一章:魔法使い、解体部屋再び。
冒険者ギルドの後見やべぇ、となりながら。てくてく歩きまして、ようやく冒険者ギルドへと辿り着く。…町って言うけれども、これだけ広いと街になりかかっている大きさじゃなかろうか。
結構歩いたねぇ、とキュウヤがぽつりと呟く横で、入りますよー、とトゥエラが両開きの扉を開いた。
現在時刻、昼の刻5時前後。一先ず、〈森の輪〉の森で狩った魔獣を解体売却し、〈巨岩山鳥〉の素材と〈歩行樹〉の丸太の買取相談をする為に解体部屋へ行く。アトラとルビナに確認したのだが、〈巨岩山鳥〉も〈歩行樹〉も、今のミルキィ達の冒険者ギルドランクでは依頼があっても受ける事ができないだろうとの事。それならばと、受付の人に声をかけて、さくっと全員で解体部屋へと移動する。
「こんにちは、エヴァさん。」
「おうおうおう、よう来たのトゥエラ!」
解体部屋のむきむきのおっちゃんに、トゥエラが朗らかに挨拶をする。対するおっちゃんも笑顔だ。
エヴァ…?と小声でルディが首を傾げていると、エデュライナが、エヴァリオス・ドラル・ルケード。〈隣山族〉よ。とむきむきのおっちゃんのフルネームを教えてくれた。
「今日は、一先ず〈森の輪〉が大森林で狩った魔獣の解体売却と、こちらの…昨日巨体の〈魔猪豚〉の解体を依頼した人の解体売却をお願いします。講義の後にもまた解体依頼出すと思うけど、まぁ、今はそれぐらいで。」
「おお、昨日のあのすんばらしい巨体の〈魔猪豚〉の方やんか。今日は何持ってきてくれたんか?」
トゥエラの説明に、むきむきのおっちゃんもといエヴァリオスが、目をキラキラと輝かせてミルキィの方を見る。
期待の眼差しを受けたミルキィは少し困ったように笑いながら、先に〈森の輪〉の分を出すよー、と声をかける。
こっちです、と解体部屋の職員の案内を受けて示された一角に、〈森の輪〉が討伐した魔獣を〈収納〉から取り出して置いていく。
「〈森林狂鹿〉2頭、〈森林狂隼〉3羽、〈森林狼〉5頭、〈森林狂兎〉7羽、〈森林狂鼠〉2頭…っと、これだけだったはず。」
「ほー、結構狩ったのう。んむ、〈森林狼〉はちと毛皮に傷が多いけ毛皮の査定は出来んが、後のは許容範囲だの。」
「おおお、やった、やったよ!」
「やったなー!」
エヴァリオスの言葉に、ルビナとアトラがハイタッチしながら喜び合う。
毛皮が査定範疇に入れば、その分買取金額も上がる。何より戦闘時に損傷範囲を自身で選択し、そこをきちんと攻撃できた指標にもなる。
「〈森林狼〉は素早く致命傷を避けられやすい。集団で撹乱もしてくるし、それにしぶといから、結果的に何度も何度も攻撃しないと討伐ができない。
次の目標は、〈森林狼〉の毛皮が査定対象になるような戦闘をする、といったところかな。
でも、アトラもルビナも頑張ったよな。」
「おう!」
「ほんとだよーっ。」
トゥエラの言葉に、にこにことアトラとルビーが返し、エデュライナの眼差しも柔らかい。
うん…双子を褒めるお父さんと、それを見守るお母さんだなぁ…?
その横でエヴァリオスが解体部屋の職員に声をかけて解体を始め、一人の職員がトゥエラの横に行きギルドカードを求めていた。
動きが早いなぁ、とミルキィがその様子を見ていたら、エヴァリオスと視線が合い、エヴァリオスがにやりと笑う。
「んで、何を出すんか?」
「一先ず、要解体が一種と解体済み一種?〈砂哭蛇〉はまた後で提出しにくるからね?」
「ほーん、解体済みなのは残念じゃが、何を出してくれるんか?」
「一先ず要解体のこれでも。」
顎下の豊かな髭を撫で付けながら、エヴァリオスがミルキィに問う。スノゥがだしちゃえだしちゃえー!とにやにやしつつ発破をかけ、ミルキィはわっるい笑顔を浮かべながら、〈収納〉から丸太を一本取り出す。
ごろん、〈森の輪〉の狩った魔獣の、少し離れたエリアに一本の丸太が横倒しに存在感を放つ。直径1メートルの幹の全長1.5メートルほどの丸太である。幹の真ん中ほどに、ハロウィンカボチャの目と口のような裂け目が存在しており、普通の木でないのは疑いようもない丸太である。
唐突に出現した丸太に、目を丸くした解体部屋の職員の視線が集まる。ひくり、脳裏にとある魔獣の名が浮かんだのであろう、エヴァリオスの口の端が引き攣った。
「丸太…?…おい、まさかとは思うんじゃが、これ…?」
「魔石抜きの〈歩行樹〉の丸太だねっ。」
全力の良い笑顔で、あっさりと正体を告げるミルキィ。ついでに、スノゥのギルドカード提出だね、と呟き、スノゥの方を手のひらで示すと、衝撃のあまりよろよろとした解体部屋の職員がギルドカードを受け取りに行った。
「…聞かされていたとはいえ、実物見るととんでもないな。」
「わー、綺麗な切り口…。」
「トゥエラ、これ再現無理だって。」
「立派…。」
〈森の輪〉が〈歩行樹〉の丸太を見学しながら口々に話している。いつか倒せるといいな、とトゥエラが話していた。
「〈歩行樹〉の丸太とか…卸先見つからんと解体できんのだが…?」
「あ、そうなんだ。ついでに追加で、解体済み素材として一先ず、〈巨岩山鳥〉の頭の飾り羽根と尾羽も一枚ずつ託すよー。こっちはフォードのギルドカードによろしくー!」
そわそわしながらミルキィの方を見てくるエヴァリオスの両手に、〈収納〉から取り出した50センチほどの頭の飾り羽根と1メートルほどの尾羽を、問答無用で一本ずつ握らせた。
上がる、男性の悲鳴。無傷…!?と解体部屋の職員が衝撃を受けていた。
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