一章:魔法使い、講義を受けに行く。
人が暴れた分だから、気楽に提出できるよね。と、容赦無く渡した〈歩行樹〉の丸太と〈巨岩山鳥〉の立派な羽根2種類。
解体部屋の人達が目を丸くして、それらの素材を見ている。沈黙のち、口々に話し始めた。
「〈歩行樹〉の丸太とか初めて見た…。」
「〈巨岩山鳥〉の羽根って、あんなに綺麗なんだな…。」
「あれ買取なの、買取なの?まじで?」
「〈巨岩山鳥〉の羽根って、お貴族様の帽子の飾りになるような羽根だろ?すげぇ、室長そんなん握らされてんのか…。」
「あのねーちゃん、とんでもないもん持ち込んでんな?」
「「「それはそう。」」」
両方とも、狩ったのはミルキィではないのだが。まぁ、〈収納〉から取り出しているのはミルキィなので、持ち込んでいるという点ではミルキィになる…のだろうか。
叫んで放心していたエヴァリオスが、はっと意識を取り戻したかのように、急いで柔らかい布を敷いた台を持って来るように指示を出し、解体部屋の職員が急いで持ってきた台の上に、丁寧に羽根を置いている。
「こんなヤバいもん、手渡しせんでくれぃ…。手汗ついて価値下がっても責任取れんぞ…。」
「え、汗ついただけでも価値下がるんだ。」
昨日とはうってかわって、テンション低めにミルキィに抗議の声を上げるエヴァリオス。
流石に汗が付着するだけで価値が下がり、さらに買取金額が下がるのは知らなかった。
「〈巨岩山鳥〉の無傷の尾羽と頭の飾り羽根やぞ?上位貴族どころか、王家に献上する為の帽子や扇子の素材になってもおかしくないんだで?
加工する職人がある程度汚れは落とすだろうけんど、その時に汚れが落としきれるとは限らんし、汚れ落とす過程で羽根に傷もつきかねん。そも汚れがついとらん方がそりゃあ好まれるやろ。」
「はー…そらまたとんでもない行く末だね?」
「そうなんでな。はー…しかしどないしようかね。」
改めて羽根の加工先をエヴァリオスに聞かされて、とんでもない素材だなぁ、とミルキィは思う。倒せる実力はあるんだぜ、のアピールとして出したのはそうなんだが、単に倒すの面倒くさい魔獣だし買取金額高いかなー、とも思っていたのは否定しない。
まさか、王家に行く可能性のある素材とは思っていなかったのだ。
「それなら綺麗にしとかないといけないよねぇ。」
「ん、何するんでな?」
「スキル使いまーす。」
さくっと、手のひらを〈巨岩山鳥〉の羽根の方に向けて、〈浄化〉発動。するとみるみる、発色が良くなり、艶が増し、ふわさらの羽根に変化した。…汚れてたのかあの魔獣。
魔獣肉は調理前に〈鑑定〉して病原菌ないかどうかの確認をしていたり、〈収納〉時にこそーっと〈浄化〉してたりするので、食あたりのリスクだけは潰していたのだが。そうか、素材も〈浄化〉したら良かったのか。
何やってんだ、と、スノゥに軽く肩を叩かれ、〈浄化〉での変化を目の当たりにしたエヴァリオスは再び沈黙し、解体部屋の職員が驚きの声を上げる。
「わー、綺麗、素敵っ。この羽根を帽子の飾りにしたら、注目集めること間違いなしですねっ。」
「触り心地良さそう…。」
「これなら本気で王家行き狙えるのでは?ノルキスタ産です、って主張してほしい。」
きゃぴきゃぴとはしゃぐ解体部屋の職員達。エヴァリオスは困惑を隠せないまま、ミルキィを見る。
「なに、したんでな…?」
「スキル使っただけなんだけど…。」
ただし、スキル名は言えません。〈浄化〉という言葉がこの領域だとどんな扱いになるか不明すぎるのだ。…聖女とか聖人のスキルみたいな扱いされてないだろうか、大丈夫だろうか。
便利なので、使う事自体を自重する気はないミルキィである。なんなら旅人達全員使えるのだ。今のところ人前で使ってないだけで。
「室長ー、これなら加工前の洗浄いらないでしょうから、お高く売れますよね。」
「むしろお高く卸しましょう。ちなみにお姉様、こちらと同等の品はまだご用意可能ですか?」
「…わたしかっ。可能だねぇ…。」
まさかのお姉様呼びに、自分ではないと思っていたミルキィである。思わず自身を指さしながら、解体部屋の職員に説明していた。
「…販売の戦略、練らせていただいても?」
「お、お任せします…。後追加で5組分なら売却可能ですね…?」
「まぁ、素敵!うふふふ、腕がなるわぁ…。」
ひっそり〈念話〉で相談した結果の5組追加販売である。そっと追加で5組分の羽根を台の上に出し、そっと〈浄化〉使用して、つやつやふわさらな羽根にしておく。
一連の流れを見ていたトゥエラが、冷静に口を開いた。
「これ、すぐに値段決まらないよね。」
「そ、そだなや。〈歩行樹〉の丸太も、〈巨岩山鳥〉の羽根も、ギルドマスターとも相談しつつ、まず卸す先を決めて、値段交渉してからだなや、買い取り価格決定になるだろな。丸太なんぞ見た事ないし、〈巨岩山鳥〉の羽根も状態が良すぎてどれだけ付与価値をつけたらええか分からん。ここだけじゃ、値段決めきれんでな。」
「それなら、皆さんは先に講義に行ってきてください。エヴァさん、ギルドカードの入力は終わってますよね?」
「お、おう。今返すでな。」
あ、別の方向でやりすぎましたね?スノゥがそっと明後日の方を向いていたが、解体部屋の職員にギルドカードを返却されて、職員の方を見る。フォードもギルドカードを受け取って。
「皆さん、いってらっしゃい。」
「ま、まかせたー!」
「後でまた戻ってきますね。」
「ところで、講義受ける場所ってどこだ?」
「受付で確認するのだっ。」
トゥエラ達に見送られて、旅人達一行は受付に戻り、講義を受けに行く事になった。
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また次話お会いできると嬉しいですっ。




