギルドは、勇者と魔法使いに対しての恩があります。当時の勇者と魔法使いに恩を返そうとしたら、いつかやってくる後輩達にその恩は使ってくれ、と断られたと冒険者ギルドを立ち上げた有志の手記に記されていました。
故に、冒険者ギルドは、在野の魔法使いを保護し、理不尽な目に会わない様にするという方針があるのです。
…皆さん、最初に伝えました事項は必ず守ってくださいね。冒険者ギルドの始まりとなった有志や、勇者に魔法使い、協力してくださった皆様方、冒険者として野を駆け山を行き、ダンジョン攻略してきた数多の先輩方が、冒険者となった皆さんの前にいるのですから。」
ローナはにこり、と最後の圧をかけた。
結構、冒険者ギルド立ち上げにがっつり関わってるんだなぁ、勇者も魔法使いも。
「皆さん、お疲れ様でした。座学はこれで終了となります。必ず冊子は持って帰ってくださいね。
この後はパーティー、クラン申請を希望する方は受付にて申請してください。
申請を希望しない方、申請が終了した方は順次冒険者ギルドの敷地内訓練場へ移動してください。訓練場では冒険者の先輩方がいますので、今現在の皆さんの戦闘技術を見てもらい、指導を受ける時間となります。」
はじめに、ローナが会議室を退室し、その後に元気よくパーティー組もうぜ!と若い冒険者が会議室を飛び出していき。一人で来た冒険者達はゆっくりと席を離れ、会議室を出ていく。
会議室の中には旅人達だけになって。キュウヤが小声で話し出す。
「クラン立ち上げは確定。名前は…旅立つ前から話し合ってた通り、〈笑顔の行進〉でいこう。
で、提案だけど。ノルキスタの住人だったら、他の人に内緒、って念を押した上で、開示してもいいんじゃないかな。もう何人か開示しちゃったし、問題ないよね?」
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




